◆ホルン:下田太郎 Taro Shimoda
沖縄県出身。尚美学園卒。第14回日本管打楽器コンクール第三位。第67回日本音楽コンクール第三位。神奈川フィルハーモニー管弦楽団契約奏者を経て現在琉球フィル客演首席奏者、The orchestra JAPAN 団員。尚美ミュージックカレッジ専門学校講師。タッドウィンドシンフォニーのメンバー。
Q.ホルンを吹くときの正しい姿勢は?
楽器を構えると楽譜が見えづらくて困っています。ホルンを吹くときの正しい姿勢と譜面台の角度を教えてください。
A.楽器を吹きながら楽譜を見ている時の視界は……
人間の左右の視野はおよそ200度程度と言われていますが、譜面台をあまり近付けすぎると自分のパート譜しか見えず、しかも死角ができてしまいます。個人差がありますが、譜面台の高さは目からの距離でおよそ50㎝、少し顎を引くような姿勢で10度ほど下を見る(この時に譜面の真ん中を見ても、視界に前の列の人や指揮者が見えるように譜面台への距離を確認しましょう)感じで楽器を構えて見ましょう。
Q.音をまっすぐ伸ばしたい
高音のHigh F より上の音をのきれいな音で伸ばしたいのですが、音が外れたり、出たとしてもプルプルしてしまったりと、まっすぐに伸ばせません。対処法を教えてください。
A.自分を追い込まずリラックスして
金管楽器奏者の多くは「高音コンプレックス」を持っています。すべての物事はさまざまなことが重なって結果に繋がりますが、考えられることは
♪「音を出さなければ、鳴らさなければならない」と無意識に自分を追い込んでいる
♪それに伴い身体の多くの部分(特に首や左腕、そして上唇)に無駄な力が入ってしまい、「出ない!」と焦ってしまう[悪循環]
♪ 息の初速が速すぎる上にタンギングがしっかり作れていない
♪上唇の周りの筋肉がしっかりと張れていない(唇自体を固めてしまっている)
などが挙げられます。
「高い音を吹こう」とは思わずに、「リラックスして身体の準備を練習テンポに委ねてイメージで狙ったところに息を送る」ことを大切にしてみましょう。
高音で悩む人の多くは「だいたいその辺」程度のイメージで息を「投げつけている」感じになっていることが多いです。まずは冷静に、出す音の音程をしっかり頭でイメージして(声で歌っても良いでしょう。決して上半身を硬直させないように)楽に息を送りましょう。
Q.リップスラーが苦手
リップスラーがうまくいきません。音と音の間にひっかかったように別の音が入ってしまいます。どんな練習をすれば良いですか。
A.上唇の周りの筋肉を意識して
金管奏者にとって、リップスラーは必要な練習メニューの一つですが、やみくもに長時間やったり、唇自体に無理をかけて練習したりしてしまうとリップスラーそのものが逆効果になってしまう恐れがあります。まずは2分音符などゆっくりしたリズムで「下降系」の練習のみをやって自然な息の流れを確認してみてください。(譜例1)
すべての金管楽器にとって「音を上昇させること」は非常に難しく、唇の力で上がろうとすると音色が崩れてしまうので、下降系でまずは息の流れを確認してから、上唇の周りの筋肉を意識して「無理のない音域」から上昇させてみましょう。私の個人的な意見ですが、ホルンにとって16分音符のような細かいリズムでのリップスラーはあまり意味がないと思います。2分音符や4分音符でフレーズを意識して、音の移り変わりの瞬間をできるだけ素早く切り替えるように心がけましょう。逆に切り替えをできるだけゆっくり行なうとグリッサンドの良い練習になりますよ!
Q.これだけはやっておきたい!
ホルンでこれだけは気をつけてほしい、この練習はしてほしいものは?
A.「響かせる」ことを意識しよう
よく耳にするのは普段の合奏練習で「ホルンが聞こえない!」「もっと鳴らせ!」と言われることですね。確かにホルンは大きな音も出せる楽器です。元々野外で合図として他方向に聞こえさせるためのもの(貴族が馬に乗って狩りに出かけるときの通信手段、すなわち現代で言うツイッターでしょうか……笑)です。しかし、音楽室のような防音設備がある部屋ではホルンのもつ「音の拡がり」は得られません。ましてベルが前に向いている楽器や、「元々鳴らしやすく作られた楽器」と一緒に吹くとホルンの音は聴き取りにくくなるので「もっと鳴らせ!」と言われ、そこで奏者に力みが生じて上記の質問のような様々な問題が発生します。
奏者の皆さんが「鳴らす」より「響かせる」を意識されることが大切です。
記事はWind-i 4号からの抜粋です。