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11|オペラやコンサート、練習を見て学ぶこと

現地でみたことを振り返って

What's えびちゃん留学記 ...

自分が感じる「違い」はなんなのだろう───
演奏の違いから様々なことを探求していった留学時代と海外生活時代を振り返りながら、現地の情報もお届けします。ファゴット奏者で、指揮、講演、コンサートの企画、オーガナイズ、コンサルティング、アドバイザーなど様々な活動をする基盤となった海外留学とはどんなものだったのか。思い出すままに書いていきます。

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蛯澤亮

蛯澤 亮
Ryo Ebisawa


茨城県笠間市出身。笠間小学校にてコルネットを始め、笠間中学校でトランペット、下妻第一高等学校でファゴットを始める。国立音楽大学卒業。ウィーン音楽院私立大学修士課程を最優秀の成績で修了。バーゼル音楽大学研究科修了。 ザルツブルク音楽祭、アッターガウ音楽祭、草津音楽祭などに出演。元・ニューヨーク・シェンユン交響楽団首席奏者。茨城芸術文化振興財団登録アーティスト。ファゴットを馬込勇、ミヒャエル・ヴェルバ、セルジオ・アッツォリーニの各氏に師事。 「おしゃふぁご 〜蛯澤亮のおしゃべりファゴット」を各地で開催、クラシック音楽バー銀座アンクにて毎月第四金曜に定期演奏、池袋オペラハウスにて主宰公演「ハルモニームジーク 」を毎月第二水曜日に開催するなど演奏だけに留まらず、様々なコンサートを企画、構成している。

 

 

 

 

オペラやコンサート、練習を見て学ぶこと

前回、オペラでオーケストラを見て様々なことを学びを得たことを書いた。ウィーン留学で良いところはウィーンフィルだけでなく、様々なオケや演奏家が聴けること。オペラにもたくさんのスター歌手が来るし、ウィーンスタイル以外にも様々なスタイルの演奏を聴くことができる。さすが音楽の都と言われる街だ。

オペラではオケの色々な模様を見ることができたが、やはり歌手の表現とそれにどう合わせていくのかも大事なポイントだ。歌の表現力からウィーンフィルのスタイルが作られていることはよく評論されるが、オペラを聴いているとそれがよくわかってくる。フレーズの作り方、音の作り方、どれも歌とマッチさせるためなのだと実感した。

歌手ではプラシド・ドミンゴ、トーマス・ハンプソン、ペーター・ザイフェルト、ヨハン・ボータ、エリーナ・ガランチャ、アンナ・ネトレプコなど世界的な歌手の様々な役をオペラ座で聴くことができた。その中でも印象に残っているのはアンジェラ・ゲオルギュー。彼女が歌ったプッチーニ「ラ・ボエーム」のミミは素晴らしかった。死ぬ間際にベットに横たわりながら静かに歌うのだが、声は小さいのにまるで目の前で声が鳴っているように感じた。そして細部まではっきり表現が伝わってきた。4階席の奥は客席で最も遠いはずなのにだ。一流の出す音は目の前で聴こえるというが、小さい声でもまさしく目の前に感じた。

オペラだけでなくコンサートもたくさん聴いた。当時はウィーンフィルの練習は無料で聴けたので、コンサートだけでなく練習に足を運んだ。大学の先生など顔見知りもいるので休憩中には挨拶して、そこから知り合いができたりした。日本と違うのは会話量だ。練習中、指揮者以外にもオケの中から様々な意見が出る。前回はヒンクがオケに指示をよく出していたことを書いたが、コンマスはもちろん、弦それぞれのトップ、管楽器からも意見があったり、オケの中で打ち合わせすることも多い。それぞれが主体性を持っている音楽家の集まりだからこそ、オケのエネルギーもあるのだと感じた。中には喧嘩して言い合いになっている団員もいる。でもだからと言って本番は一緒にやるわけで、どこかで折り合いをつけるのだろう。

ウィーン以外のオケもたくさん聴いた。そこで感じたのは本拠地の違いで音の作り方が違うということだ。ケルン放送響やシカゴ響は響かないホールを本拠地とし、音が大きい。ウィーンの大ホールは二つとも響きが豊かだ。この二つのオケはウィーンで聴くには音が大きすぎるし、何より音がキツかった。特にケルン放送響の音は硬くきつい音がガンガン鳴るので、聴いていられなかった。しかし、サンクトペテルブルクフィルは音がとても大きいが、楽友協会ホールでもコンチェルトハウスでも音がきついとは思わなかった。やはり響く環境で音を出しているかどうかは音作りに重要な要素なのだ。 ベルリンフィルやコンセルトヘボウなど、本拠地が響くホールは音作りの違いはあれど綺麗に響いていた。留学する場所によってかなりオケのイメージが変わることがわかった。パリやケルンに留学している人は響かないホールで演奏を聴くから、ウィーンフィルは音が小さいと言っていた。生音は大きくなく、コンパクトに音を鳴らすので響かないホールではまったく違った印象になるのだろう。日本は立派なホールがたくさんあるが、練習する場所は響かないところが多い。そうすると響かない音作りになってしまうのだろう。ウィーンは何てことない練習場でも、響くところが多い。逆にパリはホールだけでなく、練習場もレッスン室も響く場所が珍しいのだそうだ。

だからおしゃれに軽く鳴らすというパリスタイルのパブリックイメージとは違って実際は音も大きく、どかーんと演奏する人が多い。ウィーンは柔らかい音というイメージだが、響きのある場所でははっきりした発音が大事だ。イメージよりもかなりはっきり発音する。グローバル社会になって個性がなくなってきているというが、こういった演奏場所からくるスタイルの違いはまだまだなくならないのだろう。

 

 


 

次回予告 :comming soon

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