吹奏楽で使用されている金管楽器、木管楽器、打楽器のことや、 練習方法、演奏技術、さらには上下関係まで、 吹奏楽に関するみなさんのお悩みを解決する「吹奏楽 お悩み相談室」。 Wind-i miniでは、みなさんのお悩みを随時募集中!
丸山 : ホルンが木管楽器と一番音色が合っていますし、木管だけの音色感にバラエティを加えられます。さらに、ダイナミクスレンジを広げることができます。木管4本ではダイナミクスがまとまり過ぎて、室内楽的な色合いしか出せないのですが、ホルンが入ることで幅が広がり、大きなホールでも演奏できるようになります。ホルンが加わることで作曲家に新しい音楽を作り出そうと思わせる魅力を与えたのではないでしょうか。
丸山 : 木管五重奏の場合は他の演奏形態で吹く時よりも、より繊細さが求められます。人数が少なくなればなるほど演奏者も集中し、技術の高さを見せなければいけません。どの楽器とどのように合わせていくかということに一番気をつけています。木管五重奏の場合、フルートに寄り添うときはフルートに同化し、クラリネットと一緒の時はクラリネットの音色に合うようにしなければいけません。組んだ相手によって自分をどんどん変えていく楽しみを高めていかなければいけないということですね。もちろんオーケストラでも吹奏楽でもそうです。
丸山 : もちろんです。曲によってはホルンが曲の途中でポイントになることもあります。ホルンでなければこの場面は成り立たないという大切なフレーズがあるんです。名作曲家というのはホルンが使われる必然性を感じて書いてくれている。それが吹いていてわかるのでいつも感謝しています。
丸山 : 昔のナチュラルホルンは、管を取り替えて調を変えていました。現在のホルンはナチュラルホルンの集合体で、瞬時にその中からその音にふさわしい管を選んで組み合わせていると言えるのです。その点からすると主流はやはりF/Bbのダブルホルンということになります。
ホルンの基本はF管にあります。楽譜がin Fで書かれていますし、Fという調はあらゆる調の中心にあります。そのF管を大切にすることが重要です。次にF管だけでは高い音をクリアしにくい部分があるので、音を確実に当てるために少し管が短いBb管が必要になってくるのでダブルホルンを使うわけです。そういった意味では中高生でもF管シングルの楽器で吹奏楽の曲をこなすのは多少無理がありますね。
もっとプロ仕様になるとトリプルホルンもありますが、バッハや現代曲などのレパートリーで必要になってきます。トリプルもこれからどんどん使われる楽器だと思いますね。しかし中高生にはそこまでの必要はないので、ダブルホルンをおすすめしています。
指導する立場からはF管で基本練習することを推奨しています。なぜならホルンのイメージはF管ですから。F管は管が長いのでBb管より演奏は難しいのですが、音色的にも技術的にもF管で口をコントロールしたり、基礎力を高めた上でBb管に移るとBb管が楽になります。基本的にはF管でほとんどカバーできますが、実際は80〜90%はBb管で演奏しています。どこで切り替えるか、実は決まりはなくて個人のセンスなんです。音域が4オクターブもある曲はホルンだけですがそれをカバーするにはもちろんBb管F管の両方を使います。
丸山 : もちろん違います。F管は管が長い分、倍音が多く含まれていて響きもあります。でも今は楽器自体が進歩していますから、音色に差が出ないように作られています。音色にムラがなく音が出ることが良い楽器の条件ですからね。
丸山 : 多いですね。世界にはたくさんのメーカー、モデルがあるのになぜ自分に合ったホルンを選ばないのでしょう。それを指導者が伝えていかなければいけません。
イメージや噂だけで選ばず、まずは試してほしいですね。自分の着る物を選ぶようにこれは本当に自分に合っているのか、楽器店で吹いて自分にとって使いやすいものを先入観なしに直感で選んでください。
楽器は文化ですから、楽器製作者と音楽家が一体となって楽器を育てたり、楽器の性能を上げることが自分の音楽にもつながってきます。それが未来を作る土台なんです。これからの将来を担う子どもたちがどういう目を持っているか、どんな音楽に接していくか、それは楽器の選び方からも始まります。それを指導していくのは私たち演奏家、指導者、メディアの大切な役割だと思いますね。
Profile 丸山 勉 Tsutomu Maruyama
1985年、武蔵野音楽大学在学中に1・3番ホルン奏者として日本フィルハーモニー交響楽団入団。1986年、武蔵野音楽大学卒業。和方寛茂、伊藤泰世、D.クレヴェンジャーの各氏に師事。1990年、読売日本交響楽団入団。首席ホルン奏者を務める。 1991年、日本管打楽器コンクールのホルン部門で第1位に入賞。東京交響楽団とモーツアルトのホルン協奏曲を協演。1993年、ジュネーブに留学、B.シュナイダー氏に師事。2000年、読売日本交響楽団を退団。2001年、日本フィルハーモニー交響楽団と日本初の客演首席奏者として契約。現在、ソリスト・室内楽奏者などのクラシックの世界のみならず、吹奏楽やホルンによるジャズカルテットなど、幅広い分野で活躍している。「紀尾井シンフォニエッタ」「つの笛集団」メンバー。