サックス記事 第5回 |悩みのつきないリード編
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THE SAX vol.55(2012年9月25日発刊)より転載

第5回 |悩みのつきないリード編

LESSON

吹奏楽に限らずサックスを吹く皆さんに質問・疑問が多いものは、なんといっても「リード」。良いリードを選ぶ方法や、リードの削り方、大事な本番前のリードの管理など。今回はこのリードの疑問を解決してみましょう。

吹奏楽に限らずサックスを吹く皆さんに質問・疑問が多いものは、なんといっても「リード」。良いリードを選ぶ方法や、リードの削り方、大事な本番前のリードの管理など。今回はこのリードの疑問を解決してみましょう。

 

Q. 使えるリードを増やすには?
リードを1箱買っても、使えるのはほんの少し。先輩はヤスリで削れといいますが、それで良いリードになったことがなく、お金ばかりかかってしまいます。こんなとき、なにかいい方法はないでしょうか。また田中さんがリードを削って使っていらっしゃるなら、その方法を教えてください。

A. 削り方をマスターできれば……
どんなに優れた奏者でも、リードの悩みは永遠のテーマといっても過言ではありません。リードは手を加えずに使えればベストですが、削り方をマスターできれば使えるリードが増えることは確かですね。
私は中高生の頃、800番くらいの紙やすりや、トクサを乾かしたものでリードを削っては失敗を繰り返していました。今でも自信があるわけではないのですが、当時、先輩や先生に教わったことをお話ししますので参考にして試してみてください。

1.先端とハート(最も厚いところ)には手を加えない。
先端から約5ミリの辺りの山型を描く範囲を、バランスを整えるように削る。その際、試奏しながら少しずつ削ること。削り過ぎると取り返しがつきません。

2.バランスが良いのに単に弾力が強い場合は、紙やすりをリードの下に敷いて、裏側全体を削る。その際、先端を傷付けないように注意する。

3. 2.と同じような場合、リードのかかとの角を落とすことによって、リード自体が少し短くなり少し軽く感じる。
あとは参考文献として、サミーミュージックから出版されている、「サクソフォーン演奏技法」(ラリー・ティール 著、大室勇一 訳)をお勧めします。リードの削り方も詳しく載っています。

 

Q. リードの大切さを知ってもらうには?
お小遣いだけでは足りず、時々親からリード代をもらいます。しかしそれが何回にもなると「そんなにたくさんいるの?」と言われ、リード代がほしいと言い出しにくいことも……。どう説明すれば、サックスのことをよく知らない人にも、リードの大切さ(とお金がかかること)をわかってもらえるでしょうか?

A. 説明、聴いてもらう、そしてアピール!
リード楽器のことをご存じない方に、売られているリードがすべて使えるわけではないことを説明するのは難しいですよね~!
自然のケーンという植物を削って作られているので、厚みなど形は同じようにそろっていても、繊維の違いでクリアな音が出るものとそうでないもの、弾力が強めのものと弱いものなどが1箱に混在しています。自分にとって合わないものがあるということを、まず説明したほうが良いですね。それで理解を得られない場合は、自分にとって良いリードの音を聴いてもらってから、新しい1箱のリードをすべて吹いて音の違いを聴いてもらうのも良いでしょう。
または、ザ・サックスのバックナンバーで特集された、プロ奏者のリードの選び方の記事を見てもらって、「みんなこんなに苦労している!」ということをアピールするのも良いでしょう。ファイト!!

 

Q. リードの状態を保つには?
私はアルトサックスを吹いているのですが、吹いているうちにリードがすぐに水っぽくなってしまい、反応が悪くなります。なにか吹き方に問題があるのでしょうか。また、どのようにすれば、1枚のリードを状態の良いまま長く吹き続けることができるでしょうか。

A. 良いリードはローテーションを
リードは演奏しているうちに水分を多く含んで、反応が悪くなってきます。特に新しいものは、水分を含みやすく状態も変化しやすいので、少し吹いたら乾くまで休ませて、2、3日使って馴染んできたら続けて長く使うようにします。
1枚のリードを続けて長く使うと寿命は短くなりますので、できれば数枚をローテーションして使うことをお勧めします。ちなみに私は、20~30枚の良いリードを常に持っていてローテーションしていますから、毎日長時間吹いても1カ月くらい使えるリードもありますよ。

 

Q. 番手は合わせるべき?
僕は息がたくさん入って吹いていて気持ちがいいので、4番のリードを使っています。が、プロの人で4番を使っている人をほとんど聞いたことがなく、自分は正しくないのではと思ってしまいます。自分のカンを信じるべき?
それとも、一緒に演奏する人と合わせたほうがいい?

A. 吹きやすいならOK
リードだけの問題ではなくて、使っている楽器の吹奏感、マウスピースとの兼ね合いが関係します。実際にあなたの演奏を聴いたわけではないので何とも言えませんが、4番のリードが演奏しやすいならば良いのではないでしょうか?
でもサックスは、低音域を弱音で演奏することがやや苦手な楽器なので、重いリードは要注意です。また、無理に吹くことで顎を痛めることにつながります。
低いド、シ、シ♭などをピアニッシモで発音したり、音楽の中で表現できれば問題ありません。

 

Q.楽器が違うと選び方も違う?
これまでアルトを吹いてきましたが、演奏会のプログラムの都合でテナーも吹き始めることになりました。田中さんはソプラノからバリトンまで幅広く吹いていらっしゃいますが、楽器によってリードの選び方は違いますか? それともどの楽器でも自分の吹きやすさを優先して選べば良いのでしょうか。

A. 違和感を感じないように選んでます!
これは人それぞれで、ソプラノからバリトンまでを別の楽器として「らしさ」を出すために、あえてまったく違うセッティングにしている奏者もいれば、なるべく同じ傾向にセッティングして、持ち替えの違和感を少なくする奏者もいます。
私の場合、ソロの曲で4種類を持ち替えることがあるので、なるべく違和感を少なくする後者にしています。そのほうが自分が表現したいことを演奏しやすいからです。
クラシカルのサックスの場合、極端にオープンなマウスピースを使うことはほとんどないので、リードも3か3½に納まるのではないでしょうか?

 

Q.リード選びの時間は?
田中さんはどんな時にリードを選びますか(演奏会の数日前、練習前の朝一番など……)? また、どれくらい時間をかけますか?

A.悩まないように調整
私は、数日使って馴染んだリードを本番で使います。でも常に20~30枚の良いリードを持っているので、その中で使えなくなったリードが出てきたら、その補充を時々します。つまり、いつでも新しいものから馴染んだものや、やや古くなったものなどがリードケースに混在していて、リードのことで悩まなくてすむようにコンディションを保っています。

 

Q.ハズレリードの行き場は?
田中さんは、ハズレと感じたリードはすぐ捨てる派?
それとも、取っておく派? 取っておくとしたら、それは何のためですか?(もったいないから?)

A.簡単に捨てないように……
以前は、もしかしたら使えるようになるかも……と思い、捨てないで箱ごと部屋に積んでいましたが、結局それらのリードは使わないので現在は捨ててしまいます。
でも、以前に南仏のバンドーレン社の工場へ行った時に、こんな言葉を聞きました。
「私たちは常に最善のリードをみなさんに提供できるよう、大切に作っています。なので使えないからといって、簡単に捨ててしまうところを見ると悲しくなります」
確かにそうですね……。

Q.その人に合うリード選びは?
サックスの指導者にリードを選んでもらったあと、演奏が格段にうまくなった、という話をよく聞きます。プロの方はどんな基準で、その人に合うリードを見極めているのでしょうか。自分も後輩のリード選びに正しくアドバイスできるようになりたいのですが……。

A.吹奏感に注意して選ぼう
私もレッスンやクリニックで、時々選んであげることがありますが、新しいリードから何枚か選んで、生徒にとって吹きやすいものをあげているだけですよ。
先生が持っているリードが特別なものというわけではなく、生徒がきちんとリードを選んでいない場合や、古くなったものをずっと使っていて良い音が出ないことがほとんどですね。
初心者の場合は、自分にとって良いリードが分からないで使っていることもあるので、吹奏感なども注意して聴きながら選ぶようにしています。
リードの弾力が強すぎて、低音域が苦しそうでないか。逆に弾力が弱すぎて、高音域が痩せたりフラットになっていないかなど、広い音域を聴いてリードを選んであげると良いでしょう。

無理なくピアニッシモや低音が吹け、 自分が吹きやすいと思うリードを選ぶことが、良い音への近道!
田中靖人

※この記事はTHE SAX vol.55 を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中、第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位を獲得。1991年には「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」でCDデビュー。1995年「ラプソディー」、1997年「サクソフォビア」を、03年「ガーシュインカクテル」を、2012年「モリコーネ・パラダイス」をリリース。一方、室内楽のジャンルではサクソフォン四重奏団[トルヴェール・クヮルテット]で活躍。2001年には文化庁芸術祭レコード部門大賞受賞。現在、昭和音楽大学客員教授、国立音楽大学教授として後進の指導にもあたっている。


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登場するアーティスト
画像

田中靖人
Yasuto Tanaka

1964年和歌山市に生まれる。 国立音楽大学在学中、第1回日本管打楽器コンクール第2位、第4回日本管打楽器コンクール第1位を受賞。 1990年東京文化会館でデビューリサイタルを開催。以来、国内外でリサイタルなど幅広い活動を行なっている。東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団など、ソリストとしてオーケストラとの共演も多数。 2000年より(一財)地域創造主催の「公共ホール活性化事業」のアーティストとして、リサイタル、アウトリーチ コンサートも意欲的に行なっている。2003年和歌山県より「きのくに芸術新人賞」を受賞。 ソロ・アルバムに、1991年「管楽器ソロ曲集・サクソフォーン」(日本コロムビア)、1995年「ラプソディ」(EMI music japan)、1997年「サクソフォビア」(EMI music japan)、2003年「ガーシュイン カクテル」(佼成出版社)、2012年「モリコーネ パラダイス」(EMI music japan)をリリース。 また、サクソフォーン四重奏団 トルヴェール・クヮルテットのメンバーとして活躍し、これまでに10枚を超えるアルバムをリリース。2001年文化庁芸術祭レコード部門“大賞”を受賞。 現在、東京佼成ウインドオーケストラコンサートマスター、国立音楽大学、愛知県立芸術大学、昭和音楽大学、桐朋学園大学各講師、札幌大谷大学客員教授、名古屋音楽大学客員教授。

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