奏楽とブラスバンド(金管バンド)のコンサートで取り上げられる機会が最も多い作曲家であろうフィリップ・スパーク。
3月に行なわれたシエナ・ウインド・オーケストラと尚美ミュージックカレッジ専門学校の選抜学生による尚美ウインドオーケストラのコラボレーションコンサートのために来日する彼にインタビューができないかと打診したのは2月。来日中は両団体のリハーサルもあり、かなりハードスケジュールだったが、インタビューの快諾をいただくことができた。
ここでほんの少しだけ本誌に掲載したインタビュー内容をお届けしよう。
確かに吹奏楽やブラスバンドという分野では、多くの作曲家が作品を作っている。特に日本は吹奏楽大国といってもいいぐらい吹奏楽が盛んな国だ。ほとんどの中学、高校には吹奏楽部があるし、毎年行なわれる全日本吹奏楽コンクールを始めとして、様々な演奏活動が盛んに行なわれている。ブラスバンドにおいては吹奏楽ほどではないけれども、プロ奏者たちによるブラスバンドが国内にあり積極的に活動を行なっている。金管だけによるアンサンブルは吹奏楽とは違う一体感ある重厚なハーモニーが特徴で、この魅力にはまったファンも多い。 スパーク氏はその両分野で作品を書いているが、元々はブラスバンドの曲だったものを吹奏楽にアレンジし直すことは以前よりも減っているという。
今回のシエナと尚美のコラボレーションコンサートでは、すべて指揮を行なったスパーク氏。指揮者としての活動も楽しんでいるのかと聴いてみると─
指揮者や演奏家と同じ目線に立ってくれるのだと実感できる言葉である。その思いが作品にこもっているからこそ、プロから愛好家まで幅広く彼の作品が愛され、多くのコンサートで取り上げられている理由だろう。 Wind-I vol.5にはもっと多くのインタビューを掲載しているので、是非読んでいただきたい。
Philip Sparke│ フィリップ・スパーク
フィリップ・スパークは、1951年イギリスのロンドンに生まれた。王立音楽大学(RCM)でピアノ、トランペット、作曲を学び、学生によるウィンドオーケストラへの参加やブラスバンド活動を通じて、在学中より、吹奏楽およびブラスバンド作品を書き始めた。この頃に出版された最初の作品が、ブラスバンドでは『コンサート・プレリュード』、吹奏楽では『ガウディウム』である。その後、ニュージーランドで開催されたセンテニアル・ブラスバンド選手権の委嘱によって作曲した『長く白い雲のたなびく国』で、一躍世界へ知られるようになる。BBC放送の委嘱により作曲した『スカイライダー(1985)』『オリエント急行(1986)』『スリップストリーム(1987)』の3作品で<ヨーロッパ放送ユニオン(EBU)新作バンド曲コンペティション>3年連続1位に輝いて以来、英国のみならずニュージーランド、スイス、オランダ、オーストラリア等で開催されるブラスバンド選手権決勝のための作品を発表し続け、ブラスバンドの大会が開催されるところでその名を見ないことはない。吹奏楽作品では、東京佼成ウインドオーケストラに委嘱された『セレブレーション』のレコーディングによって世界へ知られるようになり、アメリカ空軍ワシントンD.C.バンドの委嘱による『ダンス・ムーブメント』では1997年、名誉ある<サドラー国際作曲賞>を受賞した。2005年には、大阪市音楽団第90回定期演奏会のために作られた『宇宙の音楽/吹奏楽版』により<NBAレヴェリ賞>を受賞。さらに2011年、それまでの偉大な業績が讃えられ、オランダの作曲者権利保護団体『BUMA』よりインターナショナル・ブラス・アワードと、また本国イギリスで最も権威あるブラスバンド・メディア『4barsrest.com』より特別賞を贈られている。2000年からは自身の出版社『アングロ・ミュージック(Anglo Music Press)』を立ち上げ、作曲活動に専念。現在、ウィンド・ミュージック界の第一人者として世界的な活躍を続けている。
©黒沢ひろみ 2015