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田中覚のリペアマンへの道! 鍵盤打楽器・小物編

Wind-i mini 24号 第3回

第3回 鍵盤打楽器・小物編

来年度4月から「島村楽器テクニカルアカデミー」と改称することに合わせ、日本で唯一「コンサートパーカッションリペア科」を新設する代官山音楽院。本格的なリペア・メンテナンスだけでなく知識、社会性・音楽性をも身につけることができる新学科の開講に先立ち、主任講師の田中覚先生に「楽器別リペア・メンテナンスについて」お話しいただきました! 第3回目は「鍵盤打楽器・小物編」です。

鍵盤打楽器では、使わない音板が壊れている場合、使う音板が万全なときでも影響はありますか?

田中覚

音板と共鳴管がそろっているシロフォン

その状態でいい、ということはないのですが、使わない音板(音を出す板)の音程だけが狂っていても他の音板に影響はないです。ですがいずれは使うこともありますので調律または交換をオススメします。
次にマリンバやシロフィン、ヴィブラフォンなどにある響きを増強させる共鳴管(鍵盤の下にある円筒または角筒のもの)に不具合などがある場合も音に影響します。この共鳴管は幹音、派生音それぞれの管が低音から高音まで繋がっており、1か所が壊れていたり緩んでいただけで、他のどの音を叩いても全体に振動が伝わりノイズが出てしまうこともあるんです。
修理時期ですが、共鳴管の修理も音板の調律も時間がかかります。特に調律はできるだけ冬などの使用頻度が少ない時期に出すことをオススメします。

鍵盤打楽器のケアで気をつけたほうがいいことは?

マリンバでは、軽度の経年変化が起こります。それを防ぐためにはカバーをかけたり毛布に包んで直射日光を避け、湿気の溜まるようなところには置かないことで随分と良い状態が保てます。毎回練習が終わったあとは最低限カバーを被せたほうがいいですね。
金属の楽器はそこまでやらなくてもいいかもしれませんが、やはり直射日光があたるとグロッケンを止めているゴムが劣化してダメになることもあります。どちらにしても直射日光は楽器にはよくないですね。

クラベスやトライアングル、タンバリンなどの小物はどうやって保管したらいいですか?

田中覚

密閉袋に入った乾燥剤とタンバリン

もちろんケースに入れたほうがいいです。中でもタンバリンは、ジップ付きビニール袋(多くのタンバリンはA3サイズくらいがちょうどいい)に入れておくと随分違いますね。そのうえで湿気を取るためにお菓子などに入っているシリカゲル乾燥剤を入れ、さらにケースに入れておくと安心ですね。
また、緩んだ皮を復活させようとドライヤーを使う方法もありますが、水分の揮発が早くなると同時に皮の脂分もなくなってしまいます。オイルなどを塗り足せば皮は保護されますが、今度は張力が落ちてしまい元に戻りません。適度な張力が戻らないことには良い響きは出せませんのでドライヤーを使うのは非常時だけにしましょう。

 


Profile|田中 覚

1993年4月から2007年9月まで株式会社コマキ楽器パーカッション・シティに勤務。この間、新日本フィルハーモニー交響楽団の近藤高顯氏にティンパニ演奏とティンパニマレット・リペア、作成を師事。2007年9月より打楽器リペア業務を主としたマチュア・パーカッションを立ち上げた。2008年~ 2014年の7年間、札幌で毎夏開催されているPMF 音楽祭で使用される全打楽器の保守管理やセッティングを担当。国内外の多くの奏者や専門家と交流を持つ。

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