日々練習しているのにイマイチ上達した実感がない!音が思っているように響かない!……なんてこと、ありませんか?実はクラリネットで一番重要な“仕掛け”が音や吹奏感に大きく影響し、問題はそこに潜んでいる場合がほとんどなのです。一度肩の力を抜いてじっくり見直してみましょう♪
マウスピース、リガチャー、リードの3点をクラリネットでは「仕掛け」と言います。この3点の相性によって音色や吹奏感が決まると言っても過言ではありません。
中でもクラリネットの音色を決める上で、マウスピースが果たす役割は大きいのです。十亀氏は「マウスピースは割と不変で、その次に変わらないのがリガチャーです。リードは吹いていると変化してきます。そのため、まず最初にマウスピースを選んだほうがいいと思います」と語ります。
仕掛け全体が音に密接に影響するものの、その軸として存在するマウスピースを知ることが“自分に合った仕掛け”を見つける第一歩なのです。
マウスピースにおいて、バッフルやチェンバーなどの内部は、見えづらく良し悪しはわかりませんが、例えば、サイドレールの幅が左右で大幅に違うものや、ティップオープニング(開き)の左右の開きの違いは見て確認できる部分です。
そこが均一でないマウスピースの場合、一般的に良いとされるリードが合わない場合も多く、リード選びが難しくなります。そこで実際にティップオープニングの左右の開きを調べる方法として、図のようにマウスピースをティップ側から正面に見て、ティップレールの左右両端とテーブルが平行になっているかを確認しましょう。この開きが大幅に違うものは精度の面で高いとはいえません。
忘れてはならないのが、マウスピースとリードの相性について。マウスピースの各部はリードとのマッチングに大きく影響を与えます。
一般的傾向としてはマウスピースの先端部であるティップオープニングが広いとリードは柔らかめ、逆に狭いと硬めのものが合うとされています。また、リードの両端が薄く、中央が厚いものはフェイシングの長いものが合うと言われています。
マウスピースのお手入れの仕方は人それぞれ違います。十亀氏は「むやみにスワブを通さないこと。汚れてきたと思ったら、表面を傷つけないように水洗い(編集部注:変色するので水洗いはダメだという説もある)をすれば良いと思います。また、マウスピースは意外と軟らかいのでリガチャーを締めた状態でリードを下に動かすと、マウスピースのフェイシングが剥がれてしまうことがあるので注意してください。そしてリガチャーを取り付けるときは最後まで締めず少し緩めておいて、リードをセッティングしたあとにリガチャーを締めるようにする。そして片付けるときは必ずキャップをすること」。
マウスピースはゴム製や樹脂製のものが大半。触った感触は固くても、意外と衝撃や摩耗に弱いと認識しておきましょう。
自分に合うマウスピースは人それぞれ違ってくるので、実際に吹いてみて確かめる方法が効果的です。
十亀氏いわく「クラリネットは音が出しにくいと言う人がいますがそれは間違いで、出にくいと感じるのはそのマウスピースにリードやリガチャーが合っていないからです。必ず合うものがあります。大事なのは色々なマウスピースを吹いてみて“吹きやすいと感じたマウスピースを見つけること”です。吹きやすいというのは自分の思ったとおりに吹けること。人それぞれ骨格や筋肉の付き方が違うので吹きやすいと感じるマウスピースもそれぞれ違います。」
試奏の際には上記の項目を目安にしてみましょう。
リガチャーとはリードとマウスピースを固定する道具で、現在はネジ式のものが主流となっています。クラリネットという楽器は他の木管楽器と比べて音域が広いので、低音から高音までをムラなくバランスよく、そして音色に統一感を保たせて鳴らすのに苦労しますよね。もちろんリードによってもかなり左右されますが、“リードをマウスピースに密着させる”リガチャーの役割もとても重要となってきます。
そのうえ、リガチャーがリードにどう接しているか、材質、リードの振動をしっかりとマウスピースと楽器に伝えられているか、なども重要視しなくてはなりません。
リードに触れる部分の形状が面なのか点なのか線なのかで音色や反応、吹奏感に大きな違いをもたらします。面なら幅・面積、点と言っても球状のものと四角いブロック状のものではまったく異なり、その大きさや配置でも別のものになってしまいます。線あるいはレールのようなものの場合はその太さ、長さなどで相当な変化が現れます。
リガチャーは歪んでさえいなければ、学校にあるものでも大丈夫です。が、締め方が問題。ほとんどの人がガッチガチに締めすぎてしまい、わざわざ息が入れにくい状態で楽器を吹いています。
一本ネジタイプのリガチャーを使っている人は、ネジが完全に止まりきる少し手前で締めるのを止めてください。2本ネジタイプの人は、下側のネジは1本ネジの人と同じぐらいにして、上側のネジはそれよりももう少しゆるい状態がベストです。
この締め加減をベースラインにして、使うリードに合わせて若干締めたり緩めたりの微調整を行なってください。
リガチャーを装着する位置も割と重要です。マウスピースを横から見ると、2本の横線が引かれているので、その間にリガチャーが収まるように付けてあげましょう。リードの硬い皮の部分を均等に締められる位置が良いと思います。
リードの番手はマウスピースとの相性によって決まります。マウスピースの開き(ティップオープニング)の大きいタイプには軟らかめ、開きの狭いタイプには硬めのリードが合うと言われていて、このことを“ リードとマウスピースのマッチング” と言います。
また、楽器を構える角度やくわえ方でも使いやすい番手は変わってきて、口腔の広さ、体力の差等でも異なります。諸説ありますが、口腔が狭い人は軟らかめ、その逆の人は硬めのリードを好むようです。
クラリネットのマウスピースとしてごく一般的なバンドーレン社の5RVライアーでは、同じメーカーのリードであるV12(銀色の箱)の3½から4、同B40なら3か3½がベストマッチングとなりますが、トラディショナル(青色の箱)ならそれよりも若干硬めのほうが良いです。
バンドーレン以外のメーカーでは、バンドーレンの番手の硬さの数字を基準にしていますが、多少前後するリードもあるので、一覧で確認しましょう。
1 まずマウスピースにリードではなくリガチャーを付けます。このとき、相当気をつけないとマウスピースの先端にリガチャーを軽くぶつけただけで変形してしまい、さらに先にリードを付けているとリードもカンタンに割れてしまうので注意。
2リードを上部から入れる。必ず上から入れ、リードの先端をぶつけないように気をつけましょう。
3リードの先端をマウスピース先端部のアーチに合わせます。合っているかは横からも見て確かめましょう。ほぼ同じ高さかわずかにリードをマウスピースよりわずかに上に出し、硬すぎる場合は逆にリードを下げて付けます。
4マウスピースのテーブル(平らな部分)の中央にリードがくるように尻部(最下部)の場所を確認。リードの最上部(先端)と最下部の場所を確かめ、マウスピースの中央に付けます。
5リガチャーがマウスピースについている溝と線の間にあるかをチェックして、いつも同じ場所に付けるようにしましょう。上につけたり下につけたりすると音質や吹奏感が変わるので、色々試してみて自分好みの位置を探しましょう。
6ネジが2箇所あるタイプのリガチャーの場合、上のネジを強めに、下のネジを緩めに締めるのと、その逆では鳴り方がまったく変わってきます。
■ まずは音を出してみます。レジスターキィを押さない下管の音が若干の抵抗感はあったとしてもストレスにはなっていないことを確認します。
■ 次にレジスターキィを押さない上管の音に雑音がなく柔らかい音色が出ることを確認します。最後は開放のG(実音F)からBbの中音域、ネックの部分の音がちゃんと鳴るかをチェック。
これらがOKであればレジスターキィを押した音より高い音はまったく問題なく、低音から高音までが一体感のある吹奏感で均一な音質が出るはず。