◆チューバ:国木伸光 Nobumitsu Kuniki
北海道生まれ。10歳よりトロンボーンを始め、14歳よりチューバを始める。高校卒業後、東京コンセルヴァトアール尚美(現尚美ミュージックカレッジ専門学校)に入学。専門・音楽社会研究・ディプロマの各コースを卒業。卒業演奏会に出演。卒業後、フリー奏者としてオーケストラ・室内楽・ミュージカル等にて活動中。また、スタジオ録音(TV・CM 等)、各種イベント(世界都市博プレビュー等)をはじめとし、様々なジャンルにおいて活動している。NHK の人気番組『おかあさんといっしょ・ファミリーコンサート』に出演。チューバを佐野日出男、多戸幾久三の両氏に師事。現在、聖徳大学付属中高等学校音楽科、聖徳大学音楽学部、尚美ミュージックカレッジ専門学校の各講師として後進の指導にもあたっている。
Q.アンブシュアが安定しない
中学ではトランペットを吹いていましたが、高校でチューバに変わりました。ただ、トランペットに慣れているせいか、チューバを吹くとアンブシュアが安定しません。基本的なアンブシュア、構え方などを教えてください。
A.口の中を縦に大きく開けるつもりで
トランペットとチューバでは基本的な奏法は同じなのですが、マウスピースの大きさが変わることによりアパチュア(唇の間にできる空気の通り道)の広さ・シラブル(舌の形・位置)・発音の方法が変わってきます。
●トランペットの時と同じ息の方向性を意識して、イメージ的に息の太さを太くするように心掛けてください。
●アンブシュアが安定しないとのことですが、トランペットの時と同じように唇の両端を固定させ、口の中を縦に大きく開けるつもりで吹いてみてください。唇全体を振動させるように意識してみましょう。
Q.小さな音をきれいに出すには?
小さな音がきれいに出せません。出そうとすると、プッというような雑音のあと少し時間が経ってから音が出てきます。の練習方法で効果的なものはありますか?
A.吹きやすい音量からデクレッシェンドを練習
①吹きやすい音量から始めてデクレッシェンドの練習をしてみてください。
②小さな音になった時、どういうアンブシュアなのか?息をどう使っているのか?を確認します。
③もう一度小さな音を吹き直してみてください。その時に、吹きやすい音量のときと小さな音の音色が変わってしまっていないかを確認します。
→息の使い方が同じになるようにしましょう。
逆に大きな音も、吹きやすい音量から始めてクレッシェンドの練習をするのも良い方法です。クレッシェンド・デクレッシェンドの練習をする時は、音色・音程が変わらないように注意することが大切です。
Q.音を長く伸ばせるようになるコツは?
長い音を伸ばす場合、息が足りません。息の吸い方、吐き方で長く伸ばせるようになるコツはありますか?
A.息をたくさん吸う・力まない
チューバは他の金管楽器よりも楽器が大きいので息をたくさん使います。今回は3つのポイントをお教えします。
- ブレスの方法
- ブレスの時に“ハ”・“ヒ”と言うようにすると、口の中の容量・喉が狭くなってしまうのでたくさん吸えず、たくさん吸おうとしても空気の通り道が狭くなってしまうので、無理に空気を入れようとして体に力が入ってしまいますので、口を縦に開け“ホ”と言う時の形を作ってください。
→そうすることにより、空気の通り道(口の中・喉)が大きく開けられ、力むことなく息が入りやすくなると思います。
- 息の吐き方
- 吸う時に力が入ってしまうと吐く時にも力が入りやすいので、前項の「ブレスの方法」を意識してみてください。
- 長く伸ばすコツ
- 息をたくさん吸うことと力まないこと。息を直線的に吐き、無駄な息を使わないようにすることです。ゆっくりたくさん吸うことを忘れずにブレスしましょう。
Q.裏打ちをすると必ず遅れます……
合奏で裏打ちをすると必ず遅れます。遅れないために気をつけることは何でしょうか?
A.“タイミング良く聞こえる” ことが大切
チューバは音が低いので、音はどうしても後から聞こえがちになります。「タイミング良く聞こえるようにはどうしたら良いのか」を考えてみましょう。
●クリアに聞かせるためにも発音が重要になってきます。
●息の初速に注意して、まとまった息を瞬間的に楽器の中に入れるように心掛けてください。
もちろんタンギングも大切なのですが、練習する際に細かい音符になってくると息が入りにくくなってきて一つひとつの音が聞こえにくくなりがちなので、細かい音符になるにつれ、息の量を増やしていくイメージで練習するようにしましょう。
Q.速いタンギングができない
速いテンポのタンギングが苦手です。練習方法を教えてください。
A.息の流れをスムーズにすることが必要
◇チューバの場合、マウスピースが大きいので、“Tu”という発音よりも“Du”という発音で吹いてみてください。(低い音の場合は“Du”ではなく“Do”の発音にしましょう。)
→そうすることにより、口の中の容量が大きく・舌の動きがルーズになり息が入りやすくなってきます。
◇舌をつくことにより息の流れを邪魔していることが多いので、ロングトーンの中で舌をつく練習を取り入れてみましょう。
→息の流れが止まってしまっていないか、スムーズな息の流れができているかを確認できる練習方法です。
◇速いテンポでのタンギングができるようになるためには、ゆっくりから始め、息の使い方を意識しながらだんだん速くしていってみてください。
→その時に注意してほしいのは、細かい音符になるにつれ息の量を増やしていくイメージで吹くことです。マウスピースだけでやってみて息の流れを確認しましょう。
Q.これだけはやっておきたい!
チューバでこれだけは気をつけてほしい、この練習はしてほしいものは?
A.目的意識を持つこと
- ①まずは楽器を大切に扱おう
- 特に大きな楽器ですのでぶつけやすいのですが、今の状態よりも悪くならないように気をつけることです。演奏に支障がある場合は、すぐにでも修理するようにしてください。 また、グリス・オイル等でしっかり日々の手入れを怠らないようにしましょう。
楽器の中を洗うことも大切です。汚れがひどいと、ピストン・ロータリーの動きも悪くなってきます。楽器を大切にすることで、自分のやりたいことに対して応えてくれると思います。
- ②いろいろな音楽を聴こう
- 吹奏楽・オーケストラ・アンサンブル・ジャズ等様々な形態・ジャンルの音楽に興味を持ち、聴いてください。
- ③目的意識を持とう
- 「この練習はしてほしい」というよりも、むしろ今やっている練習は何のためにやっているのか?どういうことに気を付けなければいけないのか?を考えてから、頭を使って(目的意識を持って)練習するようにしましょう。
何も考えず何時間も楽器を吹くよりは、しっかり考えた短時間の練習のほうが上達するのが早いです。