現代のトランペット・ヒーロー、ロイ・ハーグローヴ本誌未掲載インタビュー!
現在のジャズ・シーンに於いて、注目度の高さや活動内容への期待の重みといった面で、間違いなく世界最高峰のトランぺッターの一人が、ロイ・ハーグローヴだ。3月に自身のクインテットを率いて来日した際に、詳しく話を聞いた。普段はどちらかと言うと“気難し屋”とも評される彼だが、この時は超ご機嫌で、こちらの質問にも気さくに答えてくれた。
「オレはテキサスの小さな田舎町に生まれたんだ。だけど色々とラッキーなことが続いていたんだよ。まず、オレの最初のトランペットの先生だったのが、ディーン・ヒルという人だったんだけど、このヒル先生がオレにジャズを教えてくれたんだ。今でも健在で、先日はネットで先生と繋がったんだよ(笑)。ジャズを教えてくれて、当然ながら一緒にソロの取り方も教えてくれた。インプロヴァイジングだね。その際に学んだことは大きかったな。オレに取っての、最初のジャズ・ヒーローだよ。そしてメイナード・ファーガソンという人も彼から教わった。ファーガソンの『The Way We Were(追憶)』を聴きながら、そのソロをプレイしたな。オレがハイ・ノートを出すようになったきっかけも、ファーガソンだったということなんだろうなぁ。
そして、入った高校での色々もラッキーだったんだ。まず、高校では二人の音楽の先生がいた。一人はクラシックの先生で、ジャズも知っていた。もう一人は最初っからジャズの先生で、その先生も良かった。でもね、一番良かったのは、その高校の校長先生だったんだよ。元々が音楽の先生でね。その校長先生がオレを校長室に呼んでくれて、そこでジャズのレコードを聴かせてくれたんだ。その時に聴いたのがクリフォード・ブラウンでね。もう、ブッ飛んだ(笑)。ナンなんだ、これは?という感じだったね。そして、今度はフレディ・ハバード。また、ブッ飛んだ(笑)。そんな偉大なアーティストをオレに教えてくれた高校の校長先生なんて、最高だろ?(笑)」
——あなたはバークリー音楽大学で2年間学んでいますが、どんなところでしたか?
「あそこは、世界最高の施設だ。音楽に専念できる最高の設備が揃っている。スタジオなどの設備も素晴らしいんだが、何よりもライブラリーが素晴らしいんだよ。何でも揃っているから、どんなものでも聴きたいものが聴けるしね。本当に、バークリーでの日々は、実りある勉強の日々だったな」
——そしてニューヨークに出たわけですが。
「あぁ、最初に言ったように、オレは田舎の小さな街で生まれ育った。そんなオレが、世界一の大都会で生活するなんて、考えたこともなかったんだけどな。でも、今の生活は本当に楽しいし、そもそも楽しんでいるよ。ジャム・セッションにも出掛けるしね。必ず、午前4時までジャムってるな。今回、オレと一緒に来ているピアニストは日本人だろ? 海野雅威というんだが、彼に会ったのもそうしたクラブでのジャム・セッションで、だったんだ。彼はハンク・ジョーンズに習った男で、そうした雰囲気が実に良く出てるだろ? 素晴らしいピアニストだよ」
——そしてあなたは、実に幅広いアーティストと共演してきていますよね?
「あぁ、確かに幅広いよね。それには理由があるんだ。誰もが、オレが音楽を本当に大好きだってことを知っていてくれてるからなんだよ。それも、ありとあらゆるジャンルの音楽を、ね。ところで、オレがダイアナ・ロスのバック・バンドで吹いていたって知ってるかい? オレが23歳のころだった。アレは勉強になったな(笑)」
——では、最後にあなたの使用楽器を教えてください。長年、バックを使っていましたよね? いまは変えたと聞きましたが。
「今は、スイスのメーカーである『インダービネン(Inderbinen)』というメーカーのトランペットを使っている。確かに、ずっとバックのトランペットを使ってきたけど、ちょっと変えてみたくなってね。フリューゲルホルンも『インダービネン』の“ウッド500”というモデルだ。実はフリューゲル用のマウスピースは、TOKUからもらったものなんだよ(笑)。トランペッター同士って、結構仲間意識が強いからね。そんなやりとりもしているんだ」
このように色々と話してくれたロイ・ハーグローヴ。珍しく、という感じで気さくに話してくれた。これは、もしかして貴重なインタビューになるのかも知れない……。(インタビュー・文:櫻井隆章)
THE TRUMPET01 ライブレポート掲載 3/3/2017@bluenote東京