サックス記事 トリオ・タペストリーのECM第3弾を完成させた現代のテナー・タイタン
  サックス記事 トリオ・タペストリーのECM第3弾を完成させた現代のテナー・タイタン
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THE SAX vol.118 Interview

トリオ・タペストリーのECM第3弾を完成させた現代のテナー・タイタン

ARTIST

1970年代にキャリアをスタートさせ1990年からは四半世紀以上にわたりブルーノート・レーベルから数々の名作をリリースしてきた、現代ジャズ・シーンを代表するテナー巨人ジョー・ロヴァーノ。
2019年からはECMからベースレス・トリオ「トリオ・タペストリー」の作品を順調に発表している彼がトリオの最新第3弾作「Our Daily Bread」を携えて来日を果たした。その際のインタビューとライブの模様をお届けしよう。

インタビュー・文:三村慎司
取材協力:ブルーノート・ジャパン、ユニバーサル ミュージック合同会社
Top Photo by Takuo Sato

観客と喜びを分かち合うために表現する。それが私にとってのジャズ

ECM第1弾「TrioTapestry」(19年)、第2弾「Garden of Expression」(21年)に続く、新作はこれまでと比べて、コンセプト的な変化はあるのでしょうか?
ジョー・ロヴァーノ
新しい表現の扉を開くような演奏をしよう、というコンセプトは変わっていないし、(楽曲は)3人が聴き合い、アイデアを出しあい、音楽を紡ぐための道具や土台だ、ということも変わりません。演奏はいくつもの旋律を絡ませ、かつポリリズム的に構築していく。キーも12調すべて、テンポも様々です。ただ、根底はそのとき感じた音楽をどんどん表現すること。音楽の流れを維持しながら互いの表現を組み合わせていく。それが私たちの基本方針です。
複雑そうな印象はありますが、聴きにくくはない。心に直接響いてくるような音楽です。
ロヴァーノ
ジャズは根本的に表現のための音楽。バンドの種類や構成に関わらず、とにかく観客と喜びを分かち合うために表現する。それが私にとってのジャズです。一方的に投げかける過激なものではなく、観客を包み込むような演奏を心がけています。
タイトル曲『アワ・デイリー・ブレッド』がとくに印象的でした。どのような経緯で誕生したのでしょうか?
ロヴァーノ
私たちにとって祈りの曲です。元々はジョン・コルトレーンの『ディア・ロード』にインスパイアされています。彼の晩年の作品をサキソフォン・サミットでよく演奏しました。マイケル・ブレッカー亡きあと、メンバーにラヴィ・コルトレーンが加わってアルバム(「SERAPHIC LIGHT」)を制作した際、私が持ち込んだのが『アワ・デイリー・ブレッド』の原型。それをトリオ・タペストリーで演奏しているうちに、だんだんと私たちのコンセプトを代表するような曲に成長していったのです。

次ページにインタビュー続く
・マックス・ローチのドラム、サラ・ボーンやビリー・ホリデイの歌からも学ぶ

CD information
 
「Our Daily Bread」
ジョー・ロヴァーノ・トリオ・タペストリー

【487-7746】オープンプライス ECM Records
[演奏] ジョー・ロヴァーノ(Ts)、マリリン・クリスペル(Pf)、カルメン・カスタルディ(Ds)
[収録曲] All Twelve/Grace Notes/Le Petit Opportun/Our Daily Bread/One for Charlie/The Power of Three/Rhythm Spirit/Crystal Ball
 
 

●PROFILE
JOE LOVANO(ジョー・ロヴァーノ)
1952年クリーブランド出身。父親からジャズを教わり、バークリー音楽院で学ぶ。76年NYに進出。ウディ・ハーマン、メル・ルイス、ポール・モチアン等のバンドで高評価を得て、90年ブルーノートと契約、リーダー作を多数発表。巨匠ハンク・ジョーンズから新星エスペランサまで世代を超えた共演作も話題となる。2019年マリリン・クリスペル(Pf)、カルメン・カスタルディ(Ds)との「トリオ・タペストリー」でECMデビュー後、今年5月には3作目を発表。現代ジャズの最高峰として称賛されている。

 

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