「ある程度楽器を吹きこなせるようになったけど、もっと上手になりたい……!」「年末年始は忙しくて楽器吹けなかったから、その分頑張って練習しなくては……!」そんな向上心溢れるみなさんのために、プロとして活躍する奏者の方々からのアドバイスをご紹介します! 新年新しい気持ちで日々の練習をグレードアップしてみませんか?
◆フィンガリング(アドバイザー:萩原貴子さん/江戸聖一郎さん)
◆アンブシュア(アドバイザー:谷風佳孝さん/小山真之輔さん)
◆ヴィブラート(アドバイザー:中田裕文さん)
右手:自然に下から腕を上げてできた形が一番自然な手の形です。親指は下から上に持ち上げる力で(重要なことは、自然にしている状態での向きを変えないこと)これに対して小指はバランスをとり楽器を挟む力。
左手:人差し指第三関節(MP関節)の上の部分で体の方向に引き寄せる力をかける。
この状態ができたら、最後に楽器を口に持ってきます。下唇のすぐ下のくぼみの部分が顎です。下唇の厚みは個人差ありますが、できれば自然に顎にひっかかっている感覚が最も効率がよいです。この体勢が整って初めて指が自由になります。第三関節(MP関節)を支点として動かすことが最も効率よく力をキィに伝えます。指は丸めてしまうと握る力がかかり、指先は自由に動きません。
この2つが脳からの指令でうまく同じように動いてない場合、滑らかに指が動いてないように感じます。できない指使いのひっかかるところを観察してみましょう。
❶ うまく吹けないところにマークを付けてみてください。
❷ どの指に関係しているかチェックしてみてください。
❸ チェックした指を意識して動かしてください。
この順番で自分を観察します。動きが悪いのは指を上げるところなのか、押すところなのか自覚し、その音をつかむように意識するとよいです。
指が動いていないのではなく、息のスピードがキープされていないため、下の倍音が出てしまっているのを、指のせいにしてしまうことがよくあります。息が指を連れていくようにしましょう!
同じ息のスピード(高音のE がでるスピード)をキープして吹いてみてください。リムスキー=コルサコフ『熊蜂の飛行』の私の演奏最短記録は1分2秒です(カットなし)!! さあ! 皆さんも、やってみましょう。
指を速く動かすためには、不要な力を抜いて指が自由になっていることが絶対的に必要です。キィを押さえつけるようにして楽器を持っていたり、左手の人差し指付け根の支点がぐらついていると、いくらがんばってもスムーズな動きにはならないでしょう。どんな調のスケールやアルペジオを吹いても、楽器そのものが安定していることを意識するようにしましょう。けっしてテンポを上げて速く練習する必要はありません。むしろゆっくりと丁寧に体の使い方を意識しながら音を出しましょう。
私も、高校生くらいの頃は薬指・小指がうまく動かなくて、「どうやったら鍛えられるんだろう?」と思っていました。薬指・小指の動きに限ったことではありませんが、「鍛えるぞ!」と力んだまま根性論でもって長時間練習すると手を壊します。指を動かしながら以下のようなことに気をつけてみてください。
❶ まずはゆっくりと練習しましょう。まだ速く動かせないうちから無理に動かすと、力が入って手を痛める原因になります。つねに音に気を配りながら練習しなければいけません。美しい音を出すように心がけましょう。
❷ 指の動きを徹底的に観察しましょう。吹いている時に手は見えないので、自分の指に意識を集中し、どのように動いているかを感じ取ってください。もちろん、鏡を見て視覚的に観察することも効果的です。
もうひとつフィンガリングの基礎練習をする際に意識すべきことは、けっして機械的にただ速く指を動かすことを目指すのではなく、調性や音楽の流れを意識しながら指を動かすことです。たとえば、タファネル= ゴーベールの『17のメカニズム日課大練習』のNo.1を練習する時、1段目はD-dur(ニ長調)で始まり、2段目はEs-dur(変ホ長調)のV度(属和音)に変わり、3段目のEs-durのI度(主和音)へとハーモニーが変化します。こうして書くとちょっと難しい説明になってしまいますが、2段目から3段目、3段目から4段目、5段目から……と調性の受け渡しを感じながら、音をよく聴いて指を動かしましょう。演奏をする時、指は「ただ速く動けば良い」のではなく、音楽の流れや響きの移り変わりと一体になった時に初めてスムーズに動くようになります。