楽譜とCDで楽しめる、サックスで吹きたい6曲!
THE SAX vpl.93 付属CDのご紹介です!雑誌では楽譜と奏者による演奏アドバイスがついたレッスンコーナーも掲載しています。
THE SAX 93号はプロ奏者による演奏とステージで活用できるカラオケトラックCDが付属。雑誌にはアドリブを採譜した楽譜と、奏者による演奏アドバイスがついたレッスンコーナーを掲載している。各楽曲の紹介とあわせて試聴音源をチェックして、普段の演奏を楽しもう!
[Track No.1]
Mercy,Mercy,Mercy
藤野美由紀(As)
『Mercy,Mercy,Mercy』は、モダンジャズ期のアルトサックス巨人キャノンボール・アダレイが1966年に発表したアルバム「Mercy,Mercy,Mercy! Live at “The Club”」に初収録されたナンバーで、作者はジョー・ザヴィヌル。ジョー・ザヴィヌルと言えば、あのウェザー・リポートのキーボーディスト、リーダーとして知られる人物ですが、『Mercy,Mercy,Mercy』を書いたのはウェザー・リポート結成前。この曲のヒット(全米ナショナルチャート11位、ソウルチャート2位)により注目され、マイルス・デイヴィスのバンドに抜擢され、そこでウェイン・ショーターと意気投合しウェザー・リポートの結成に至りました。
モダンジャズの4ビートといったイメージが強いキャノンボール・アダレイですが、この曲ではゆったりとした8ビートに乗ってファンキーに演奏しています。日本でも今ほどファンクのジャムセッションがなかった頃から、ジャズのジャムセッションでもよく演奏される定番曲です。
[Track No.2]
スパルタカス 愛のテーマ
藤枝伸介(Ss)
『スパルタカス 愛のテーマ(Love Theme from Spartacus)』は、映画「スパルタカス(Spartacus)」のテーマ曲です。「スパルタカス」は1960年公開のアメリカ映画。ハワード・ファストが執筆したスパルタクスの反乱をテーマにした小説をカーク・ダグラスが自らの制作総指揮、主演で映画化した歴史スペクタクル作品です。『スパルタカス 愛のテーマ』は、アレックス・ノース(Alex North)という映画音楽を中心に手掛けた作曲家のペンによるものです。
サックスのユセフ・ラティーフ、ピアノのビル・エヴァンスやアーマッド・ジャマル、フルートのジェレミー・スタイグ、ギターのアール・クルーといった名手たちがカバーしています。近年では曲の一部分がサンプリング素材として使用された楽曲がクラブ・シーンのみならず幅広い音楽ファンの間でヒットするなど、新しいファンを生み出しています。ここで藤枝伸介氏がソプラノサックスで演奏しているのはユセフ・ラティーフのアルバム「Eastern Sounds」収録のバージョン。
Photo by HIROSHI WATANABE
[Track No.3]
You Are Everything
藤野美由紀(As) & 藤枝伸介(Ts)
『You Are Everything』は今も現役で活動し、日本にも毎年のようにクリスマス時期にやってきて来日公演を行なうヴォーカル・グループ、スタイリスティックスの代表的なナンバーです。1971年のデビュー作「スタイリスティックス登場」に収録されて『Betcha By Golly, Wow』に続くヒットとなりました。リードシンガー、ラッセル・トンプキンスJr.の滑らかなファルセットヴォイスとコーラスで甘いハーモニーを織りなす彼らのスタイルはスウィート・ソウルと呼ばれましたが、その魅力がこの曲では最大限に生かされています。
作者はフィラデルフィア・ソウルの名曲を多く生み出している作曲のトム・ベルと作詞のリンダ・クリードという黄金のソングライター・コンビ。そして数多くあるカバーで最も有名なのが、1973年発表のアルバム「ダイアナ&マーヴィン」に収められた、当時のモータウンの二大スター、ダイアナ・ロスとマーヴィン・ゲイによるデュエットヴァージョンです。実際には二人は別々にレコーディングしたというエピソードも有名ですが、それを感じさせないほどの見事な歌声の絡み合いが聴けます。藤野美由紀さんと藤枝伸介さんのここでの演奏も、このダイアナ&マーヴィンをイメージしたものです
[Track No.4]
未来予想図Ⅱ
かわ島崇文(As)
今年デビュー30周年を迎えるJ-POPシーンを代表するアーティストDERAMS COME TRUE。『未来予想図 Ⅱ』はそんな彼らの最初期のナンバーです。作者は曲も詞もドリカムのヴォーカリスト吉田美和。曲が作られたのは彼女が高校生のときだそうです。
1989年発表の2ndアルバム「LOVE GOES ON…」に収録されましたが、シングルカットはされていません。しかし、ドリカムの代表曲のひとつに数えられるほどの人気曲で、徳永英明、河村隆一、いきものがかかり、三浦大知など、多くのアーティストによってカバーされています。
暖かくどこか切なさも感じさせるメロディを名手かわ島崇文氏が情感を込めてドラマティックに歌い上げてくれました。
[Track No.5]
Piece of My Wish
かわ島崇文(As)
近年はシンガーとしての活動に軸足を置いている今井美樹。彼女が女優としても盛んに活動していた1990年代初頭に、本人主演のTVドラマ「あしたがあるから」の主題歌として発表されたのが『Piece of My Wish』です。今井美樹にとって7枚目のシングルになります。
作曲は彼女の初期作品の多くを手がけている上田知華。初のオリコン1位を獲得し、ミリオンセラーを記録しました。シンガーとしてのキャリアのなかでは、現在の夫である布袋寅泰が作曲した『PRIDE』に次ぐ売上となっています。また、初出場以来9年ぶりに出場を果たした2015年の『NHK紅白歌合戦』で、この曲を歌唱したことも記憶に新しいところです。
希望に満ちた歌詞の内容どおり、明るくゆったりとしたメロディをかわ島崇文氏がスケールの大きい演奏で歌いきっています。
[Track No.6/No.7]
Cantaloupe Island
藤枝伸介(Ts、Ss)
『Cantaloupe Island』はピアニスト/キーボーディストのハービー・ハンコックが1964年に発表したアルバム「エンピリアン・アイルズ」に収録されたファンキーなジャズ・ナンバーです。シンプルで親しみやすいメロディと当時Funky Jazzと呼ばれたリズミックなサウンドで、ジャズ・ファンの間では知らない人がいないほど親しまれています。そして、ジャムセッションでも毎回必ずといっていいほど演奏されている楽曲の一つです。
数多くのカバー・ヴァージョンが存在しますが、なかでも有名なのがロンドンのジャズ・ヒップホップ・グループUS3(アス・スリー)による『カンタループ』でしょう。『Cantaloupe Island』をサンプリングしてラップ・ヴァージョンにしたこの曲は、日本のテレビCMにも使われました。また同曲を収録した1993年のアルバム「HAND ON THE TORCH」はブルーノート・レーベルで最も売れた作品となりました。
今回の付属CDでは、クラブジャズにも精通する藤枝伸介氏による洗練されたプレイが冴え渡っています。
藤枝伸介
Shinsuke Fujieda
音楽プロデューサー、作曲家、サックス・フルート奏者。2012年より音楽レーベルSoFa Records(ソファーレコーズ)を運営。2003年頃よりクラブジャズバンド i-dep(アイデップ)のサックス、フルートとして活動、Summer SonicFestivalやSXSW等国内外大型フェスへ出演。谷中敦( 東京スカパラダイスオーケストラ)とのサックスデュオ 2 of a kind 、DJ井上薫とのユニットFusik、DACHAMBOのシンセストCD HATAとの PolarChalors 、またソロとしてSINSUKEFUJIEDAGROUPやピアニスト富樫春生とのデュオなどでライブ、リリースを重ねる。これまでに参加するグループ、またはソロでアルバム30作品をリリース。CM、レコーディング参加作品多数。2010年せたがや文化財団/世田谷区主催 世田谷芸術アワード「飛翔」音楽部門をSoundFurniture(サウンドファニチャー)名義で受賞。
2019年再始動したi-depでカナダ・ケベック州で開催された北米最大級の音楽フェスティバルFEQ(フェスティバル・デテ・ドゥ・ケベック)に出演し優秀賞を獲得。
藤野美由紀
Miyuki Fujino
FUNK,SOULを中心とする、日本のサックス奏者。ソロ活動を展開し、国内外多数の有名アーティストとの共演。リーダーアルバムを4枚リリース。アルソ出版からCandy Dulfer Master Bookや、FUNK&SOULなどの著書もリリース。 2018年 5月には、ギタリスト佐橋佳幸によるプロデュースで、アルバムRight Timeを制作し、アメリカのファンキーサックス奏者 Eddie.M(プリンス、シーラE、13cat'sのサックス奏者)をスペシャルゲストに迎える。2019年には台湾のP.Mauriatと米国Jody Jazzと契約。2022年New Album、SAXIE FUNKをリリース。日本から世界に向けてFUNKな音楽に乗せてメッセージを発信し続けている。
YouTubeチャンネル:FUNKY SAX 藤野美由紀
かわ島崇文
Takafumi Kawashima
1977年生まれ、13歳からサックスを始め高校卒業後Berklee College of Music へ入学。現地で様々な音楽ジャンルのライブやレコーディングを経験し2000年に帰国。日本では数少ないLAサウンドを彷彿させるSMOOTH JAZZ系サキソフォニスト。帰国後は毎回満員御礼の"Groove Smooth" でのライブ、レコーディングセッション、アーティストのライブサポート等をつとめる。