トランペット記事 アダム・ラッパの世界
  トランペット記事 アダム・ラッパの世界
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多彩な顔を持つジャンルを超越したスーパー・トランペッター

アダム・ラッパの世界

ARTIST

ブロードウェイ・ショー「blast!」で一躍脚光を浴びて以来、世界各国を飛び回るパフォーマーとしてはもちろん、同じく各地でクリニックを開催する教育者、また近年はロータス・トランペットを主宰する楽器開発の分野でも才能を発揮と、八面六臂の活躍を見せるアダム・ラッパ。
そんなスーパー・トランペッターが去る2022年11月に日本でライブとクリニックを開催した。
この機会に、彼の最新ヴォイスをお届けするとともに、その多才ぶりにフォーカスしてみよう!
(取材協力:大久保管楽器店)

 
アダム・ラッパ[LIVE in Tokyo]
2022年11月19日(土) 四谷区民ホール
[曲目]Intro/Pura Sangre(RAPA)、What's Left Unsaid(RAPA,Dell'Anna)、Los Tres Golpes(Ignacio Cervantes)、MA(Dell'Anna ピアノ独奏)、Happily Never After(RAPA,Dell'Anna)、Overjoyed(Stevie Wonder)、A un Beso de Distancia(Cris Lobo)、Armando's Rhumba(Chic Corea)
[演奏]アダム・ラッパ(Tp)、ルッカ・デランナ(Pf)
 

Part1. 喇叭道、ふたたび。

最初の出会いは2003年、セントルイスの劇場にて

最初にその名前を知った瞬間から、なにか運命的なものを感じていたような気がする。「blast!」が初来日する前年(2002年)の事前取材で訪問したアメリカ・セントルイス。プログラムにあるトランペットのソリスト欄にAdam Rapaという記載を見たとき、当時の取材班一同はトランペット奏者がラッパなんて名前なんだってさ(笑)! と、ひそかにウケまくっていたんですね。
そして、その実演を目の当たりにしたとき、語呂合わせにウケていたのとはまったく次元の違う興奮と感激が取材班全員を襲った。これまでのトランペット演奏に対する想像をはるかに超える完成度と、その比類のないしなやかな表現力に、一同は魅了されたのでした。しかし残念ながらAdam RapaはJapan Tour2003には同行せず、彼の実力を日本が知るのは翌2004年まで待たねばなりませんでした。アダム初来日の2004年ツアーでは、予想通り……いや、予想を超えた興奮が日本全国に拡散。それからおよそ20年に渡り、彼は「CYBER-JAM」、「SHOCK WAVE」、「Blast!II~music in Extreme」など、などいくつもの「Brass theater」(後述)的な遺伝子を持つ演目の中心的存在として活躍し、2007年にはそれらの活動の集大成ではないかと思われる「鼓喇舞(コラブ)」を世に問い、返す刀で、初の著書「A Path to the total efficiency(邦題「喇叭道」)」(三栄書房・絶版)や「Life on the road」「Rebelión」「Canción para Sara~Live in Argentina」などの傑出したアルバムをリリースするなど、実に精力的な活動を展開してきたのでした。
日本人にとっては文字通り「喇叭の申し子」のような彼ですが、もちろんその姓が日本語の喇叭と同じ響きを持っているのは単なる偶然に過ぎません。イタリア系の移民であった祖父が、イタリアによくある姓を短くしてアメリカに帰化した結果、我々にとって幸せな偶然が発生した、というわけ。彼を日本に広く知らしめた「blast!」は、マーチングショーを母体として、カナディアンブラスなどの協力を得て生まれた「Brass theater」の発展形で、アメリカでは70年代から、青少年の健全育成のためにマーチングという形態が活用されてきたんです(その裏には、当時つまり70年代初頭のアメリカが、かなり「荒れていた」という事実があります)。
彼自身も若き日にはそういうアメリカのマーチング文化圏の中で腕を磨き、数々の賞を獲得してきました。しかし、彼は出会った当時から「自分のメインフィールドは、ここじゃない」つまり、俺はマーチングだけのオトコじゃないぞ! と呟いていたんですね。
というわけで、アダムは今に至るまで唯一無二の道を歩み続けてきた、と考えれば、そのAdam Rapaの歩んで来た道こそが、喇叭道である……と、筆者は考えています。そしてアダムは、今もその道を喇叭道を歩み続けているのです。今回は、コロナ騒ぎのなかで開催された2022年のライブを含めて、編集部が捉えたAdam Rapaの「喇叭道における現在地」をご紹介していきましょう。ライブを終えたアダムとのマスタークラスやインタビュー、およびインターネットを介したやりとりを再構成した記録です。

次のページへ続く
Part2. 聴く喇叭道~Rapa to listen
Part3. 吹く喇叭道~RAPA to blow

 

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アダム・ラッパ(Adam Rapa)来日決定!!

2022-10-21

大久保管楽器店内にて、アダム・ラッパによるLOTUSトランペット&マウスピースのデモンストレーション演奏


マウスピース・ブランド「グレッグ・ブラック」を主宰

2024-11-30

あのジャルディネリ社創業者であるボブ・ジャルディネリの教えを受けてマウスピース製作の技術を身につけ、のち

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