サックス記事 田中靖人の吹奏楽サックス A to Z 第21回 | 大切なことをおさらいしよう
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THE SAX vol.71(2015年5月25日発刊)より転載

田中靖人の吹奏楽サックス A to Z 第21回 | 大切なことをおさらいしよう

LESSON

東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスター 田中靖人さんによる「吹奏楽サックスA to Z」。次回からは実際に皆さんが吹くような吹奏楽曲を使ってアドバイスをいただきます。……が、その前にこれまでに田中さんが教えてくれた大切なことをピックアップしましたのでおさらいしておきましょう。

東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスター 田中靖人さんによる「吹奏楽サックスA to Z」。次回からは実際に皆さんが吹くような吹奏楽曲を使ってアドバイスをいただきます。……が、その前にこれまでに田中さんが教えてくれた大切なことをピックアップしましたのでおさらいしておきましょう。

練習法

Q. 後輩に「練習しなさい!」と言ってもあまり集中してくれません。楽しくて効果が上がる練習法ってありますか?
また、練習のためのよいエチュードなどがあれば教えてください。

A. 昔は「もっと気合いを入れろ!」「練習が足りない!」なんて先輩から言われると、わけがわからなくても、みんな一生懸命ついていこうと必死に頑張ったものですが、今は時代が違います。
それが良いとか悪いということではありませんが、情報が簡単にたくさん入ってくる今は、後輩諸君も本当に良いものを求めているのだと思います。だから先輩も、それから私を含める大人も、もっとしっかりしなくてはいけないですね。
さて前置きが長くなりましたが、楽しくて効果が上がる練習方法なんて、あったら私が知りたいですよ!(笑)
管楽器の練習の基本はロングトーンと音階練習です。これができない人は上達なしです! 必ず実行してほしいトレーニングですが、全調(長調12、短調12)があって、サクソフォンの音域である約2オクターブ半のトレーニングができる音階の本は必ず持っているべきです。
私は中学生の頃、ロングトーンや音階練習が嫌いで、ただ機械的に練習していることが退屈でたまりませんでした。高校2年生になって、音楽大学を目指すために大室勇一先生のお宅へ通うようになりましたが、つまらなそうに音階を演奏している私に「君が楽器を持って一音でも音を出す時に、それを音楽と思って演奏すれば、音階もエチュードも曲も同じように感じるはずだよ」とおっしゃいました。
何事もそうですが、目的意識がないとどうしていいのか分からず、つまらなくなってしまうということなのです。先輩がそこを分かって指導してあげないと、後輩も育ちませんよ。先輩がシンパイ……なんて思われないように頑張ってくださいね!(Vol.53)

音色

Q. 吹奏楽でサックスパートがソリでアンサンブルをすることがよくありますが(例えば『カンタベリー・コラール』、短いですが……)、「音色を合わせなさい」と言われます。サックスと言ってもアルトとテナー、バリトンは音域も違うし音色も違います。「音色を合わせる」というのはどういうふうに捉えたらいいですか?

A. 音色を合わせるということはアンサンブルにおいてとても大切なことですね。
これは同じ音にするということではなく、ブレンド(融合)することなのです。ではブレンドするには?というと、

①共演者の音をよく聴きましょう。
聞こえなければ相手の音と同じ音量で、または少しだけ弱い音で演奏しましょう。意識としては、相手の音の中に入るような気持ちで演奏することです。音量を合わせることは音色を合わせる第一歩です。

②音が聞こえたら、音程に注意します。これはお互いが寄り添う(歩み寄る)ことが必要です。
例えば、バリトン サックスの低いド(実音ミ♭)は音程が低めになりますが、フィンガリングでの音程修正はできない音域です。
これにソプラノの高いファ(実音ミ♭)や、アルトの高いド(実音ミ♭)が重なって音程が合わない場合、音程の修正が可能な音域であるソプラノやアルトがバリトンに合わせてあげると良いでしょう。
音程は、チューニングしてあっても常に動くものなので、常にお互い聴き合って寄り添うことが大切です。
これも音色を合わせることのひとつです。

③歌い方を合わせることも音色を合わせる要素です。
それはメロディに限らず、ハーモニーや、ユニゾンの長い音、リズムも同じです。

以上の3つは、音色を合わせることだけではなく、音楽を演奏する基本的なことです。(vol.69)

タンギング

Q. タンギングをすると息が途切れてしまい、うまくいきません。息をずっと出したまま綺麗にタンギングする方法を教えてください。

A. 管楽器で音を出すということは、歌を歌うことと同じとイメージしてみましょう。
タンギングは歌う時のような滑舌の種類はありませんが、教則本でよく見るのは「トゥ」「タ」と発音するようにとあります。その他には「ラ」や「ス」の発音でニュアンスを変化させる場合もありますが、大切なことは正しい呼吸法です。音を出すのはタンギングではなく息ということを忘れないでください。
では本題に入りますが、音を出しながらのタンギングが上手くいかない場合は、楽器を構えて息だけを出しながらタンギングの練習をしてみましょう。この場合、吹く時の圧力がないのでリラックスしてタンギングの動きを感じられると思います。舌はなるべく前に出して、リードとなるべく接近した状態(感覚的には数ミリ)を保ちます。舌のどの部分がリードに触れるかは、多少の違いがありますが、舌の先端か先端から少し奥が一般的です。
息を入れながら前述した「トゥ」「タ」と言うように舌をリードに触れます。舌の動きはなるべく少なくリラックスしてください。リードの先端に触れるようにすると、柔らかい発音になるでしょう。決して舌をリードに押し付けないで、あくまでも触れるだけです。安定してこの練習ができるようになったら、実際に音を出して練習してみましょう。自分の音をよく聴きながら柔らかく発音できるように、それから音が途切れないように、まずは4分音符のような簡単なリズムを吹いてみましょう。(vol.66)

音 程

Q. 指揮者に「ピッチが合ってないのでパート練習をするように」とよく言われます。全員でピッチを合わせるための良い練習方法があれば教えてください。

A. 音程は合うものではなく、歩み寄って合わせるものです。
音程を合わせるには、自分の音や人の音を集中してよく聴くことから始まりますが、とても大切なのは聴き合うことでお互い「歩み寄ること」なのです。
管楽器はそれぞれ構造や特性などの違いがありますし、同じ楽器でも数人集まれば音程のズレは生じます。たとえ同じ442Hz で合わせても音程は常に動くものなのです。音量のバランスも音色のズレに繋がって、音程が合っていても合っていないように聞こえることがあります。それらを理解して、まずはセクションでユニゾンの練習をやってみてください。それぞれのセクションでまとまれば、合奏での音程も次第に合ってくるでしょう。
(vol.53)

ブレス

Q. 以前、学校にサックスのコーチが来てくれてパートでレッスンを受けました。そのときに「ブレスを合わせれば音色や音程もそろいやすい」と教わりました。そのときはコーチの合図(指揮)で音を出していたので、すごくうまくいっていたのですが、自分たちでやると出だしもバラバラになります。みんなと合わせるためのブレスの取り方を教えてください!

A. 管楽器の基本的な呼吸のリズムは、「速く深く吸い、ゆっくり長く吐く」と言われますが、必ずしもそういうわけではありません。音楽のテンポとは関係なく、ゆっくり長く吸うこともあります。
でも、ブレスとテンポを関連付けて演奏すると、アンサンブルでは始まりを合わせやすくなることは確かです。ブレスを合わせることが、音色や音程を合わせることとなるかどうかはわかりませんが、それはブレスの取り方で始まりを合わせよう、相手の音をよく聴こうと、より集中するからではないでしょうか?(vol.69)

音 量

Q. うまい人の演奏を聴いていると、p、pp、f、ffという音の大きさの違いがはっきりわかるように思います。自分は音が大きい・小さいの2種類しか吹き分けられないのですが、どうしたらいろいろな音の大きさを吹き分けられるようになるでしょうか。

A. ロングトーンやスケールを使ってダイナミクスの変化を練習したことはありますか? ダイナミクスだけではなく、アクセントやスタッカートなどニュアンスの種類もいろいろありますね?
ふだんから、楽器を使って自由に喋るようなニュアンスを遊びの感覚で練習してみると良いでしょう。
私の生徒の中にも、1つのフレーズをいろんな発想で膨らませることができるようになったら、急激に上達した例があります。
速く吹けなければゆっくりと練習する。pのような小さな音のコントロールが苦手ならばfから始めて、徐々に小さく吹けるように繰り返し練習するのです。ダイナミクスの幅の話だけではなくなりましたが、そこからどう発想を膨らませるかというのも、問題を解決していくことに繋がりますね。(vol.54)

 

※この記事はTHE SAX vol.71を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中に第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位。矢田部賞を受賞し卒業後より、ソリストとして各地でリサイタルなど幅広いコンサート活動を行ない、テレビやラジオにも数多く出演。また、サクソフォン四重奏団《トルヴェール・クヮルテット》のバリトン・サクソフォーン奏者として国内外で活躍し、これまでに10枚を超えるCDをリリース。2001年には文化庁芸術祭レコード部門“大賞”を受賞。ソロ・アルバムに1991年「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」95年「ラプソディー」(東芝EMI)97年「サクソフォビア」(東芝EMI)2003年「ガーシュインカクテル」(佼成出版社)12年「モリコーネ・パラダイス」(EMIミュージック)をリリース。03年、和歌山県より「きのくに芸術新人賞」を受賞。サクソフォンを大室勇一氏に師事。現在、昭和音楽大学客員教授および国立音楽大学教授として後進の指導にもあたっている。


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