7/4(土)文京シビックホール 大ホール
[出演]原田慶太楼(Cond)、シエナ・ウインド・オーケストラ
撮影協力:新日本空調株式会社 ビジュアルソリューション事業部
Photo:K.Miura
本来、シエナ・ウインド・オーケストラ(以下 シエナ)の結成30周年、第50回定期演奏会の予定だった7月4日(土)。演奏会は8月に延期となったが、この日、日本の音楽界にとって画期的な試演会が開催れた。
シエナとシエナのホームグラウンドである文京シビックホールの共催で行なわれた試演会は、新日本空調株式会社 ビジュアルソリューション事業部の協力を得て、吹奏楽のリハーサル及び演奏時の大きな飛沫を可視化したり、浮遊粒子量を、数値で現すというもの。
2020年3月以降、新型コロナウイルスの影響ですべてのジャンルでコンサートは中止、延期を余儀なくされ、音楽家にとっては生活の糧を、聴衆にとってはライブで音を楽しむ時間を奪われ、厳しい期間を過ごすことになった。
5月25日に全国で一斉に緊急事態宣言は解除されたものの、政府のガイドラインによれば、コンサートは観客の収容人数を減らした上での開催を余儀なくされている。
特に吹奏楽においては、打楽器などいくつかの楽器以外は飛沫の発生が心配される楽器でもあり、その不安は大きいと一般的には言われているジャンルである。
試演会は①広めの間隔(張り出し舞台を使用)、②狭めの間隔(通常のセッティングに近い)という2パターンでそれぞれ同じ曲を3曲演奏。間にリハーサルで想定される指揮者が発声時の大きな飛沫の可視化と数種の楽器近くの浮遊粒子量の飛沫値計測も行なわれた。休憩時にセッティングを変更し、後半は前半と同じ曲を順を変更し演奏。
可視化するために用意されたのは、微粒子可視化専用レーザ光源「パラレルアイH」、微粒子可視化専用高感度カメラ「アイスコープ」などの数々の最先端機材。
演奏はまず①広めのセッティングで『星条旗よ永遠なれ』に始まり、『スター・ウォーズ メイン・タイトル』『エルザの大聖堂への行列』を演奏し、大きな飛沫を可視化していく。
詳細は、シエナのホームページ等で公開される予定なので、そちらを参照していただきたい。
合奏では①②の間隔ともに顕著な粒子数の増加は見られなかった。 またオーボエ、ソプラノサックス、フルート、チューバ、トランペット、ユーフォニアム、ピッコロの演奏中の譜面台の近くを個別に計測し、こちらも顕著な粒子の増加は見られなかった。後半の最後『星条旗よ永遠なれ』ではソリストの位置でピッコロが演奏したが、こちらも同様の結果であった。
7月6日(月)にはクリーンルームでホルン、ファゴット、トロンボーン、クラリネットの実験も行なわれた。マウスピースのみでの試奏、また金管楽器の水抜き時に飛沫が発生したが、演奏時は楽器によって多少の違いはあるものの、大きな飛沫が多量に発生することはないという結果になった。
今回の試演会、実験から言えることは、しかるべき対策を講じれば吹奏楽のコンサートを行なうことは可能であるということを示していると考えられる。もちろん、感染のリスクはゼロではないので、演奏者、聴衆ともに予防対策は忘れてはいけない。今回シエナ、文京シビックホールが行なった試演会は、日本や世界の音楽界に一石を投じるものとなるだろう。