インタビュー｜大井剛史

Photo K. Miura

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まずは大井さんと音楽の出会いを教えてください。

大井剛史（以下大井）

両親は音楽をやっていない家庭だったのですが、幼稚園生のころ先生が休み時間にピアノの練習をしているのを見て音楽に興味を持ちました。最初はおもちゃのピアノを買ってもらったり、友だちの家にあるピアノで遊んだりしていましたが、小学校入学の際に本物のピアノを買ってもらうと同時に習い始めました。
中学生の時に吹奏楽部に入り、パーカッションを演奏していました。毎日朝早く部室に行って熱心に練習をしていましたね。パーカッションパートはたいてい上級生になるとティンパニとドラムセットなどの要の楽器を叩けるみたいなヒエラルキーがありますよね（笑）。私もその例に漏れず、3年生の時はティンパニなどを叩いていました。
しかし、その頃にはすでに指揮者になりたいと思っていたんです。私自身、最初はパーカッション志望だったと記憶していたのですが、当時の顧問の先生曰く「大井君は最初から指揮をやりたいと言って入ってきた」とのことでした（笑）。
当時は、部室にあったありとあらゆるスコアを読みました。吹奏楽のスコアはオーケストラよりも段数が多く複雑なので、勉強になりましたね。移調楽器の読み方も独学で覚えました。
その熱意が伝わったのか、3年生の演奏会ではA.リードの『アルメニアン・ダンス　パートI』の指揮を本番でやらせてもらいました。私が指揮をしてしまうとティンパニが空席になってしまうので、代わりに先生が叩いてくれたのです。先生の専門はコントラバスでしたけど（笑）。
独学だっただけに、当時はめちゃくちゃな指揮をしていたと思います。最後の和音とともにメガネが落ちる様子がビデオに残っています（笑）。でも、今から思い返してもこの本番は特別でした。終わると同時に頭が真っ白になり、家に帰ると何も気力が沸かなくなるほどの体験でした。この感動は今でも私の根底に流れています。
高校生の時は指揮の勉強に専念するために、吹奏楽があまり盛んではない学校に進学しました。だから、奏者として吹奏楽をちゃんと経験したのは中学校3年間だけということになります。