Wind-i miniをお読みの管楽器、弦楽器奏者のみなさん! 打楽器に対してどんなイメージを持っていますか? 「重いけど運ばなくてはいけないモノ」「メンテナンスはけっこう楽そう」 「奏法が違うからいまいちよくわからない」……?
そんなこと言っていると、ほら、パーカッションパートが悲しそうな顔を……この特集で、「パーカッション食わず嫌い」を、克服しましょう! もちろんパーカッションパートのみなさんに役立つ情報も盛りだくさんです。パーカッションのレンタルやメンテナンスに定評のある、高円寺「プロフェッショナル・パーカッション」の山田諭さんに、まずはパーカッションのメンテナンスからお話しを伺いました。
練習後はこまめに拭いて次の練習に備えましょう。手でミュートをするとヘッドに皮脂がついてしまうので、しっかり拭きましょう。また、リングの部分も運搬時などに、指紋がつきがちです。ついたらすぐに拭いてあげると、きれいな状態が長持ちします。管楽器の人が吹き終わった後必ず楽器を拭くのと同じことです。きれいな楽器で練習するとモチベーションが上がりますよね。実は機械的なところは見た目と深い関連がありますし、実際ステージに出した時、奥にあっても、客席から見ると汚れがよくわかります。拭いたらきれいになるのに、といつも思うんです(笑)。
あと、打楽器で放置されやすいのが、打面のリムに溜まる埃です。埃はノイズの原因になりますし、ティンパニの場合はペダルが動かなくなったり、ギーギー音がする原因にもなります。埃が溜まってきたなと思ったら、ヘッドを外して乾いた布を使ってリムの埃をきれいにふき取りましょう。頑固な汚れは水拭きをします。しっかり拭くのがメンテナンスの基本です。
弊社では自転車に使うようなスプレーグリスや、ジッポオイルを使用しています。ジッポオイルは揮発性が高いので、すぐに皮脂などの汚れが落ちます。スプレーグリスは自転車のチェーンなどに塗るようなもので大丈夫です。固着してしまった油やグリスを取るときはパーツクリーナーがいいです。カー用品店などでよく売っています。
ティンパニなどの可動部にはグリスが必要な箇所もあります。ジッポオイルで汚れをとった後は、必要な箇所にグリスを必ず塗りましょう。
楽器を磨くにはセーム皮を使っています。何度も洗って使えますから。使い捨てのものでよければウエス※も使うことができます。1kg単位で売られていますから、それを一袋買うとかなり長持ちしますし、価格もお手ごろです。
もちろん楽器メーカーからもメンテナンス用品はたくさん発売されています。どれを買えばいいかわからないような場合は、メーカーから出ているものを使うのがいいでしょう。
※ウエスとは……古着などを裁断して再生した布。機械などを清掃するのに使用される。価格は1kgあたり500円程度。
1年に1回は特に気になるところがなくてもメンテナンスに出しましょう。そうすることで、後々かかる費用が安くなりますし、楽器の寿命もかなり延びると思います。そこで問題があれば修理をしますし、何もなければ安心して使えますから。
ティンパニの場合、練習後に必ずヘッドをゆるめている人がいます。長期保存する場合はペダルを半分踏み込んでおいたほうが良いです。運搬する時などはペダルを踏み込んでヘッドを張っておいたほうがヘッドはずれません。せっかく練習会場でチューニングをあわせても、移動している間にヘッドがずれてしまい、本番の会場についたらチューニングがばらばら、ということがありえます。運搬するときは必ず踏み込んで釜を固定した状態にしましょう。
ティンパニのチューニングですが、使う音だけでチューニングをするのはやめましょう。ティンパニには最低音が設定されています。最低音のピッチを合わせないと、ペダルが充分に稼働してくれません。途中で止まらなかったり、かかとが落ちてしまったりします。チューニングの方法はいくつかありますが、どのやり方でも大切なのはヘッドを均等に張るということですね。どういう順番でボルトを締めたとしても最終的には均等に張るようにしましょう。
しかしドラムセットでは話が少し違ってきます。均等に張ったものからあえて少しバランスを崩してあげることでジャンルに合わせた独特なセットの音を作っていきます。
ドラムセットは伝統的にまったく同じセッティングにしている学校などもあるようですが、自分が叩きやすいようにヘッド面の角度をセッティングするべきです。ドラムセットほど自分に合った状態にできる楽器はないですから。高さから角度まですべて変えられるので、ぜひ調整してみましょう。
スネアでは、チューニングが高すぎる状態の楽器を度々見かけます。スネアは深いものからピッコロスネアのように薄いものまであります。楽器のインチとシェルの深さによって最適な音があります。楽器が足りないなど理由はあると思いますが、楽器が選べる環境でしたら、シェルに合ったチューニングをして、最適な音を出せる楽器を選択するようにしましょう。
ヘッドのフィルムは普通にスティックやマレットで叩いている状態ではまず割れません。故意に尖ったもので刺さない限りは割れないんですね。ただ、古くなると音は全然伸びなくなりますし、チューニングも合わなくなっていきます。お客さまからは、ヘッドを張り替えると、「こんなにいい楽器でしたっけ……?」という反応をいただくこともあります(笑)。頻繁に使う楽器でしたら、1年から1年半ぐらいで交換しましょう。また、使っていない楽器でも、自然とヘッドが伸びてしまいます。伸びてしまったヘッドも同様に響きや音の伸びが悪くなるんです。ヘッドの交換はお客様自身でも比較的容易にできます。ぜひやってみましょう。ヘッドの交換にはティンパニだと4台で4万円くらいかかりますが、スネアだと数千円なので比較的交換しやすいです。
プラスチックヘッドでも様々な種類が出ていますので、奥が深いです。選ぶのが楽しい、というお客さまの声も聞きますね。
従来はフィルムだけのものでした。それがプラスチックヘッドの基本にはなりますが、最近は多様化しています。何を吹き付けるか、繊維をどう絡ませるかというところで種類がわかれていきます。フープの留め方も接着剤で固定するか、金属を巻き込んで固定するかという種類があります。従来の新品のヘッドを張るとパキパキと音が出ます。余分な接着剤が剥がれる音で、最初その音をしっかり出してあげてから、自由な状態に持っていきます。しかし最近登場した、巻き込んで固定するヘッドはその音がしないんです。素直にスーッと入っていって、緩むときもスーッと戻ります。使いやすいと言う方も、接着剤の音をさせないと安心できないというお客さまもいらっしゃいますが(笑)。
まずは皆さんメーカーによるコンセプトを調べます。さらに最近だと、動画サイトで比較動画を上げている人がいるので、参考になるでしょう。
響き線も選ぶことができます。線がコイル状になっているものとワイヤー状のストレートなもの、本数が多かったり少なかったり、種類の異なる響き線が組み合わせられるものもあります。