【シリーズ徹底検証】楽器編 アルトサックス
サックスは管楽器の中でも大変な人気を誇り、楽器店にはたくさんのメーカーの楽器、さらにそれぞれ個性を持ったモデルがずらりと並んでいる。そのどれもが“イチオシ”とされる現状で、いったいどの楽器が自分にマッチしているのかを見極めるのは大変難しい。そこで、今回の<シリーズ徹底検証>では、アルトサックスに焦点を当て、検証・紹介していく。
※この記事はTHE SAX vol.34(2009年3月25日発刊)の内容を再構成したものです
出会いと始まりの季節が到来し、「サックスを買って始めてみよう」「楽器を買い換えてみよう」と考える人は多いだろう。しかし現在、サックスは管楽器の中でも大変な人気を誇り、楽器店にはたくさんのメーカーの楽器、さらにそれぞれ個性を持ったモデルがずらりと並んでいる。そのどれもが“イチオシ”とされる現状で、いったいどの楽器が自分にマッチしているのかを見極めるのは大変難しい。そこで、今回の<シリーズ徹底検証>では、アルトサックスに焦点を当て、検証・紹介していこう。
安定性、高品質、独創性などの視点で評判を呼んでいるアルトサックス24本をセレクトし、ジャズ、クラシックの各方面で活躍するプレイヤーによる試奏取材を敢行。彼らが語った各楽器の詳しい特徴と、さらにその解説に基づいたチャートを掲載する。目指す音が違えば、楽器に求める大事なポイントが少し変わり、短所が長所になったり、またその逆もあり得るだろう。自分の目指す音と彼らの活動フィールドを重ね合わせて、参考にしてほしい。
また、「これからサックスを始める」という人や「まだやりたいジャンルが決められない」という人に向け、性格診断による楽器選びも提案。個人の性格や普段の生活スタイルに合わせたタイプを作り、楽器を8カテゴリーに分けている。まずはすべての解説を読んで参考にするも良し、診断結果によるカテゴリーにいきなり飛んでみるのも良し、それぞれの方法で自分好みの1本を探してみてはいかがだろう。
自分に合う楽器はどれ? 3つの探し方
まずは熟読 とりあえず全機種をじっくり読んでみよう
今回、24本の楽器を試奏してもらい、インタビュー形式でそれぞれに感想を聞いた。その際、以下のような質問を投げかけた。項目の中から特に奏者の印象に残ったことを中心に、これから楽器を選ぶ人の参考になるようなコメントをピックアップしている。
■ インタビュー項目
1.吹いてみた率直な感想
2.音色の均一性(粒立ち、鳴りのバランス、音のバラつきなど)
3.音量(大きい、小さい)
4.響き(音の遠達性)
5.音程の特性(良い、悪い、楽器特有の音程のクセがある場合、そのことについて)
6.キィアクションについて(反応の良し悪し、個人的に好きか嫌いか)
7.どんな人にオススメ?(初心者、上級者、ジャズ、クラシック など)
8.ルックスについて
チャートで探す どんな部分が自分に必要? ひと目で判る5段階評価
吉田、波多江両氏が試奏時直後に感想をメモしてくれた5段階評価によるチャートを公開。 二人の演奏ジャンルや音色の傾向を踏まえた上での参考とし、自身の楽器を選ぶ際のヒントにしてほしい。
性格による診断 性格判断で自分にピッタリの楽器を見つける
まだ自分がどんな音色を目指すべきか決められない……そんな方には、性格診断による楽器探しはいかが? スタンダード派、こだわり派、日々の生活スタイルに合わせて愛器を選んでみよう。
type A 確かな安定感で信頼のおける優等生タイプの楽器
ヤマハ YAS-62
ヤナギサワA-991
セルマー シリーズⅢ
type B 柔よく剛を制す、価格以上の実力を持つ楽器
アンティグア GL
ビュッフェ・クランポンBC8401-1
マルカート AL-900Z
type C 個性を主張せず、むしろ自分の個性を発揮しやすい楽器
コーン CAS280
ヤマハ YAS-875
セルマー シリーズⅡ SA80
type D 気品あるルックスとハイ・レスポンスがにじみ出る楽器
ヤマハ YAS-875EX
セルマー シリーズⅢ スターリングシルバー
ヤナギサワ A-9937
type E 古き良きヴィンテージ感を現代に再現した楽器
セルマー リファレンス
キャノンボールAV/LG-L
ヤマハ×イシモリ YAS-82ZWS
type F 独自の感性に深いこだわりを感じる楽器
ポール・モーリア AS SYSTEM-76
カドソンA-902V
ヤマハYAS-82Z
type G 確かな性能の中に個性が光る楽器
ステファンハウザーSAS1500-VN
カドソンA-902SG
ヤナギサワA-992
type H 際立つ個性とサウンドキャラクターを備えた楽器
イオ AS1065GLS
インダービネン
カイルヴェルト SX90R シャドー
波多江史朗
Shiro Hatae
東京音楽大学卒業、同大学研究科修了後渡仏。セルジーポントワーズ音楽院を審査員全員一致のプルミエプリにて卒業。同音楽院研究課程修了。パリ国立高等音楽院を首席の一等賞を得て卒業。セルマー賞を受賞。U.F.A.M. パリ国際コンクール名誉一等賞などフランスを中心とした数々のコンクールで上位入賞を果たす。在仏中よりフルモー・サクソフォーン四重奏団との協演、在仏オーケストラでも活躍。2001年2月帰国以来、2度のリサイタルを東京文化会館にて開催。国内プロオーケストラとの協奏曲共演、メディアへの演奏出演など幅広く活動している。サクソフォーンカルテット"SPIRITUS"、木管八重奏団"take8"メンバー。池袋音楽院講師、ポントワーズ音楽学校講師を歴任。現在、浜松国際管楽器アカデミーアドバイザー、ヤマハサクソフォーンキャンプ講師として後進を指導。サクソフォーンを石渡悠史、中村均、ジャン=イヴ・フルモー、クロード・ドゥラングルの各氏に師事。ソロアルバム「Songs」、著書「朝一番! アルトサックス練習帳」好評発売中。2008年8月、カルテット・スピリタスによる1stアルバム”Scene"(シーン) をBMGジャパンよりリリース。
吉田治
Osamu Yoshida
早稲田大学で、ハイソサイエティ・オーケストラに入部。4年次の山野ビッグバンド・コンテストにおいて、バンド・個人、共に最優秀賞を獲得。1986年より本格的にプロ活動を開始。ニューハード、ゲイスターズなどのフルバンドを経て1992年からフリーランスとなる。コンポーザー・アレンジャーとしてもジャズを中心とするオリジナル・アレンジを様々なバンドに提供する他、コマーシャル・アレンジも数多く手がける。TBS の東京フレンドパーク2では、自己のバンドでテーマ等をレコーディング、音楽監督も担当。現在は「Battle Jazz Big Band」、自己のバンド「シルバー・ライニング」(Silver Lining)のライブを中心に活動中。