オープンシラバス制で“やりたいことを好きなだけ”学べる国立音楽院。より深い音楽の知識や専門性を身につけるための専門学校として知られる同校ですが、中等部・高等部も併設されています。中等部はフリースクール、高等部は通信制高校のサポート校として、音楽をふんだんに学びながら高校卒業資格を取ることができます。実際にどんなことを学んでいるのか、現在高等部に所属している松木一紗(かずさ)さん(3年生)と武富萌空(もあ)さん(2年生)、そして中学・高等部の吉田先生に聞きました。
さまざまな生徒が集まる高等部
- 編集部
- 松木さんは、高1のときに転入してきたそうですね。
- 松木
- はい。私は鹿児島出身なのですが、地元の高校からここに転校しました。今は親元を離れて生活しながら通っています。
- 編集部
- 鹿児島ですか。それはまたずいぶん遠くから……!
- 吉田
- 遠方から来る生徒も多いんです。高校生でも地方から4時間かけて通っている子なんかもいるし、武富さんのように近所から普通に通っている子もいます。本当にいろんな生徒が集まっているんです。
- 編集部
- 高校生で、鹿児島から親元を離れて来るというのは相当の決心だと思いますが、転校のきっかけはどんなことだったのですか?
- 松木
- 中学の頃から吹奏楽部でクラリネットをやっていて、高校に入ってからは個人的に先生にもついて習っていました。そのうちに「もっと本格的に音楽が勉強できる環境で、しっかり学びたい」と思うようになり、いろいろ調べていたらこの学校のことを知って、ここに入りたい!という気持ちが強くなりました。
- 編集部
- ご両親は心配されたでしょう。
- 松木
- 最初話した時はびっくりしていました(笑)。この学校は、高校生も年齢層の広い専門学校生の中に入って、いろんな人たちと一緒に活動することが多いんです。私はウインドオーケストラに入っているんですが、最初は思うようにいかなくて落ち込むこともありましたけれど、おかげで精神的にすごく鍛えられて、自分自身強くなりました。両親も、離れていてもそういうことを感じていると思うので、応援してくれていますね。
左:松木一紗さん(高3)、右:武富萌空さん(高2)
一般科目や大学受験対策もしっかりフォロー
- 編集部
- 武富さんは、中学卒業後に最初から高等部に入学したそうですね。
- 武富
- はい。私は管楽器リペアをやりたくて、高校の勉強をしながらリペアの実習ができるこの学校を知ったときに、ここで勉強したいと思ったんです。
- 編集部
- リペアに興味を持ったきっかけは?
- 武富
- 中学の吹奏楽部でクラリネットを吹いていたんですが、中1のときに学校にメンテナンスの方が来て、自分の楽器を目の前で直してもらったんです。そうしたら見違えるように音色が変わって、すごいなあ、自分でもこんなふうに直せたらいいな、と思ったのがきっかけです。
- 編集部
- 中1から夢に向かって着々と歩んでいるのは素晴らしいですね。でも、普通の高校とはちょっと違う通信制のサポート校ということで、親御さんに反対されたりはしませんでしたか?
- 武富
- 最初は反対されましたが、ずっと“ 入りたい” と訴え続けて(笑)、許可をもらいました。
- 編集部
- お二人とも目的意識がとてもはっきりしていて、熱意も伝わってきます。ところで、高校生としての一般科目の学習や受験対策などについてはどんな取り組みをされていますか?
- 吉田
- 通信制高校とは言っても、実際、たとえば数学なら数Ⅰ、数Ⅱなどきちんと高校の課程は学習しますし、もちろんわからないところがあればフォローもします。音楽を学ぶのと同時に、高校生である以上は高校卒業資格を得ることも重大事ですから。大学進学者もたくさんいます。
将来につながる学びの魅力
- 編集部
- 吹奏楽やビッグバンドをはじめとして、中学生から高校生、大人まで、縦割りで一緒にいろいろなことをやっているようですが、中学、高校、専門学校、といった垣根はないのですか?
- 吉田
- 団体で行なう大きな授業には、垣根はありません。松木さんの場合は、大人もいる中でパートリーダーをやっていますしね。高校生でも力とやる気があれば活躍できるので、そこに年齢はあまり関係ないですね。
中等部・高等部担当の吉田昌弘先生
- 編集部
- 編集部アンサンブルは、授業であり、部活みたいな感じでもあるわけですか?
- 吉田
- そうですね。長期休みの間でも、生徒たちはバンドや吹奏楽の練習をするために通ってきます。入学式など校内外で演奏をするので、それに向けて練習をしていくところは、まさに部活動のようなものですね。
- 松木
- 老人ホームなどで演奏する機会も、よくあるんです。そういうときは長期休みの間もみんなで集まって練習しますね。演奏する場に応じて曲を選んだり、プログラムの段階からディスカッションしてみんなで考えたりもします。編曲や司会なども、全部自分たちでやります。
ジャズマンたちからの薫陶を受け、ここからプロミュージシャンになる卒業生も多い
- 吉田
- コンサートの企画運営から経理まで、すべて自分たちで実行するという授業もあります。表舞台を支える裏方がいてはじめて華やかな舞台が成立することへの理解を深めるの、とても大切です。そのうえで将来の自分の進路を考えていくことができるのは、この学校ならではの魅力だと思います。
年度末のフィナーレを飾る東京オペラシティでの公演 ウインドオーケストラ
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