サックス記事 第16回 | 一人ひとりの技術を上げよう〜アーティキュレーション編~
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THE SAX vol.66(2014年9月1日発刊)より転載

第16回 | 一人ひとりの技術を上げよう〜アーティキュレーション編~

LESSON

前回からリニューアルされた田中靖人氏が吹奏楽におけるサクソフォン演奏の 悩みに答えてくれる「吹奏楽サックスA to Z」。“パート力アップ術”を大きな目 標に、練習法を指南してくれることになった。さて、その第2回 目となる今回からは、より具体的なパート練習の方法をレクチャーしてもらおう。テーマとなるのは“アーティキュレーション” 。東京佼成ウインドオーケスト ラのコンサートマスターも務める田中氏が、今回も明解に答えてくれた。

田中靖人氏が吹奏楽におけるサクソフォン演奏の悩みに答えてくれる「吹奏楽サックスA to Z」。今回からは、より具体的なパート練習の方法をレクチャーしてもらおう。テーマとなるのは“アーティキュレーション” 。東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスターも務める田中氏が、今回も明解に答えてくれた。

Q. タンギングをすると息が途切れてしまい、うまくいきません。息をずっと出したまま綺麗にタンギングする方法を教えてください。

A. 音を出すのはタンギングではなく息、正しい呼吸法が大切
管楽器で音を出すということは、歌を歌うことと同じとイメージしてみましょう。タンギングは歌う時のような滑舌の種類はありませんが、教則本でよく見るのは「トゥ」「タ」と発音するようにとあります。その他には「ラ」や「ス」の発音でニュアンスを変化させる場合もありますが、大切なことは正しい呼吸法です。音を出すのはタンギングではなく息ということを忘れないでください。

では本題に入りますが、音を出しながらのタンギングが上手くいかない場合は、楽器を構えて息だけを出しながらタンギングの練習をしてみましょう。この場合、吹く時の圧力がないのでリラックスしてタンギングの動きを感じられると思います。舌はなるべく前に出して、リードとなるべく接近した状態(感覚的には数ミリ)を保ちます。舌のどの部分がリードに触れるかは、多少の違いがありますが、舌の先端か先端から少し奥が一般的です。

息を入れながら前述した「トゥ」「タ」と言うように舌をリードに触れます。舌の動きはなるべく少なくリラックスしてください。リードの先端に触れるようにすると、柔らかい発音になるでしょう。決して舌をリードに押し付けないで、あくまでも触れるだけです。安定してこの練習ができるようになったら、実際に音を出して練習してみましょう。自分の音をよく聴きながら柔らかく発音できるように、それから音が途切れないように、まずは四分音符のような簡単なリズムを吹いてみましょう。

Q. 速いタンギングが続くと、口の中につばがたまってしまいます。どうやればスムーズにタンギングができるのでしょうか?

A. ウォーターノイズになってしまうので気をつけよう
前の質問のなかで説明したタンギング法を参考にしてみてください。口の中に唾液が溜まってしまうのは、舌を動かしすぎることで、リードに触れる力が強くなる(リードに舌を押し付ける感じになる)ということと、リードと舌が触れる面積が大きくなるということで、唾液が溜まりやすくなったり、リードの裏側に水滴が付着して、音に「ジュルジュル」というウォーターノイズが混ざりやすくなります。

Q. パートでできるアーティキュレーションの練習方法はありますか?

A. アーティキュレーションは音階と組み合わせると効果的
パートに限らず、もちろん1人でもグループでもできる練習方法ですが、スラーやテヌート、スタッカートなどは、譜例①がよくある効果的な練習です。

譜例① 単音でのタンギング・トレーニング

スラーとスタッカートを組み合わせたアーティキュレーションは、単音よりも音階と組み合わせたほうが、演奏しやすくて効果的でしょう(譜例②)。

譜例② 音階と組み合わせたアーティキュレーション・トレーニング

※スマートフォン等で譜例が見づらい場合は画面を横向きにしてご覧ください。

1人であってもパートであっても、必ずメトロノームを使って正確でムラのないリズムを心掛けましょう。スラーではない音では、テヌート、スタッカート、テヌート スタッカート、アクセントなど、いろいろなニュアンスで練習することで、表現の幅を広げましょう。

Q. やわらかいタンギングとはっきりしたアクセントのタンギングは、口の中をどのように変えたらいいですか?

A. 息のスピードや方向に変化を!
基本奏法は、タンギングでアクセントにしたり、発音の強さを変えないと思ってください。 Q.1でお答えしたリラックスしたタンギングが大切ですが、微妙なニュアンスの変化は強さではなく「トゥ」「タ」や「ラ」「ス」などの発音の種類です。音を出すのはあくまでも息ですので、アクセントのような強さを変化させるのは息のスピードです。声を出す時と同じなのです。口の中は厳密には変化があるかもしれませんが、それは息のスピードや方向によるもので、意図的に口の中を変化させることはありません。

Q. 曲を吹いていると指とタンギング(アーティキュレーション)が合いません。両方を合わせるために気をつけることは何ですか?

A. できるテンポで、できる長さで
前述のアーティキュレーションを、メトロノームに合わせて丁寧に練習しましょう。できるテンポで、できる長さで練習します。指とタンギングが合わないのは、あなたにとって速過ぎるテンポなのです。早口で話せない時はどうしますか? ゆっくり話せばできますね? それと同じなのです。

※この記事はTHE SAX vol.66を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中に第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位。矢田部賞を受賞し卒業後より、ソリストとして各地でリサイタルなど幅広いコンサート活動を行ない、テレビやラジオにも数多く出演。また、サクソフォン四重奏団《トルヴェール・クヮルテット》のバリトン・サクソフォーン奏者として国内外で活躍し、これまでに10枚を超えるCDをリリース。2001年には文化庁芸術祭レコード部門“大賞”を受賞。ソロ・アルバムに1991年「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」95年「ラプソディー」(東芝EMI)97年「サクソフォビア」(東芝EMI)2003年「ガーシュインカクテル」(佼成出版社)12年「モリコーネ・パラダイス」(EMIミュージック)をリリース。03年、和歌山県より「きのくに芸術新人賞」を受賞。サクソフォンを大室勇一氏に師事。現在、昭和音楽大学客員教授、国立音楽大学教授として後進の指導にもあたっている。


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