東京佼成ウインドオーケストラ 第139回定期演奏会 ©Atsushi Yokota
2018年6月23日(土)東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアル
重苦しい梅雨空を忘れさせるような開放的な空間を持つ東京オペラシティ・コンサートホールで、東京佼成ウインドオーケストラの第139回定期演奏会が開催された。
今回はオール・アメリカ・プログラムで構成され、タクトを振るのはマクデブルク劇場音楽総監督のキンボー・イシイ。幼少期を日本で過ごし、アメリカでヴァイオリンと指揮を学んだというイシイ氏は、今回のプログラムにとって、これ以上ない絶好の組み合わせだ。
キンボー・イシイ氏 ©Atsushi Yokota
1曲目は佼成ウインドの委嘱作品で、これまでにも度々再演されているグランサムの『舞楽』。この作品は雅楽風の旋律、日本風のリズムに西洋のハーモニーと音色が組み合わされることで、単なる和洋折衷ではなく芸術として高い次元にまで昇華され、揺るぎない評価を得ている。今回の演奏も高い集中力で鮮烈な印象を残すものだった。
Wind-iで注目したリーバーマンの『ピッコロ協奏曲 作品50』は今回が編曲初演となり、新しいレパートリーの誕生に期待が高まる。ピッコロというと快活・軽快なイメージが強いが、この曲は叙情的なソロで始まり、ファンタジー映画を思わせる第1楽章、沈鬱な表情を見せる第2楽章、モーツァルトやベートーヴェンの作品の断片が顔をのぞかせつつ速いテンポで駆け抜ける第3楽章から成り、古典的な形式に基づきながら様々な要素を持ち合わせている。佼成ウインドの団員であり、今回のソリストを務める丸田悠太氏は、この楽曲の要求する高い技術力と表現力に見事に応え、この楽曲の魅力を存分に引き出していた。佼成ウインドの伴奏も、技術的な困難さを感じさせない高度なアンサンブルと色彩感でソリストを支えていた。
丸田悠太氏 ©Atsushi Yokota
後半は生誕100周年となるバーンスタインのミュージカル作品で固められ、3つの曲で構成される『オン・ザ・タウン』は各曲のキャラクターに対して佼成ウインドのメンバーの個性を的確に引き出した絶妙な演奏。最後を飾る『シンフォニック・ダンス』では、時にロマンチックに、時にセクシーな表現を見せ、プロでもサウンドが荒くなりがちな「マンボ」でも美しい響きを損なわず、それでいて熱い盛り上がりも忘れない。各シーンのつながりも滑らかで、聴衆が音楽に引き込まれていくような快演だった。
2017年秋から続いた定期演奏会シーズンは本公演で締めくくりとなり、ホワイエではサポーターズクラブ・定期会員へ向けた感謝イベントが開催された。次回、第140回定期演奏会は2018年10月に開催予定で、次のシーズンの開幕が早くも待ち遠しい。