トランペット記事 私たちを結ぶもの それは音楽への愛情と、トランペットを演奏する情熱
  トランペット記事 私たちを結ぶもの それは音楽への愛情と、トランペットを演奏する情熱
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セルゲイ・ナカリャコフ

私たちを結ぶもの それは音楽への愛情と、トランペットを演奏する情熱

ARTIST

10歳から演奏活動をスタートし、驚異的なテクニックと豊かな音楽性から「トランペット界のパガニーニ」と絶賛され続けているセルゲイ・ナカリャコフさんが、本誌に初登場! ご自身のルーツ、愛用するトランペットとフリューゲルホルン、彼のために作曲された空前絶後の超絶技巧を要する協奏曲を収録した新しいアルバム、また今秋に出演する音楽祭「サントリーホールARKクラシックス」など、多岐に渡ってお話を伺った。
(インタビュー・文:鬼木玲子/取材協力:エイベックス・クラシックス・インターナショナル)

ドクシツェルの音色に聞き惚れて

ナカリャコフさんがトランペットを始めたきっかけから、お話を伺いたいと思います。小さいころから、音楽に触れられる環境だったのですか?
セルゲイ
私の両親は、アマチュアの交響楽団で演奏していました。父は、指揮とライブラリアンを務め、ピアノも教えていました。母はヴァイオリンを弾き、姉もピアノを演奏していたので、幼少期から音楽に囲まれていました。私が最初に触れた楽器も、ピアノです。姉に続いて弾くようになり、6歳から9歳まで続けていました。下手というわけではなかったけれど、姉に比べるとそれほどでも……という感じでした(笑)。両親も自分自身もがっかりして、あまりピアノに興味は持てませんでした。
ところが、父に勧められて始めたトランペットは、まったく新しい楽器との出会いだったこともあり、かなり興奮を覚えました。それが9歳の時です。実は、脊髄を怪我してしまい、医者から「半年間は座らずに、立っているか、横になっているかで過ごすように」と言われ、座って演奏するピアノは自動的に辞めることに。本格的にトランペットを始めたというわけです。
トランペットの手ほどきは、お父さまから受けたのですか?
セルゲイ
いいえ、父の知人のトランペット奏者の元で、レッスンを始めました。その方は、市の交響楽団の首席奏者でした。とは言え、自宅でのレッスンを監督するのは父で、私に練習のやり方を教えてくれました。父はトランペットを吹くことはできませんでしたが、トランペットとはどんな楽器なのか、どんな音色がいいのかといったことを自ら学びながら、私をサポートしてくれました。
ナカリャコフさんは、始めた当初からトランペットに魅力を感じていたのですか?
セルゲイ
最初は、単純に新しいことへの興味だったと思います。ところが、その当時モスクワで勉強中の姉が、帰省するたびにトランペット奏者のLPを持ち帰ってくれたのです。そのLPを聴いて感動し、トランペットの音色に非常に関心を持ちました。この楽器は、こんなにも荘厳な音が出るのかと驚き、その美しさに聴き惚れて以来、トランペットが私の情熱になったのです。
そのLPの演奏者は、ひょっとするとティモフェイ・ドクシツェル氏ですか?
セルゲイ
そうです。彼は素晴らしいトランペット奏者であることはもちろん、それだけでなく、真の音楽家でした。彼の演奏は誠実であり、非常に繊細なものでした。とにかく、偉大な音楽家です。彼のレコーディングの中で私が感動したのは、J.S.バッハの『プレリュード』。この楽曲が収められたアルバムは、今も大好きです。私が最も影響を受けた演奏家であり、彼の音楽性が今も自分の中にあると思います。音楽家が成長する時というのは、スポンジのようにすべてを吸収していきますから、私が成長期だった若い頃は、現在よりもっと彼の演奏に似ていたかもしれません。

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・ソリストとして歩み始めたキャリアの道
・初めて演奏した時と同じように、今でも興奮を覚える作品
・日本で演奏することは、至福の時
・職人とのコラボレーションで新しいトランペットを

© THIERRY COHEN

SERGEI NAKARIAKOV セルゲイ・ナカリャコフ
1ロシア生まれでイスラエル国籍のトランペット奏者。誰にも真似のできない超絶的な演奏テクニックとビードロのような美しい音色から「トランペット界のパガニーニ」、「トランペット界のカルーソー」とも呼ばれる。レパートリーは幅広く、トランぺットのためのオリジナル曲はもちろん、ヴァイオリンのための超絶技巧曲やフリューゲルホルンによるチェロやホルンのための作品演奏でも高い評価を受けている。中でもクラリネット奏者で作曲家でもあるヴィトマンが、彼のために作曲した作品は循環呼吸や超絶的なタンギングを多用したトランペットの限界を超えた衝撃的な作品で、彼の類い稀な実力と評価を不動のものとした。これまでに世界的に著名な指揮者やソリストとも多数共演し、CDも数多くリリースしており、本人名義のCDはもちろんのこと、アルゲリッチとの共演による協奏曲や室内楽曲のCDも高く評価されている。ARレゾナンス社製のトランペットとマウスピース、アントワーヌ・クルトワ社製のフリューゲルホルンを使用。
オフィシャルサイト https://www.nakariakov.info/

 
 CD Information
 

「空前絶後の超絶技巧〜ヴィトマン:不条理」
【AVCL-84153】¥2,750(税込)エイベックス・クラシックス・インターナショナル [演奏]セルゲイ・ナカリャコフ(Tp,Flh)、イェルク・ヴィトマン(Cond)、アイルランド室内管弦楽団
[曲目]ヴィトマン:不条理〜トランペット小協奏曲、ハイドン:オーボエ協奏曲 ハ長調(フリューゲルホルン版)第1楽章〜 第2楽章〜第3楽章、モーツァルト:ホルン協奏曲第 4 番 変ホ長調(フリューゲルンホルン版)第1楽章〜第2楽章〜第3楽章

 

「献呈 ドクシツェルに捧ぐ〈ボーナストラック付〉」
【AVCL-84154】¥2,750(税込)エイベックス・クラシックス・インターナショナル
[演奏]セルゲイ・ナカリャコフ(Tp,Flh)、マリア・メエロヴィチ(Pf)
[曲目]パガニーニ:24のカプリース 作品1よりカプリース第24番、ドビュッシー:レントよりおそく、クライスラー:美しきロスマリン、愛の悲しみ、愛の喜び、アーバン:華麗なる幻想曲、プーランク:愛の小径、あなたはそういう人、エッフェル塔ポルカ、バルトーク:ルーマニア民俗舞曲、エルガー:愛の挨拶、ベーメ:タランテラ(ナポリターナ)、グルック:精霊たちの踊り、ブルッフ:コル・ニドライ、フォーレ:夢のあとに、グラズノフ:アルバムブラット

 
 Concert Information

サントリーホール ARKクラシックス 公演2
ARK スペシャル・コンサートSOLD OUT
[日時]2023年9月30日(土)12:00開演
[会場]サントリーホール 大ホール
[出演]セルゲイ・ナカリャコフ(Tp)、辻井伸行(Pf)、伊藤翔(Cond)、)ARK シンフォニエッタ
[曲目]<辻井伸行 Beautiful Melodies>久石譲:羊と鋼の森、Summer、アシタカとサン、風の通り道、坂本龍一:energy flow、戦場のメリークリスマス、シェルタリング・スカイ、<セルゲイ・ナカリャコフ 空前絶後の超絶技巧>ヴィトマン:トランペット小協奏曲《不条理》〜セルゲイ・ナカリャコフのために

サントリーホール ARKクラシックス 公演7
RK DUO デュオの魅力
[日時]2023年10月1日(日)14:00開演
[会場]サントリーホール ブルーローズ
[出演]セルゲイ・ナカリャコフ(Flh)、松田理奈(Vn)、ユンソン(Vc)、髙木竜馬(Pf)
[曲目]シューマン:幻想小曲集 Op.73、モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第21番 ホ短調 K.304、シューマン:アダージョとアレグロ、ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op.108
[チケット料金]全席指定5,000 円(税込)

サントリーホール ARKクラシックス 公演9
ARK BRASS
スペシャル・ゲスト:セルゲイ・ナカリャコフ

[日時]2023年10月2日(月)19:00開演
[会場]サントリーホール ブルーローズ
[出演]ARK BRASS(金管五重奏〜十重奏):佐藤友紀/川田修一/安藤友樹/松山萌(Tp)、福川伸陽(Hn)、青木 昂/髙瀨新太郎/越智大輔/黒金寛行(Tb)、次田心平(Tub)、秋田孝訓(Perc)、スペシャル・ゲスト:セルゲイ・ナカリャコフ(Tp)
[曲目]ハワース:プロセッショナル・ファンファーレI、ヘイゼル:クラーケン、ガブリエリ:ピアノとフォルテのソナタ、ファーナビー組曲より、映画『めぐり逢う朝』組曲、コルベル:アリエッティーズ・ソング、ピアソラ:リベルタンゴ、ラングフォード:組曲《ロンドンの小景》、バッハ:G線上のアリア、ベーメ:タランテラ
[チケット料金]全席指定5,000 円(税込)

サントリーホール ARKクラシックス 公演11
ARK クロージング・ナイトSOLD OUT
[日時]2023年10月3日(火)19:00開演
[会場]サントリーホール ブルーローズ
[出演]セルゲイ・ナカリャコフ(Tp)、辻井伸行/清水和音/髙木竜馬(Pf)、三浦文彰(Vn)、ユンソン/ヨナタン・ローゼマン(Vc)
[曲目]ポッパー:2つのチェロのための組曲 Op.16 より I、IV、V、ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 Op.19 より 第 3 楽章、リュエフ:ソナチネ、ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第 2 番 イ長調 Op.100、アーバン:ベッリーニのノルマの主題による変奏曲、ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 へ長調 Op.24 《春》

全公演共通
[問合せ]サントリーホール 0570-55-0017
チケットスペース 03-3234-9999

 

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