トランペット記事 ラインホルト・フリードリヒ〜美しきハイトーンの秘密
  トランペット記事 ラインホルト・フリードリヒ〜美しきハイトーンの秘密
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ラインホルト・フリードリヒの魅力解剖

ラインホルト・フリードリヒ〜美しきハイトーンの秘密

ARTIST

ピッコロトランペットの「名手」……というより、ピッコロトランペットという楽器そのものの「開発者」(※注)としても知られる稀代の天才トランペット奏者モーリス・アンドレ(1933-2012)。しかし、その彼をしのぐのではないか……と取材班がひそかに考えているのが今回ご紹介するラインホルト・フリードリヒさん。1958年7月生まれの、生粋のドイツ人。彼のために開発されたC管のピッコロトランペットを軽やかに駆使して、あのクラウディオ・アバドのもとで素晴らしい『ブランデンブルク協奏曲第2番』を披露したその様子は、いまでもYouTubeで楽しめる。そんな彼をなぜ取材班は「モーリス・アンドレをしのぐ」と考えるのか。それは、彼がオーケストラプレイヤーとして押しも押されもせぬ実績を持ちながら、ピッコロのソリストとして、またある時には古楽器の、そしてさらにあるときにはショーファー(角笛の一種)の名手としても活躍するという八面六臂の大活躍を見せる「超人」だから、なのである!

(インタビュー・文:榎本孝一郎/取材協力:竹沢絵里子、亀山敏昭、村上純也、村上惠美子ほか「浜松トランペットサークル」のみなさん)

※注:正確に言えば20世紀初頭より通常の短管トランペットのさらに半分もしくはその前後の短い長さの主管をもつ楽器は存在したのだが、セルマーとともにそれを現在のスタイルとして完成させたのがモーリス・アンドレとされている

「ぼくはトランペット奏者だったんだ!」

今回、親しくお話をお聞きできたきっかけは、浜松のトランペット愛好家たちが続けてきた5月のフェスティバルのおかげ。これまでは「浜松トランペットフェスティバル」と銘打って、トランペット奏者のお祭り的なイベントとして展開されてきたが、10年目となる今年はトランペット以外の金管楽器にも対象を広げ、初めて「浜松ブラスフェスティバル」と銘打って開催されたのだ(この素晴らしいお祭りについては別項にて後述する)。
そのゲストとして招かれたのが、ラインホルトさん。浜松を拠点に活動する世界的なマウスピースビルダーの巨匠、亀山敏昭さんとも懇意にしており、その素晴らしい演奏を支えるマウスピースには、「亀」のマークが刻印されている。
ちろんラインホルトさんが楽器を手にした頃はそんなマークはなかったけれど、彼は「生まれながらにしてトランペット奏者となることを運命づけられていた」としか思えない、まさにトランペットの申し子なのだ。
トランペットを手にした初心者で、発音に苦労した経験をもつアマチュアは少なくない。そこに困難さを感じた人はなかなかプロになれていない……というのが、長年この世界の取材を続けてきた実感でもあるのだが、ラインホルトさんのお話を聞くにつけ、改めて「トランペットを吹けるというのは、ある種「天の恵み」といっていいのかもしれない……と思えてきた。
彼自身、友だちに『ブランデンブルク協奏曲第2番』のレコードを聴かされた瞬間、「ああ、ぼくは生まれながらにトランペット奏者だったんだ!」と自覚した……という話は有名である。トランペット奏者になりたい、とか、なれたらいいなと思った、とかいうのではなく、「だった」という過去形で確信した、それは「天命を知る」という瞬間だったのかもしれない。

ラインホルト「7歳の頃でした。うちに急いで帰ってそれを告げると、次の誕生日にトランペットがもらえたんです」

ラインホルトさんは、にこやかにそう語る。バズィングに苦労した、とか、高い音が出せなかったなどという苦労話は、出てこない。どのインタビューでも「初めて楽器を持ったころの苦労話を訊く」というのはお決まりなのだが、ラインホルトさんの場合には結局、そんなものはなかったのでした。
つまりは、西洋人にはありがちなことなのかもしれないが、クチ(アンブシュア)がトランペットにぴったりだったのだ。

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ラインホルト・フリードリヒ Reinhold Friedrich
1958年7月14日、ドイツ南部ワインガルテン生まれ。1983-99年までフランクフルト放送交響楽団(FRS)のソロトランペット奏者。在職中にミュンヘン国際コンクール優勝、さらにカールスルーエ音楽大学教授に就任。モダントランペットのみならず、故エドワード・タールに古楽の薫陶を受ける。奥様であるピアニストの竹沢絵里子さんとともに意欲的に新作開発にも取り組み、世界各国で精力的にソロ活動を展開。FRSではインバルとともにマーラーの交響曲全集など、また故クラウディオ・アッバードと共にルツェルン祝祭管弦楽団でブランデンブルク協奏曲など、数々の素晴らしい録音に参加。10枚組の全集には氏の詳しいインタビューも掲載。2024年11月に再来日予定。

 
 
Concert Information

NHK交響楽団 第2023回 定期公演Cプログラム

[日程]2024年11月15日(金)18:00開場/19:00開演
11月16日(土) 13:00開場/14:00開演
[会場]NHKホール(東京)
[出演]NHK交響楽団、アンドレス・オロスコ・エストラーダ(Cond)、ラインホルト・フリードリヒ(Tp)
[曲目]ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲、ヴァインベルク:トランペット協奏曲 変ロ長調 作品94、ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47
[料金]一般 S席¥10,000、A席¥8,500、B席¥6,500、C席¥5,400、D席¥4,300、E席¥2,200
ユースチケット(29歳以下)S席¥5,000、A席¥4,000、、B席¥3,100、C席¥2,550、D席¥1,500E席¥1,000(全席指定)
[問合せ]N響ガイド
TEL.0570-02-9502
WEB. https://nhkso.pia.jp

 

ユナイテッド・ユーロ ブラス・クインテット
浜離宮朝日ホール公演

[日程]2024年11月22日(金) 18:30開場/19:00開演
[会場]浜離宮朝日ホール(東京)
[出演]ラインホルト・フリードリヒ/イエルーン・ベルワルツ(Tp)、ラッセ・マウリッツェン(Hn)、イアン・バウスフィールド(Tb)、トーマス・ロイスランド(Tub)
[曲目]アントニオ・ヴィヴァルディ(ビントナー編曲):ラ・フォリア、グレン・ミラー(デドリック編曲):グレン・ミラーメドレー、ジョン・レノン&ポール・マッカートニー(フェルヘルスト編曲):ビートルズ・メドレー、他
[料金]一般¥6,000/U24(24歳以下)¥3,500円/小学生¥1,000(全席指定)
[問合せ]ミュージックパートナーズ
TEL.048-538-0304
E-Mail:info@music-partners.jp

 

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70’sアメリカン・ポップスを吹こう♪

音源連動:演奏by山下真一

カバー:松井秀太郎

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