楽初めて楽器に触れる人に覚えてほしいこと3つ
①楽器を大切にしよう 当たり前のようですが、楽器は大切にしたほうが良いです。とは言っても、トランペットは他の楽器と比べて取り扱いが比較的楽チンです。まずは落とさない! ぶつけない! 凹んだり曲がったりした楽器はとても残念です。音にももちろん影響します。特にやりやすいのは、マウスピースを落とすこと。出口の部分が円形ではなくなっているものをよく見かけます。楽器への挿さり具合や息の流れに悪影響が出ます。自分のマウスピースをチェックしてみて、写真①のように円形ではなく変形しているようでしたら、今すぐ楽器屋さんに相談してみましょう。
あとは管の内部。重症になるとヘドロのような汚れで管の太さが半分以下になっている楽器を時折見かけます。写真②のグローバル社の販売するジェットクリーンというスポンジでできた掃除道具、ヤマハ製のスワブなどがありますので、練習後や週に一回通すと良いと思います。
【写真①】
【写真②】
②良い音を聴こう
これまた当たり前のようですが、良い音が頭のなかになければ、どんなに練習しても良い音は出ないでしょう。良い音を知り、感じることが上達への最短の近道だと思います。身近な先輩や友だちから刺激を受けることも大事ですが、是非ここはせっかくなのでプロの演奏にどんどん目を向けていきましょう。日本にも世界にも素晴らしいプレイヤーはたくさんいます。身近なところで演奏会があれば無理をしてでも聴きに行く。生演奏が一番ですが、それがなかなか叶わないのならば、CDもたくさん売られています。国内外のトッププレイヤーの音を繰り返し何度も聴けるのがCDの利点です。自分のものにするつもりでたくさん良い音を聴きましょう。お気に入りのプレイヤーと出会えたら、もう最高です。
③自分の音に敏感になろう
良い音を聴いたら、次は自分がそこに近づく番です。どんな音色? 発音? 吹きかた? 自分なりに違いをみつけて、自分流でも構わないので、工夫しながら試行錯誤を重ねることが大事だと思います。あとあと誰かに教わることがあったときに、その自己流の経験が大きく影響することでしょう。幸い、トランペットは木管楽器より難しいことはあまり楽譜に書いてありません。なので僕の考えでは、一発の音を磨くことが重要になると思っています。トランペットは音一発が命ですね! よく「高い音が出ない」と悩む中高生がいますが、誰でも出せる中音域を誰よりも良い音で吹けることを目標にすると、次第に演奏感覚が磨かれていって、音域も広がっていくと思います。焦らず、いま自分が出せる音域を耳と頭を働かせて敏感になって磨いていきましょう。自分の身だしなみを整えるようなつもりで鏡を見るのと、とても似ていると思います。
音を出してみよう!
さて、実際に音を出してみましょう。トランペットは唇が振動することによって音が出るのは皆さんご存じですね。より良い振動を得るためには、無理矢理は良くないと思っています。その点について考えてみましょう。
トランペットを吹くとき、その力の加減はとても重要です。力み過ぎたり、逆にそんな力んでいる自分に気付いた結果、ユルみすぎたりなんてこともよくあります。なんとかちょうど良い感覚を会得したいところです。マウスピースだけで音を出す練習をよくやりますよね。
僕の場合は、マウスピースだけで音を出している時の体の状態は、少し力んでいると感じています。音を出すために必要な楽器からの抵抗感も少なく、音も不安定になりがちで、チューナーとにらめっこなんてした日には、もうとても音楽をやれる体の使い方から、かけ離れてしまいます。なので、僕は最近マウスピースだけで音を出すことをなるべく避けています。ほどよい感覚を得るためにちょっとしたオススメの練習方法があります。
写真③のようにマウスピースを挿した楽器の主管を抜いて、マウスパイプだけにした状態で音を出す練習です。ただしこれは写真④のようなリバースタイプの楽器では上手くいきません。ご注意ください。
【写真③】
【写真④】
マウスパイプに“ふぅー”っと温かい息を入れてみましょう。マウスピースだけの時より比較的簡単に音が出ると思います。無理に唇を振動「させる」のではなく、振動「してしまう」状態が掴めればしめたものです。この長さの管だと実音E、トランペットでいう“ファ”の音が出ます。譜例①の最初の音です。ピアノ等で音程をチェックして無理なく“ファ”の音が出るよう、頑張らないように頑張ってみましょう。
“ふぅーっ”とパイプに入れた息がコロッと音に変わる瞬間を感じたいところです。なんとなくその感覚が掴めてきたら、次は舌を使わずに、狙った瞬間に息が音に変わるタイミングを持ってこられるように息だけで発音してみましょう。ノータンギングとかエアーアタックだとかそんな呼び名の練習方法です。口先だけではなく音が出た瞬間にお腹に“トン”と反応があると嬉しい悲鳴です。敏感に自分をよく観察しましょう。
次は譜例②のように音を連打してみましょう。一発目はノータンギング、二発目は舌を使います。「ふとぅ!」とか「はたっ!」みたいな要領です。舌の発音だけに頼らない、息を伴ったタンギングの感覚と心地よさを感じましょう。なんとなくそのあたりを感じられたら、その感覚のまま譜例②の二つ目のように、音一発を息と舌を使って吹いてみましょう。音が出る瞬間に、舌で発音をサポートするような感覚です。
どうですか? 良い感じでハマると無理なく存在感のある音色と発音が得られると思います。これを日々繰り返して最高の一発になるよう磨いていきましょう。こういうシンプルな練習の積み重ねが大きなステップに繋がると僕は考えています。是非皆さん、ここは一回僕に騙されてみてください。
※こちらの記事は、Wind-i vol.5を一部抜粋し掲載しています。