サックス記事 Pianists Insight 第1回 服部真理子
  サックス記事 Pianists Insight 第1回 服部真理子
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ピアニストの目線で、クラシックサックスを鋭く斬る!

Pianists Insight 第1回 服部真理子

MUSIC

クラシック奏者にとってピアニストは必要不可欠なパートナー。一番近い存在だからこそ気づくこと、言えることがきっとある。このコーナーでは、サックスの伴奏を長年務める名ピアニストたちに、クラシックサックス習得の秘訣をご教授いただく。初回はこれまでに数多の著名サックス奏者との共演歴を持つ服部真理子氏だ。
text:佐藤淳一 企画:Turn Around Artists Org.

曲の全体を見て、その音楽が何かを考える

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服部さんは、どんな経緯でサックスの伴奏をするようになったのですか?
服部
私が芸大で初めてサックスの伴奏をしたのは池上政人さんで、曲はグラズノフの『コンチェルト』でした。当時サックスの先生は、日本のクラシックサックスの草分けである阪口新先生で、そのクラスには私の主人の服部吉之、そして武藤賢一郎さんがいました。
サックスの曲のピアノ譜は音符の数が多く難しくて大変でしたが、阪口先生や先輩方に気に入られて試験やコンサートで伴奏をする機会が増えました。それまでも芸高にいたときは、様々な楽器のコンチェルトの伴奏ばかりしていましたが、でも芸大に入ってクレストンの『ソナタ』を伴奏するようになってから、ピアノだけでも音楽が作れて面白いことに気づきました。ピアノがしっかりとベースを作らないといけないんです。
――
サックス以外の伴奏もされていますが、サックスとの違いは?
服部
私は共演する人の音楽に合わせているので、あまり違いはありません。でも合わないプレイヤーのときは、音が喧嘩してしまう。そうするとどうやってもうまくいかないのです。これはそれぞれが持っている音色が合わないということが大きいですね。
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伴奏合わせをするときにサックス奏者に気を付けてほしいことは?
服部
まず曲の全体を見ておくこと。例えばデザンクロではテクニック的に難しいカデンツ、フィナーレは指を動かす練習に重きを置いてしまい、プレリュードではただ音を並べただけの演奏をしばしば聴きます。グラーヴェをレガートで演奏するのは本当に難しいことだと思いますが。またダイナミクスの差をもっともっとつけることも大事です。“このくらいで”と妥協せずに、極限まで頑張ってほしいです。それからフレーズの最後をもっと大切に。吹きっぱなしのような雑なフレーズの扱い方をせずにね。
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サックスのメロディだけで音楽を考えてしまわないように、どんな勉強をすればいいでしょうか?
服部
背景にある和声を考えることですね。和声がわからないと音色を作れません。和声の変化は世界観の変化といってもいいでしょう。ピアノで和音を弾いてみると、どういう和音の中で自分の旋律が存在するのかを実感でき、ただの旋律ではなく、全体の中に溶け込むようになれると思います。自分のパートだけ練習していても浮いてしまうので、相手が何をしているのか和音を弾くことで知ってほしいです。例えばデザンクロの冒頭でピアノが低音のソを弾いていますが、この音を感じないでサックスのフレーズを練習してもあまり意味はありません。頭の中で必ずピアノの音を鳴らして、一人ではなく相手がいることの意識をもつことが大切です。
またリハーサルの時に意見の交換がなくてもうまくいくときは、二人で音楽が作れているということ。ファブリス(・モレッティ)が日本に来るときは、自宅で2、3日合わせをするのですが、最初から最後まで通して終わりということがよくあります。良いリハーサルをしているときは、言葉はいらないんですね。お互いにそういったパートナーがみつかったことはラッキーだと思います。ファブリスはフランス、私は日本と普段は離れていますが、頭の中で作っている音楽に違いがないのだと思います。
――
服部さんとモレッティさんの関係のように音楽のベクトルをそろえるためには、どんなことに気を付けるべきでしょうか。
服部
お互いに音楽をちゃんと考えてきた上でリハーサルに臨み、音を聴き合いながら合わせることです。でも、音楽の作り方の趣味が合わないという経験や、1回のリハーサルですぐに本番ということもありますから一概には言えませんが……。
――
最後に勉強しているサックス奏者へのアドバイスをお願いします。
服部
活動の場は自分たち次第でいくらでも広げられます。またサックス奏者のためにサックスを吹くのではなく、一般のお客さまや音楽愛好家の人たちにも通じるサックス音楽が広がるといいですね。幼い子どもたちやお年寄り、身体の具合の悪い方の前で演奏しても“楽しかった”や“元気になった”と言ってもらえるコンサートができる演奏家になってほしいです。サックスは表現力豊かなすばらしい楽器ですから、普遍的なものを目指してください。そうすればサックスの世界はどんどん豊かになっていくと思います。
最後に、サックスのために書かれたすばらしい作品はたくさんありますので、それらを過去の物にしないためにも、コンサートでどんどん取り上げていってください。今年(2012年)の11月にファブリスとコンサートを行ないますが、モーリス、クレストン、デザンクロ、デュボア、サンカン、パスカルというプログラムを予定しています。今時こんなプログラムやらないよ〜という声が聞こえそうですが、楽しみにしてください(笑)。
 
服部真理子 Mariko Hattori
東京芸術大学附属音楽高校を経て同大学を卒業。同年渡仏し、帰国後は室内楽において数々のコンサートを各地で行なう。近年はファブリス・モレッティとフランス、日本で定期的にコンサートを開催している。ピアノを吉田よし、辛島輝治の両氏に加え、G.ムニエ女史の各氏に師事。
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