サックス記事 Jody Jazzの秘密に迫るマウスピース対談!
  サックス記事 Jody Jazzの秘密に迫るマウスピース対談!
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山﨑ユリエ×Jody Espina

Jody Jazzの秘密に迫るマウスピース対談!

GEAR
 

革新的な設計と精巧な作りで、世界中のプレイヤーからの信頼を集めるマウスピースメーカー「Jody Jazz」。今回、Jody Jazzの社長Jody Espina氏の来日にあたり、長年Jody Jazzを愛用するサックスプレイヤー 山﨑ユリエ氏がJody氏と対談を行なった。Jody Jazzの魅力から、必見のマウスピース選びまで存分に語ってもらった。
取材協力:島村楽器 錦糸町マルイクラシック店

中低音のアプローチを大事にしたいから、Jody Jazzを選んだ

山﨑さんがJody Jazzを使いはじめた理由は?
山﨑
私は、もともとメイヤーやドレイクなどのラバーのマウスピースを使っていたんですが、パワフルで音圧のあるミュージシャンと一緒に演奏することが多かったので、もうちょっと音が抜けるメタルのマウスピースを探していて。色々なメタルを試しましたが、ブライト過ぎたり、自分から出る音としてイマイチしっくりこなかったんです。そんな時にJody Jazzの「DV」に出会いました。DVはラバーのような温かくて柔らかい音も出せて、それでいてメタル特有のパワーも兼ね備えたマウスピースで、以来気に入って6年ほど使っていました。今年リリースしたアルバムのレコーディングをする際、もう少し華やかでエッジの効いたサウンドが欲しいなと思い、収録の直前に「SUPER JET」に変えました。リズムセクションが海外のミュージシャンで、彼らの圧倒的なボトムサウンドに負けない必要があるなと思ったんです。SUPER JETはエッジもあって、レスポンスも良くて、リズムの面で自分が置きたい位置に明確に反応してくれるんですよね。
JODY
(以下J)
それはいい決断だったと思うよ。SUPER JETは明るい音色やパワーだけじゃなく、低音域でも美しいサウンドが出せるマウスピース。メタルのマウスピースはブライトで音の抜けもいいんだけど、低音の音が良くなかったり、小さい音を出した時に可愛い音になってしまうことも多いよね。でもSUPER JETは、小さい音から大きい音まで美しい音色が出せるマウスピースなんだよ。
山﨑さんが理想とする音色のイメージはどんなものですか?
山﨑
実は私、アルトプレイヤーよりボブ・ミンツァーやカーク・ウェイラムといったテナープレイヤーが好きで(笑)。だからテナーの方が、自分の中で「こうしたい」っていう音色のイメージがはっきりありますね。逆にアルトは周りから求められる音色とのバランスをみつつ、中低音域でのアプローチを特に大事にしているので、中低音が豊かで、かつエッジのきいた音色のJody Jazzに行き着いたのかもしれません。
 
 

ダビンチにヒントを得た、マウスピースの黄金比

ジョディさんはJody Jazzの代表であり、プレイヤーでもありますが、普段はどのマウスピースを使用されていますか?
J
僕はDVが好きで長く使っていたよ。DVは、ウインドウ部分に独自の設計が施されたとてもユニークなマウスピースだ。楽に吹いてしっかりと鳴ってくれる効率の良さが特徴で、特に低音の鳴りは素晴らしい。でもいまは、DVを改良させた新しいマウスピース「DV HR(ハードラバー)」を気に入って使っている。DV HRは、DVの特徴はそのままに、ラバー特有のウォームな音色が魅力で、吹き手に完全にフィットするマウスピースだと感じている。
僕はマウスピースを開発する際、最低9ヶ月は自分でも使うから、どれも自分のかわいい子どもたちで順位はつけられないけど(笑)。だからシーンによって、使い分けてるよ。
例えば、明るさが欲しい時やポップな曲を演奏する時は、SUPER JETを使ったりね。テナーは「HR*(HRスター) Custom Dark」と、ハンマリングを施したローズゴールドの「HH(ハンドハンマード)」を主に使っているかな。HHは300個限定で作ったモデルで、もの凄くヘヴィなマウスピースだけど音色がウォームで芯があり、低音域も遠くまでしっかり響かせることができる。カーク・ウェイラムも気に入って使っているモデルだね。(ジョディがHHを演奏する)
 
HHモデル
 
 
山﨑
凄い! めちゃめちゃ良い音ですね!
J
HHはマウスピースが重い分、低音域をしっかり支えてくれて、低音でも甘いサウンドが出るから表現の幅が格段に上がる。一方のHR* Custom Darkは、見た目はシンプルだけど、ダークで力強いサウンドを作りながら、ボトムまでしっかり鳴るマウスピースだよ。
Jody Jazzは、DVをはじめ、他のマウスピースにない独自の設計が特徴的ですね。
J
DVは、「ダビンチ」の略なんだ。レオナルド・ダビンチの「黄金比」は知ってるかい? 人でも物でも、人が美しいと感じるものには、美しく感じる比率の法則があるというものだ。この黄金比は、マウスピースにも通じるんじゃないか?と思ったのがキッカケで、モデル名に“DV”とつくマウスピースは、いずれも黄金比を細部まで徹底的に研究して作ったよ。最大の特徴がウインドウの三角形のカット部分でここは特許も取得している。ふと思いついたアイデアだったけど、この独特なカットは素晴らしい結果に繋がったね。最近発売した「DV HR」(※注:国内順次入荷予定)も、この黄金比を用いて製作したマウスピースだよ。DV HRは、DVよりも咥えた時に奏者の口の中で広い空間を作れるから、より温かい音色が出せて、パワーも出せる設計にしてある。メイヤーを使用しているジャズプレイヤーにはぜひ試してもらいたいね。

マウスピースを変えたらリードも変える!?

J
ユリエは何のリードを使っているかな?
山﨑
Wood Stoneの3番を使ってます。
J
なるほど。DVなら3番のリードは合うと思うけど、SUPER JETはDVよりフェイシングカーブが短いから、3番だとちょっと硬いかもね。リードの振動を考えると、もう少し柔らかい番手を試すことをおすすめするよ。
山﨑
柔らかいリードだと高音が裏返りやすくなりませんか?
J
みんなそう思いがちだけど、試したらわかってくれると思う。マウスピースによって、適正なリードの硬さは変わるんだ。DVだと逆に3や3.5のような硬いリードじゃないと合わない。どうしてそういうことが起きるかというと、マウスピースの開きと、ティップレールの厚さ、フェイシングカーブの角度によって、リードが振動するスピードは本来違うからなんだよ。
山﨑
なるほど! 実は私の生徒さんでDVに替えた人も多くて、高音でキュッとリードの音が鳴ってしまうという相談を受けたんですが、リードが合ってなかったからなんですね!
J
リードの硬さもあるけど、それはタンギングの時にリードを噛んでしまっている可能性があるね。口の中の面積が小さい人はそうなりやすい。DVよりDV HRの方が口の中の面積を広く取れるから、その問題も軽減されると思うけど。
山﨑
初心者の人はDV HRを使った方がいい?
J
いや、DV HRはDVよりウォームなサウンドを求めている人のためのマウスピースで、初心者向けのモデルではないんだ。初心者が使うなら「HR*(HRスター)」をおすすめするよ。フェイシングカーブが始まる位置はマウスピースによって違って、マウスピースを口の中に入れて噛む位置も変わってくるから、コントロールが不安定な初心者がDVやSUPER JETを使用すると裏返ってしまいやすい。HR*はコントロールがしやすく、クラシックのマウスピースから変更する人やジャズのビギナーにも合うマウスピース。それでいてカーク(ウェイラム)のようなプロも愛用していたマウスピースだよ。
山﨑
なるほど! すごく勉強になります!
J
マウスピースで1番重要なのはフェイシングカーブ、次に重要なのはティップレール。マウスピースはそれぞれが違うから、マウスピースを変えたらリードの番手も調整するといいよ!
 
音色のカギを握る「DV」シリーズの特徴的なカット

マウスピースの各部名称

 

Jody社長直伝マウスピースの選び方

Jody Jazzのマウスピースはどのように製造しているのですか?
J
5軸のCNCマシンを5台使って製造しているよ。5軸のマシンだとより精密なプログラミング・加工が可能になるからね。製造工程の85%はCNCマシンを使用して外径や内径をカットし、フェイシングなどの精密な部分はゆっくりカットしたりといった「スピードの調整」に至るまで、すべてのモデル・オープニング(開き)ごとにプログラミングしている。そこから最終的にティップレールやフェイシング部分を手作業で仕上げているよ。ビジネス的な経営者なら、本数のノルマや製造工程にかける時間効率を気にして、早く作れと言うかもしれない。でも僕はプレイヤーでもあるからね。ユーザーの気持ちに立って、時間がかかってもより良いマウスピースを作りたいと思う。
まだ試されていない人に山﨑さんがおすすめするJody Jazzの魅力は?
山﨑
色々なモデルを試してきましたが、それぞれキャラクターが違って、どれもレスポンスが良く、コントロールしやすくて安定感があるのがJody Jazzの魅力ですね。だから安心して選べる。その中で、ただ温かいだけじゃなくて、プラスアルファで馬力が出るものがあったりと、理想に近いものの中から選べるのが嬉しいですね。
J
Jody Jazzのマウスピースを選ぶ時には、まず同じ開きでHR*やDV HRなどのモデルを吹き比べてみて、気に入ったモデルを選んでから、開きの違いを試して自分に合うものを絞り込んでいくことをおすすめするよ。一般的に鋳造(形に流し込んで製造する方法)で作られているラバーのマウスピースは、開きが広くなるに連れてダークな音色に変化しやすい。Jody Jazzのマウスピースは開きを変えても音色が統一されるように、開きごとに異なるバッフルやフェイシングカーブが設計してあるから、開きを変えても音色は変わらないんだ。だから、モデルで“自分の好みの音色”を選んで、オープニングで“自分に合ったマウスピース”を選ぶことができる。日本のみなさんもぜひJody Jazzを試してみてください。

Jody社長と山﨑さんの即興セッション動画
「After Talk Session」を公開中!

 

ラインナップや商品詳細は下記より

 

Jody Jazz 代理店:島村楽器株式会社/株式会社黒澤楽器店