Interview for Future

山形交響楽団首席トロンボーン奏者・太田涼平


山形県の芸術文化を代表する楽団、山形交響楽団の首席トロンボーン奏者・太田涼平さんにインタビュー。
ある日、世界の貧富事情を知ったことがきっかけで“自分にも「この人たちの心を豊かにすること」ならできるのではないか”という思いが生まれ、その思いは今でも活動の原動力となっているという。
今回はプロになるまでの活動、奏者として大切にしている考えなどをお話いただいた。

 
――
楽器を始めたきっかけを教えてください。
太田
小学4年生のころ、金管バンドを見学しに行ったときに、「なんてカッコイイんだろう!」とあのスライドを動かす動作の大きさに心惹かれて、真っ先にトロンボーンを希望しました。
金管バンドだったからトロンボーンを選びましたけど、吹奏楽だったらダブルリード系(オーボエ・ファゴット)もやってみたかったかな。
――
中学校では吹奏楽部に?
太田
はい、ダブルリード系の楽器を選ぶことなくトロン ボーンを引き続き。
3年の時はそれまでの練習と比べ物にならないほどキツくて……。でも当時の顧問の先生のおかげで全国大会出場まで進むことができたんです。この頃から「これから先もトロンボーンを吹いていきたいな」と思い始めましたね。
――
練習がキツくて、楽器をやめたいと思いませんでしたか?
太田
……思いませんでしたね。それより悔しいという気持ちが勝っていました。
全国大会へ連れて行ってくれたその先生は音楽の先生だったんですが、本当に熱心で、僕が高校の音楽科を受験したいと言い始めたときも、受験準備に付き合ってくださったんです。部活が終わったあとの時間を使ってピアノをイチから、楽譜の読み方(当時はトロンボーンの楽譜でヘ音記号の楽譜は読めた)なども教わりました。
高校(音楽科)に入ってからは本格的に週1の実技レッスンを受け始め、部活動にも励みました。

――
部活動に入っていて良かったことはありますか?
太田
良かったことしかないです。僕の場合は小学校のときからずっと先生に恵まれた環境だったなと改めて感じます。
実は小学5年生の1年間、なんとなく面倒くさくなって部活動をサボった時期がありました……。
6年生になる前、「1年も行っていなかったし、もう行かないまま終わろう……」と思っていたとき、ちょうど顧問の先生に出くわして無視されるだろうと思ったら、「早くおいで」って言ってくれて。それで行かなきゃ!と思って、6年生からちゃんと行くようになりました。
――
先生がいなければトロンボーンを吹き続けていなかったわけですね。
太田
本当にそうですね。先生には感謝しています。
――
プレイヤーとして大切にしていること、必要だと思うことはありますか?
太田
日本国内にはたくさんの楽団があります。でも、「あの楽団はレベルがどう」と、選りすぐっている人が多いように感じていて、そういう気持ちでは本命こそ手に入れることができないと思うんです。
本当にプレイヤーとして活動したいと考えた時、自分から食いついていくことが大事。また音楽界に限らずどの現場でも「挨拶」はすごく大事だと思っています。人間関係を養う意味でも非常に大切ですね。

Profile

太田涼平 R y o h e i O o t a
長野県松本市出身。小諸高等学校音楽科、桐朋学園大学を経て、現在山形交響楽団首席トロンボーン奏者。郡山女子短期大学部音楽科非常勤講師。
第4回日本トロンボーン学生音楽コンクール第1位入賞。第4回トロンボーンクァルテットコンクール・イン・ジパング第2位入賞。新庄吹奏楽団、山形交響楽団とソリストとして協演。
Trombone Quartet 虎徹 KOTETSU、LUSTIA Trombone Quartet各メンバー。
〈セッティング〉 楽器:テナーバス Bach42BOGL GB TUNING SLIDE & F SLIDE
マウスピース:Bach 2/6 AL

CHECK!

山形交響楽団 第264回 定期演奏会

太田さんが独奏する『トロンボーン協奏曲』は、映画「ゴッドファーザー」で脚光を浴びたイタリアの巨匠で映画作曲家のニーノ・ロータの作品。いま彼のクラシック作品が注目を集めている。また、民族の躍動を20世紀の技法で色彩的に描いたコダーイ、ブラームスの幸福感に満ちた第2交響曲と、飯森監督のエスプリが光るプログラム。

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