2017年3月20日(月・祝)に仙台市宮城野区にある仙台市宮城野区文化センター・パトナホールで「第2回吹奏楽みやぎ小編成バンド楽曲研修会」が開催され、当日の様子を吹奏楽みやぎ小編成バンド楽曲研修会事務局・佐藤学さん(仙台城南高等学校吹奏楽部顧問)にレポートしていただきました。
3月20日(月・祝)第2回吹奏楽みやぎ小編成バンド楽曲研修会を仙台市宮城野区にある仙台市宮城野区文化センター・パトナホールで開催しました。
東北の春を感じられる暖かな日でした。指導者と参加者を含めおよそ160名の来場者でした。仙台とその周辺地区からの参加者がほとんどでしたが、遠くは岩手県北の洋野町や山形県北西の遊佐町から参加した指導者の方もいました。研修会としてはまだまだ規模が小さいのですが、様々の地域から意識の高い指導者の皆様にご来場していただき、充実した研修会となりました。
片岡寛晶先生
前回に引き続き作曲家であり打楽器奏者でもある片岡寛晶先生をコーディネーターにお迎えし、演奏や編成についてのレクチャーを交えながら楽曲を演奏するというコンサート形式の研修会を行いました。【小編成基礎合奏クリニック】、【フレキシブル楽譜によるコンサートとレクチャー】、【小編成楽曲紹介コンサート】の3つの講座を用意しました。
特に【小編成基礎合奏クリニック】と【フレキシブル楽譜によるコンサートとレクチャー】では、実験的な演奏を通しながら、練習方法・演奏・編成・演出などについての提案をしていく内容でした。
『新入生部員を育てる方法』〜マルチグレード楽譜を用いて〜
5月発売予定の「ショート・ストーリーズ」と「I, My, Me, Mine!!」を片岡先生によるレクチャーを交えて演奏しました。このマルチグレード楽譜は、パート内で上級生用(グレード2)と下級生用(グレード1)に難易度を明確に区分けし、基礎練習からコンサート、コンテストまでを想定して、作曲された新しい曲集です。
演奏に際し、上級生役20数名とし、下級生役の10数名の出演者には2週間前から自分の専門楽器以外の楽器を練習し始めてもらい仮想下級生を演じてもらいました。下級生パートは上級生パートのオクターブ下であったりロングトーン中心で、上級生パートを意識しながら練習を進めることができる。曲構成として音の数が少ないが、音のオクターブ配置が工夫されているので、少人数でも倍音が響きやすく音の厚みを出しやすい曲になっていると片岡先生からレクチャーがありました。
下級生パートのみでも曲が成立するようになっているので、下級生と上級生パートを交互に演奏し、聴き比べました。上級生が下級生に適切なアドバイスしたり、下級生が上級生の奏法を意識して全体で合奏することで、新入部員を上級生と一緒に練習しながら育てることを提案しました。このマルチグレードを企画したブレーン社の鹿野さんから直接、お話を頂くこともでき、とても有意義になりました。
『生徒1人、先生1人。2人からできるコラール練習 パート2』
〜私,ピアノ専攻です! 吹奏楽はわかりません!! という指導者の方へ〜
昨年、1名の生徒が四声部のコラールのいずれかの声部を演奏し、それにあわせて教師役の生徒がコンデンス・スコアを元に演奏している声部除いた三声部をハーモニー・ディレクターで伴奏するという練習方法を発表しました。昨年のおさらいをディズニーの「いつか王子様が」で行った後、もう一歩進んだ練習の提案として、「赤とんぼ」をピアノ専攻の先生にピアノで自由奔放に弾いていただき、それにコラール演奏をあわせるということを行いました。コラール曲集を用いてハーモニー練習だけでなく音楽表現の練習も行うことができます。
学校式典や演奏会向けのフレキシブル編成の楽曲を2曲演奏しました。
「ラデッキー行進曲」は、Tp., Bb Cl., A.Sax., Hr., Tb., Tub., S.D., Glock.&Timp. の8名で演奏しました。
「海の声」では、シードラムの波音に導かれ、クラリネット五重奏から演奏がスタート。場面毎に演奏者が入場し、人数を増やして演奏しました。アンサンブル的な響きから吹奏楽的な響きへの移り変わりの違いを聴くことができました。最後には、沖縄民族楽器の三線も登場するという楽しい演出付きでした。
今回のフレキシブル楽譜を用いた講座を実施するにあたり、元の楽譜をどこまで変更して構わないかという点を出版社と交渉を重ねてきました。その結果、次の点に留意して演奏することにしました。
■ 音符を演奏しないことができる
■ 音符のオクターブを上げ下げできる
■ 音やリズムを変えない
■ スコアに記載されていない楽器でも通常の吹奏楽で使用される楽器は使用できる。ただし、音程のない打楽器は使用しない
※合同演奏の「マカリッシュ・ソフィア」は、作曲者自身の手による実験的試みとしてスコアに記載されていない打楽器を加えています。
『1冊の楽譜で何度も美味しい。それがフレキシブル楽譜』
フレキシブル四重奏の「フォルモサの風」を拡大して吹奏楽小編成にすることを実演しました。
まず冒頭部分を
(a) Tp.×2, A.Sax., Tub.の四重奏
(b) Bb Cl.×3, Bs.Cl.の四重奏、Fl., Bb Cl., A.Sax., B.Sax. の四重奏
(c) 管楽器のみのアンサンブル
(d) 管楽器とSt.Bs.とTimp.
(e) 管楽器とSt.Bs.とTimp.と鍵盤打楽器の5種類
の編成で演奏してみる実験を行ないました。
(c) では、Tp. や Cl. のメロディーの声部にオクターブ上で Fl.が演奏すると、響きが華やかになる。
(d) では、Timp.とSt.Bs.を加えると厚みが増え、室内楽的な響きになる。
(e) では、鍵盤打楽器を増やすことで、リズムが明確になり、より民族色豊かな響きになる。
また、美しい中間部では、メロディーに対する内声のオクターブ配置の実験を行い、音の色彩感の変化を聴き比べました。