サックス記事 JodyJazzマウスピース創業者ジョディ・エスピナ×藤野美由紀
  サックス記事 JodyJazzマウスピース創業者ジョディ・エスピナ×藤野美由紀
[1ページ目│記事トップ
THE SAX vol.98

JodyJazzマウスピース創業者ジョディ・エスピナ×藤野美由紀

GEAR

カーク・ウェイラム、トム・スコットをはじめ国内外の多くのトッププレイヤーが使う「JodyJazz」マウスピース。このたび、創業者であるJody Espina(ジョディ・エスピナ)氏が来日。愛用アーティストの藤野美由紀氏との対談が実現した。いま話題のマウスピースの、知られざるエピソードに迫る。

カーク・ウェイラム、トム・スコットをはじめ国内外の多くのトッププレイヤーが使う「JodyJazz」マウスピース。このたび、創業者であるJody Espina(ジョディ・エスピナ)氏が来日。愛用アーティストの藤野美由紀氏との対談が実現した。いま話題のマウスピースの、知られざるエピソードに迫る。

マウスピースの名工から技術を受け継ぎ、進化を遂げたJodyJazz

優れたプレイヤーでもあるジョディさんが、JodyJazzを手掛けるようになったきっかけは?
ジョディ
プロとして活動していく中で、常に理想のマウスピースを追い求めていました。私がJodyJazzを創業するきっかけとなったのは、サンティ・ラニヨンさん(※マウスピースブランド「Runyon」の創業者で、彼自身もサックス奏者)との出会いでした。当時彼が私のために「JodyJazz」と名付けたカスタムマウスピースを作ってくれたのですが、それがとても素晴らしいものだったんです。衝撃を受けた私は、その後彼のもとへ通い、ともに過ごす中でどんどん製作にのめり込んでいきました。なお、彼はその時点で93歳でした。
こうして2000年にJodyJazzブランドがニューヨークの工房でスタートしたのですが、2008年まではモールド製法で原型を作り、それを私が手作業で仕上げていました。2008年からジョージアのサバンナに移って工場を作り、そこで最新鋭のCNC旋盤を導入し、安定して供給ができるようになりました。過去も現在も、すべて吹いてテストをしたうえで出荷しています。

ダ・ヴィンチの黄金比から生まれた革新的モデル

JodyJazzのコンセプトは?
ジョディ
ニューヨークにいた頃、その土地柄で多くのミュージシャンが訪れました。おかげでヴィンテージも含めたくさんのマウスピースを試すことができ、数値的な部分も含めて研究を重ねました。そこで良いマウスピースに必要な二つの要素に気付きました。一つは、息を入れた分しっかりとレスポンスが返ってくること。もう一つは、ダークなサウンドでもブライトなサウンドでも音に芯があること。これらはJodyJazzのすべてのラインナップに備わっています。この両立を実現するには、マウスピースのフェイスカーブの調整が重要になります。
藤野
JodyJazzのマウスピースに変えてまず実感したのが、レスポンスが抜群に良いことでした。だから、長時間吹いていても疲れないんですよ。
ジョディ
エレクトリック系の楽器と一緒に演奏し、その中で自分を表現するためには、しっかりとボリュームを出せるマウスピースが必要です。ただ、大きな音を出そうとするとどうしても音色がブライトに寄り、軽くなってしまう。そこで、ブライトになっても音に厚みを持たせられるよう研究した結果、レオナルド・ダ・ヴィンチの黄金比にヒントを得て、「DV」の背面の形が出来上がりました。これにより、ボリューム、ブライトな音、厚みのある音すべてを兼ね備えることが可能となります。このモデルが、JodyJazzが飛躍するきっかけになりました。
「DV」の背面
「DV」の背面

 

藤野
あの特徴的なデザインにはしっかり計算された理由があったんですね。JodyJazzはデザイン面のクオリティも高いですが、ジョディさんご自身がデザインされているのですか?
ジョディ
基本的には私がデザインしています。近年は3Dグラフィックスで細かくデザインできるようになったので、見た目も良くなるようエンジニアと一緒に試行錯誤を重ねています。もちろん音が犠牲にならないように設計しています。

 

SUPER JET
「SUPER JET」の
背面
藤野
私は最初「DV」を使っていたのですが、ジョディさんが私の演奏を聴いて「美由紀にはSUPER JETが良いのではないか」と勧めてくれて、吹いてみたらまさに私の出したい音にぴったりハマって驚きました。「SUPER JET」のバッフルからチェンバーにかけての落とし込みも特徴的ですよね。
SUPER JET
「SUPER JET」の
背面
ジョディ
デュコフやビーチラーなどのブランドを使っている奏者に提供したくて、「SUPER JET」を作りました。これらのブランドを研究し、さらに吹きやすさと音の厚みを持たせ、JodyJazz独自の魅力を付加したかった。この角度をつけることで、ソリッドな音がストレートに出せるようになります。
 
その他のモデルについてもお聞きしたいのですが、「JET」でポリカーボネイトを採用した理由は?
ジョディ
マウスピースの素材は硬くなるほどブライトな音になります。「JET」はハードラバーよりもブライトな音にしたかったので、ポリカーボネイトを採用しました。
「GIANT」(※テナー用のみ)は特殊な素材を使っていて、アルミに硬質アルマイト処理を施すことでかなりの硬さを出しています。狙ったのは、金属だけどハードラバーのようなサイズ感。これをブラス材でやろうとすると非常に重くなってしまうんです。このモデルはチェンバーも広いのでダークな音が出る構造になっているのですが、素材が硬いからブライトな音になる。その組み合わせが特徴的でユニークなんです。ちなみに、過去にファラオ・サンダースが「RIA」のマウスピースを持ってきて、これのコピーを作ってくれと頼まれたのが開発のきっかけでした。それがアルミで出来ていて、そこにインスパイアされて生まれたのが「GIANT」です。
左から、「JET」「GIANT」
左から、「JET」「GIANT」

“ 驚き”を提供してくれるJodyJazz、気になる新作は?

藤野さんは、JodyJazzを使い始めて、以前と変わったことはありますか?
藤野
まだ使い始めて一年も経っていませんが、すでに長年使っているように感じるほど馴染んでいます。これは偶然ですが、JodyJazzに変えたタイミングで楽器本体もP.モーリアに変わったんです。本体との相性がすごく良くて、周りからは音が太くなったと言われるようになりました。
ジョディ
一つ質問だけど、「STAY FUNKY'17」(藤野氏の1stソロアルバム)の『LADY MARMALADE』」と『FEEL LIKE MAKIN’LOVE』ではマウスピースを変えている?
藤野
すごい、さすがですね! その通りです。これはJodyJazzに変える前のアルバムですが、次のアルバムは全曲このJodyJazzで収録する予定で、私自身も楽しみです。
ジョディ
それは楽しみですね。美由紀は音色の幅がとても広い。アグレッシブでファンキーなサウンドを出せるし、グローヴァー・ワシントンJr.のようなスムースなサウンドも出せる。曲のチョイスもとても良い。彼女がJodyJazzを使ってくれて、とても光栄に思います。
藤野
そう言っていただけると嬉しいです。JodyJazzのマウスピースに出会ってから、いつも驚きばかりです。これからもそんなマウスピースを作り続けて欲しいです。
ジョディ
実は新しいマウスピースを開発中です。JETの系統ですが、素材はハードラバーになる予定です。楽しみにしていてください。

ジョディ氏の提案により、急遽二人のセッションが実現!

JodyJazzの魅力が発揮されたライブ演奏動画をチェック!


アルソ出版公式YouTubeチャンネル

マウスピース選びのポイント

上達するうえで一番大事なことは、自分の理想のサウンドを追い求めて練習すること。その過程で、いろいろなマウスピースを試してみるのも大切です。マウスピースとリードは一番最初に音が鳴るポイントであり、重要なパーツです。マウスピースを変えるときは、リードも選びなおしてください。自分にとって最適な組み合わせを見つけること。すると、とてもラクに演奏ができるようになります。それはつまり音楽に集中できるということなので、上達に繋がります。特に日本は楽器店に置かれているマウスピースのラインナップが豊富で、世界的に見ても恵まれていると感じます。ぜひ新たなマウスピースを試すという経験をしてみてください。(by ジョディ・エスピナ)

Profile 藤野美由紀 Funk Soulをサックスで唄う自己のBandでのアーティスト活動、歌手のサポートと、教則本、教則や楽譜のダウンロード販売、DVDやCDの販売、音楽ギフト、イベントやライブの企画、サックスのジュエリー企画、サックスや音楽のスクール事業を展開する。

商品に関するお問合せ 
島村楽器株式会社 商品開発事業部 
TEL.03-3613-4160 http://www.shimamura.co.jp

JodyJazz製品詳細についてはこちら
https://www.shimamura.co.jp/originalbrand/import-agent/jodyjazz/index.html

登場するアーティスト
画像

藤野美由紀
Miyuki Fujino

FUNK,SOULを中心とする、日本のサックス奏者。ソロ活動を展開し、国内外多数の有名アーティストとの共演。リーダーアルバムを4枚リリース。アルソ出版からCandy Dulfer Master Bookや、FUNK&SOULなどの著書もリリース。 2018年 5月には、ギタリスト佐橋佳幸によるプロデュースで、アルバムRight Timeを制作し、アメリカのファンキーサックス奏者 Eddie.M(プリンス、シーラE、13cat'sのサックス奏者)をスペシャルゲストに迎える。2019年には台湾のP.Mauriatと米国Jody Jazzと契約。2022年New Album、SAXIE FUNKをリリース。日本から世界に向けてFUNKな音楽に乗せてメッセージを発信し続けている。
YouTubeチャンネル:FUNKY SAX 藤野美由紀

サックス