楽器初心者のための基礎知識を吹奏楽の第一線で活躍中のプレイヤーに聞いちゃうというこのコーナー。第2回目はテナートロンボーン編です。
教えてくれたのは・・・伊藤敬二 Keiji Ito
2003年東京音楽大学卒業、在学中、特待生として選ばれる。トロンボーンを近藤孝司、故・白石直之、伊藤清の各氏に師事。また、マスタークラスにてオラフ・オット、ハンス・ストレッカー、イアン・バースフィールド、山本浩一郎の各氏にレッスンを受ける。2004年第2回東京音楽コンクール金管部門第3位、2008年第6回東京音楽コンクール金管部門第3位、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉、群馬交響楽団等に客演。現在フリーのトロンボーン奏者として活躍中。TAD ウインドシンフォニーメンバー。
1、楽器をぶつけたり、落としたり絶対しないこと!
トロンボーンは金属でできています。ぶつけたり、落としたりすると凹んだり、動かなくなってしまいます。見た目では直すことができますが、吹き心地などは元に戻らないので、大事に扱いましょう。
2、掃除やお手入れをちゃんとしましょう!
この動きが悪いと余計な力が入って奏法的にも良くありません。スライドは毎日お手入れしましょう。
それからマウスピースを取りつける付近の管の中は特に汚れが溜まりやすいので、クリーニングロッドなどを使って定期的に掃除をしましょう。
3、楽器の状態を確認しよう!
部品がなくなっていたり、故障している状態では練習しても絶対に上手くなりません。ちゃんとした状態で練習できるように、自分の使う楽器をいつも見てあげましょう。
①金管楽器は息で唇を振動させて音を出します。まずはマウスピースで音を出してみましょう。ここで大事なのは口の形、アンブシュアです。良いアンブシュアを作るためには、口の周りにある筋肉の使い方のバランス、タンギングをするための舌の使い方、音を出すための息、この3つがうまく合わさることが必要です。言葉にすると難しく感じますが、簡単に確認する方法があります。まずマウスピースに息を入れてみましょう。そして、その出している息を舌でしっかり止めます。このとき息は出しているつもりのままです。舌で息を止めているとき、少し口がすぼまった感じになったと思います。これでアンブシュアの完成です。あとはそのまま、舌を素早く離していけば音が出るはずです。必要以上に口をすぼめたり、引っ張ったりすると音は出ますが、決していい音にはなりません。
②音が出るようになったら、今度はマウスピースで音をいろいろ変えたり音階をやってみましょう。金管楽器は拡声器みたいなものですから、マウスピースで音階や曲などいろんなことができるようになると、上達スピードがアップします。
③それでは楽器で音を出していきましょう。いい音を出すために必要なこと、まずは姿勢です。トロンボーンは基本的に左手だけで持ちます。初心者は持っているだけで大変かもしれませんが、楽器を持つときに小指の側から持つようにすると、必要以上に力が入らず、しっかり持てるようになるので試してみてください。右手は人差し指、中指、親指の3本の指で、スライドを素早く動かせるように軽く持ちます。そして、ひじを曲げて楽器を持ち上げ、マウスピースを口のところまで持ってきます。ここでひとつ注意することは、顔を楽器に寄せないことです。構えたときに肩や首、胸回りに余計な力が入らないようにチェックしましょう。ここまでできたら、あとはマウスピースで音を出したときと同じ要領です。楽器をつけたほうが抵抗ができるので、マウスピースだけで音を出すより音が出しやすいと思います。また、楽器をつけた状態でもマウスピースでやったアンブシュアの確認をしてみましょう。トロンボーンはスライドを動かして、音を変えます。ポジションが1 ~ 7まであり、だいたいの目安はありますが、音によって微妙に変わってきます。自分の出している音を耳でしっかり聴いて、常に音程とポジションが合っているか確認しましょう。
トロンボーンが上手になるための基礎練習で、必要な要素は大きく分けてこの4つ。ロン グトーン、タンギング、リップスラー、そして音階練習です。楽曲はこの4つの応用みたいなも のですから、この4つの要素がしっかりとできるようになれば、どんな曲でも大丈夫です。そ れぞれの要素を練習するときの注意点を挙げていきます。
①ロングトーン:音の出だしから終わりまで息の圧力が変わらないように意識しましょう。
②タンギング:舌をつくのではなく、ついている舌を離すことを意識しましょう。
③リップスラー:口先を変えるのではなく、口の中の空間を舌の動きによって変えることを意識しましょう。
④音階練習:頭の中で出す音程をしっかりイメージすることと、スライディングがあやふやにならないように意識しましょう。