個人のレベルアップを図るための基礎練習
◆練習の目的を考える◆
基礎練習の意味もやる目的も人それぞれだと思います。私にとっての基礎練習は「自分のイメージする良い音を出す練習」です。
「ロングトーン」はただ音を長く伸ばすのではなく、自分のイメージする良い音を一つひとつ丁寧に鳴らします。「リップスラー」は良い音同士がレガートでスムーズに切り替わるように練習します。唇の柔軟性が良くなるのはその結果で、目的ではありません。「スケール」は良い音が調性に沿って良い音程で一つひとつ確実に並ぶように練習します。ただ覚えて速く吹ければいいというものではありません。
「初心者は音階をまずは覚えるだけで良い」と先に述べましたが、最終目標はここです。その他いろいろな練習がありますが、すべて「自分のイメージする良い音を出す練習」に繋がってきます。そうやって、音一つひとつにこだわっていく積み重ねが曲を演奏するときに生きてくる、と私は考えています。
しかし、音にこだわるためには自分自身が良い音を知ってなくてはなりません。音だけではなく、音楽そのものについても同様です。CDを買って聴いたり、演奏会に行ったり、インターネット上にアップされている動画などを見たりして、研究してください。
「まなぶ(学ぶ)ことはまねぶ(真似る)こと」ですし、「百聞は一見(一聴)に如かず」です。
ちなみに、基礎練習の題材として私は、Emory Remingtonの「Warm-Up Exercises for Trombone(出版:Accura Music)」という教本をよく使います。たったの9ページしかないシンプルな教本ですが、中学一年生のときにトロンボーンの先生に習い始めてから今に至るまでずっとお世話になっています。内容は簡単なものばかりですが、多少難しいところもあります。とはいえ、中高生でも練習すればできる程度の難しさなので、ゆっくりでいいので日々少しずつ練習して乗り越えてほしいです。
【譜例①】
※こちらの記事は、Wind-i vol.6を一部抜粋し掲載しています。