進化を続ける長寿バンドのフロントマン。ボブ・ミンツァーが全てを語る!
ボブ・ミンツァーが “ The Yellow jackets ” に加入したのは1991年のこと。それ以来、さらに勢いを増して進化を続けているイエロージャケッツが、昨年2018年9月にリリースをしたアルバムを掲げて約3年ぶりの来日を果たした。結成39年目という歴史あるバンドでフロントマンを務める彼に独占インタビューを決行!
ボブ・ミンツァーが “ The Yellow jackets ” に加入したのは1991年のこと。それ以来、さらに勢いを増して進化を続けているイエロージャケッツが、昨年2018年9月にリリースをしたアルバムを掲げて約3年ぶりの来日を果たした。結成39年目という歴史あるバンドでフロントマンを務める彼に独占インタビューを決行!
(インタビュー・文:三木俊雄/協力:丸の内コットンクラブ)
- 三木
- お久しぶりです。
- Bob
- 前回は2015年だったから4年ぶりだね
- 三木
- 前回はワークショップをお手伝いしましたが、今回はインタビュー、特にサックスの専門誌なので、あなたの楽器やセッティング、そして現在の活動などを中心にお聞かせいただければと思います。現在お使いの“EASTMAN・The 52nd Streetsaxophone”は前回お会いした時にもお使いでしたね。そのあたりの経緯をお願いします。
- Bob
- この楽器は使い始めて5年になるかな。それまではセルマー マークⅥのゴールドプレートを使っていた。知っての通りとても高価なものだ。特に最近はね(笑)。
ちょうどその頃、サックスの飛行機への持ち込みが厳しくなってきてね。大丈夫な場合もあるけどダメな路線も出てきた。この高価な楽器をチェックインで預けるのはちょっと躊躇してしまってね。よくSNSで「楽器を預けたら酷い目に遭った」とかいう投稿があるだろう? それでツアー用のサブの楽器を探していたんだ。日本ツアーのときだったなぁ、このイーストマンから楽器提供のオファーを受け、試してみることにしたんだよ。あくまでもツアー用のサブのつもりだったんだけど、まず二晩吹いてみた時点ですごくいいなと思った。なにしろ自分にも音がよく聞こえるし、ピッチがいい。それは小さな会場、大きな会場ともに言えることだった。そして2週間吹いていたら、もうセルマーにもどる気にはなってなかったんだよ。 - 三木
- それまではずっとマークⅥだったのですか?
- Bob
- そう、それまで使っていたのはすべてマークⅥだ。と言っても、より良い楽器を探し求めていたというわけじゃない。僕はいわゆる「ヴィンテージ信仰者」ではないんだ。これまでマークⅥは合計3本所有していたんだけど、それぞれにストーリーがあってね。
一番最近まで使っていたのは、あるミュージシャンの遺品だった。彼は若くして亡くなり、彼の魂を引き継いでほしいという遺族の願いで譲り受けた。その前の楽器は、僕の熱烈なファンという90歳を越えた男性が持っていたもので、自分はもう高齢で吹けないので是非使ってほしい、といって譲ってもらったもの。その前の楽器は僕の友だちの呼びかけで、あるお金に困ったミュージシャンを助けるために買ったものだった。どうだい、なかなかいい話だろう? でもあまり音楽的な理由ではないんだ(笑)。いずれも素晴らしい楽器だったけどね。 - 三木
- では、初めてマークⅥ以外の楽器に持ち替えて違和感などは感じませんでしたか?
- Bob
- 僕もそれは覚悟していたんだけど、吹いてみたらまったく違和感は感じなかった。「なんだ、これでいいじゃないか!」ってね(笑)。
マークⅥはそれ以来ケースにしまったまま全然開けていない(笑)。 - 三木
- ではあなたが楽器に求めるもの、あるいはその基準は何でしょうか?
- Bob
- 一言でいえば“Flexibility”( フレキシビリティー:柔軟性)だね。小さな音から大きな音まで、ダークな響きからブライトな響きまで出せること。ある一定の帯域しか響かない、という楽器では困るね。このEASTMAN・The 52nd Street Tenorはその点が気に入っている。また響きとしてはKingのSuper 20やConnの10Mといった古い楽器の持つ味わいがあると思う。
本インタビューでもたっぷりと語っていただいた、愛器『EASTMAN・The 52nd Street Saxophone』についてはコチラ!
プロフィール
Bob Mintzer ボブ・ミンツァー
ニューヨークから拠点を移し、ロサンゼルスで活躍をしているジャズ・フュージョンのサクソフォーン奏者、作曲家、編曲家。バディ・リッチ楽団やジャコ・パストリアス・オーケストラのアレンジャーなどを経て、1980年代初頭より自身のビッグバンドを率いて活動。
ビッグバンドのコンポーザー・アレンジャーとしてサド・ジョーンズやアート・ブレイキーなどに楽曲を提供した他、自身も参加したGRPオールスタービッグバンドでもアレンジを担当。また、1980年代前半にはジャコ・パストリアスのツアーにもワード・オブ・マウス・ビッグバンドの主要メンバーとして参加した。
サックス・アンサンブルの曲や教則本も数多く執筆している。
次ページにインタビュー続く
・競争の激しい環境で、心の平安を保つ秘訣
・故郷を離れた、大きな決断の裏話
・学生に伝えたい、これからの時代を生き抜くために必要な事
・ヴォーカルをフィーチャーした最新アルバム「Raising Our Voice」について
・今後の活動予定