音階とロングトーン
ロングトーンや音階は単純な作業かもしれませんが、きちんとした、きれいな音の、音楽的な、ゆったりとした、力強い、優しい、などと形容して、それらができるようになるにはたくさんのやるべきことがあるのです。今回は音大生やプロ奏者も使っているメソード、ギュンター・パッシン&ラインホルド・メルツァー共著 Die Spieltechnik der Oboe(Friedrich Hofmeister Musikverlag)の中からご紹介したいと思います。
まずは最初の「I.Tonleitern」(音階)からa)をやってみましょう。 これは本当に基本形なので、このページは暗記してください。a)のうち、最初の5段に渡る音階をそのままやると、どこかでブレスが必要になるでしょう。まずは隅々まできちんときれいに吹けるようにするために、テンポは楽譜の指示にある一番遅いテンポ=84 またはそれより遅く=60〜72程度でやります。
ブレスをする時にはどこかの「小節の最初の音」で「3拍伸ばし1拍休み」を行ない、ブレスをした後にその小節の最初の音から続けます。そうすると雑にブレスを取ってしまうことがなくなり、伸ばす音はロングトーンの練習にもなります。伸ばした音を切る時には響きの余韻をしっかり感じて、お腹の支えはそのまま保ちます。ブレスを取る=息を吸うときには体のチカラを抜いて「スッ」と空気が入ってくるようにします。楽器を吹くときには一生懸命息を吐く(楽器に息を入れる)、身体のチカラを抜くと空気が入ってくる、という状態を使います。いわゆる「体操後の深呼吸」は一生懸命吸ってチカラを抜いて吐きますから、逆の使い方です。
初心者によく見られるのはブレスを取らずに、息が続かなくなるまで長く吹いて、そのあと「はぁはぁ」と疲れてしまって吹けない、という現象です。オーボエは息が少なくて済むので長く吹いてしまいますが、先々を見て疲れないうちにブレスを取ることが必要です。ブレスを取らないで長く吹いてしまうのは、ブレスを取るのが下手でアンブシュアが崩れるからなので、音階やロングトーンの練習にブレスを上手く取る練習も組み合わせておくと良いでしょう。
楽譜通りの音階では低音から高音、そして低音へ戻っていきますが、反対にやることも有効です。特に低い音は出しづらいので、最初の低いC音(ド)がプスッとして吹けないこともしばしばでしょう。その時には中音域から始めたり高音域から逆さまに下がる方法が有効です。 強弱としては音が高くなるにつれてクレッシェンド、低くなるにつれてデクレッシェンドしてください。するとオーボエの弱点の「高音域がやせ細る」「低音域の音が大きくなってしまう」のを矯正できます(譜例①)。
【譜例①】
次にページの下側のb)ですが、くり返しは必ずやってください。できたら2回くり返して「ソファミレドーレミ」のターンを練習しましょう。スラーとスタッカートは楽譜ではつなげて書いていますが、別々にやって構いません。速いテンポにも挑戦して=110〜120までできると、あなたはもう中級者ですよ。 高音域は初心者ではレまたはミbぐらいまでしか出せないでしょうから、2オクターブの音階は調によっては工夫が必要です。例えばF-durは譜例②のようにするとよいでしょう。
【譜例②】
最初はa) b)とも、オーボエの基本のC-durがスラスラとできるように。続いてD-dur(ニ長調)、B-dur(変ロ長調)、Es-dur(変ホ長調)の4つができるようになると良いですね。Es-durでのF音の運指は左のFとフォークFの両方でできるようにしておきましょう。フォークFと普通のEsの連続は、生まれてこの方経験したことがないような指の運動になりますから、トレーニングしないと上手く動きません。「ファミbファミbファミbファミb〜」と、ゆっくりでも続けて吹いてみる、また楽器がなくてもエアーオーボエで練習しましょう。
※こちらの記事は、Wind-i vol.6を一部抜粋し掲載しています。