サックス記事 須川展也&田中靖人 サクソフォンデュオ・コンサート ~ピアニスト、小柳美奈子と共に~
  サックス記事 須川展也&田中靖人 サクソフォンデュオ・コンサート ~ピアニスト、小柳美奈子と共に~
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ヤマハホール・コンサート・シリーズ 珠玉のリサイタル&室内楽

須川展也&田中靖人 サクソフォンデュオ・コンサート ~ピアニスト、小柳美奈子と共に~

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楽器に使われている木材が生み出すヤマハホール独特の響き

プログラムを組むにあたって何か狙いはありましたか?
須川
デュオのコンサートの形って決まってないと思うんです。ソロやカルテットはだいたいこんな流れ、というのが決まってきた感があるけど、デュオはまだそうじゃない。形が自由だからこそいろんなことができる、と考えて、形にこだわらず楽しめるプログラムを組むことができたんじゃないかな。二人でやれるいろんなことを、やれる限りやってみたら、聴いている人も楽しいんじゃないかとトルヴェールの仕事で会うたびにしょっちゅう話し合ってきました。お互いにソロやったりデュオでいろんな楽器の組み合わせを楽しんでもらったり、ね。
トルヴェールの外声という感じですね。
須川
確かに(笑)。ピアノの小柳美奈子を加えて3人で、「小さなトルヴェール」みたいな感じですね(笑)。客席には彦坂(眞一郎)くんや神保(佳祐)くんも来てくれるといいな。
田中
新井くん(故・新井靖志氏)も、たぶんきっと……。これは後で話しましょう。まずはオープニングですが、今の時期はもうこれしかない!という感じで、このコロナ禍のさなかに録音された須川さんのバッハ。ぼくは須川さんのアルバムは基本的に全部自分で買っているんですが、この「バッハ・シークェンス」だけは買うより前にサンプル盤をいただいてしまいました(笑)。
須川
バッハを、この残響の素晴らしいヤマハホールでぜひ吹いてみたいと思ったんです。このホールは、ステージの床材はもちろん、ホリゾントや天井、側壁などに楽器で使われる材料を使用しているそうです(※)。
(※注)側壁=サペリマホガニー(ピアノ・ギター)、正面壁・天井=グレートメープル(ドラム、ヴァイオリン、ギター)、客席床=カリン(シロフォンなど)、舞台床=ヒノキ無垢材(ヤマハARE処理材・ARE=Acoustic Resonance Enhancement)
 
田中
音が降ってくるような感じで美しい響き。残響がとても豊かなんですよね。
須川
バッハのこの大名曲とホールの響きがとても合いそうで、今からワクワクです。
 

バッハの魅力は、ゼクエンツ(SEQUENCE)=ツーファイヴの連続

須川
ここでする話じゃないかもですが、バッハを演奏するということについては、自分自身も納得できる意味を持つ演奏じゃないと……と思っているんです。この年齢になって、今なんでバッハをやるのか、という、その理由をきちんと示す演奏をしないとバッハに対して失礼だ、と思っているんです。サクソフォン奏者がバッハを好きな理由、それはずばりゼクエンツ(ドイツ語・英語ではシークェンス=SEQUENCE)の魅力だと思うんです。ゼクエンツ、いわゆるⅡ-Ⅴ(ツーファイヴ)ですね。その連続がすごいんです。バッハと言えばカノンやフーガなどの技法の凄さを取りざたされることが多くて、ゼクエンツの豊かさについてはもう「当たり前」だから誰も敢えて多くを語らない……みたいになってしまっているのですが、実は、ぼくはそことサクソフォン吹きの関連を感じました。ジャズのアドリブとの関係です。ゼクエンツのところでアドリブが始まったのでは?
「ゼクエンツ」を須川さん流に訳すと?
須川
バッハ特有の「つながり方」ですかね。バッハのなかに、クラシックはもちろん、ジャズやポップスとも共通する音楽の原動力みたいなものがあって、それは音楽を「つなげる」「転がしていく」仕組み、すなわちSEQUENCE=ゼクエンツ、いわゆるツーファイヴなんです。例えば、それはアルフレッド・リードの『アルメニアン・ダンス』にも、フィリップ・スパークの『宇宙の音楽』にも普通に存在していて、それが聴く人をぐいぐい引っ張っていく力となっています。とても心地よい流れがあるので、音楽にさらに引き込まれていきます。バッハの極めた音楽の素晴らしさの伝統を感じながら演奏できたら嬉しいです。
 

次ページにインタビュー続く
・亡き盟友の愛奏曲をテナーで! アルトの定番曲をバリトンで!!
・コンサートでは笑ったりドキドキしたりする要素が大事
・今回のコンサートのために委嘱された新作2曲を世界初演!

登場するアーティスト
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須川展也
Nobuya Sugawa

日本が世界に誇るサクソフォン奏者。そのハイレベルな演奏と、自身が開拓してきた唯一無二のレパートリーが国際的に熱狂的な支持を集めている。デビュー以来、長年にわたり同時代の名だたる作曲家への作品委嘱を続けており、その多くが国際的に広まっている。近年では坂本龍一『Fantasia』、チック・コリア『Florida to Tokyo』、ファジル・サイ『組曲』『サクソフォン協奏曲』等。東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。出光音楽賞、村松賞を受賞。98年JTのTVCM、02年NHK連続テレビ小説「さくら」のテーマ演奏をはじめ、TV、ラジオへの出演も多い。89年から2010年まで東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスターを務めた。最新CDは16年発売の「マスターピーシーズ」(チック・コリア/ファジル・サイ/吉松隆)。トルヴェール・クヮルテットのメンバー、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督。東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。

登場するアーティスト
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田中靖人
Yasuto Tanaka

1964年和歌山市に生まれる。 国立音楽大学在学中、第1回日本管打楽器コンクール第2位、第4回日本管打楽器コンクール第1位を受賞。 1990年東京文化会館でデビューリサイタルを開催。以来、国内外でリサイタルなど幅広い活動を行なっている。東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団など、ソリストとしてオーケストラとの共演も多数。 2000年より(一財)地域創造主催の「公共ホール活性化事業」のアーティストとして、リサイタル、アウトリーチ コンサートも意欲的に行なっている。2003年和歌山県より「きのくに芸術新人賞」を受賞。 ソロ・アルバムに、1991年「管楽器ソロ曲集・サクソフォーン」(日本コロムビア)、1995年「ラプソディ」(EMI music japan)、1997年「サクソフォビア」(EMI music japan)、2003年「ガーシュイン カクテル」(佼成出版社)、2012年「モリコーネ パラダイス」(EMI music japan)をリリース。 また、サクソフォーン四重奏団 トルヴェール・クヮルテットのメンバーとして活躍し、これまでに10枚を超えるアルバムをリリース。2001年文化庁芸術祭レコード部門“大賞”を受賞。 現在、東京佼成ウインドオーケストラコンサートマスター、国立音楽大学、愛知県立芸術大学、昭和音楽大学、桐朋学園大学各講師、札幌大谷大学客員教授、名古屋音楽大学客員教授。

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