代官山音楽院、管楽器リペア科で行なわれる実際の授業を追いながら、代官山音楽院主任講師の金澤恭悦先がリペアの基本、そして技術が現場にどのように活かされているかを解説してもらうこのコーナー。今回は「演奏授業」についてです。
4月からリペアについての一連の授業の内容を紹介してきましたが、実は学生たちはその間にも演奏のレッスンを受けてきました。
「演奏科じゃないのにどうして演奏の授業があるの?」と思われるかも知れませんね。
サクソフォーンの授業では「いかに精度の高いタンポ調整を行なうか」や「タンポ調整の不具合をどうやって発見するか」という課題に取り組んできました。その課題をクリアするために様々な道具を使用してチェックと修正を重ねます。しかし場所によってはチェックが難しいところや、眼では発見しづらい部分もあります。
ですから、完璧を目指して調整を重ねた楽器でも最後は人間が音を出して確認することが必要なのです。
学生たちの経験楽器は様々です。サクソフォーンの演奏レッスンでは「サクソフォーン経験者のグループ」「サクソフォーン以外の木管楽器の経験者のグループ」「金管楽器の経験者などのグループ」に分かれて基礎からコツコツと1年間練習するのです。演奏家のように吹けるわけではありませんが、「ここが鳴らない原因はここかもしれない」と予想ができるようにはなるのです。
唄口やリード、ストラップなどの他、グリス、オイルなどの商品についても知る機会になります。
また、楽器を見ただけでは状態の判断ができないのは何も木管楽器ばかりではありません。金管楽器などでもピストンやロータリーの入れ間違いがあり得ます。小さな部品が外れてしまっている楽器もあります。
きちんと演奏できる状態になって初めて楽器といえるのです。そのためにリペア技術だけでなく演奏のレッスンが授業に組まれています。1年生はフルートとサクソフォーン、2年生はクラリネットと金管楽器(トランペット・トロンボーン・ホルン)です。そしてそれらの楽器の演奏が年度末に試験として課されます。
学生たちは授業で学んだ知識に実践で得た情報を重ねて自分の技術力アップに繋げていきます。多くの経験が学校でできるように、島村楽器が行なっている「楽器リサイクルプロジェクト」にも協力しています。
荒波にもまれて大きくなる大間のマグロのように、社会に出て様々な経験を積み、大きく成長してほしいものです。
Profile|金澤恭悦
69年日本管楽器(株)入社。日本楽器製造(株)(現ヤマハ)と合併後、本社にてクラリネットの開発に携わる。77年に開設された「ヤマハアトリエ東京」の初代スタッフとして木管楽器の専門家対応を22年間担当。特にサックス奏者ソニー・ロリンズ氏からの信頼は厚い。更に北米の修理技術を視察、アジアにおいても技術指導を行なうなど海外でも活躍。現在は代官山音楽院主任講師、リペア工房atelier kanazawa主宰。
来る4月3日(日)に、金澤恭悦先生が教えるサックスメンテナンスセミナー〜テクニック編〜が開催予定です! 「リペアマンへの道!」を読んでいて「もっと知りたい!」「この話、詳しく聞きたい!」など、金澤先生に直接質問してみませんか?
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