個人のレベルアップを図るための基礎練習
演奏技術の基本は何といってもロングトーンとリップスラーですが、「楽器を出したらまずスケール練習」が習慣化しているバンドをたくさん見ます。もちろん音階練習は“音楽のため”には絶対に必要です。しかしその前に、楽器に備わっている力を引き出すためにも、ロングトーンとリップスラーの練習をしっかり積み重ねていただきたいと考えます。
◆ロングトーン◆
まず、譜例①から取り組みましょう。低音域の練習は、目前の楽曲にその音域が出てこなくても、絶対に必要です! 最近のユーフォニアムの楽譜は高音域が頻出ですが、だからといって高い音の練習ばかりに執着しても、ハイノーツは出るようになりません。まずは譜例①から、日々の練習をはじめてみてください。4番ピストンのある楽器は、並列でもサイドアクションでも、必ず4番を使いましょう。1-3、1-2-3 のほうを“特別な替え指”と考えましょう。 (3本ピストンの楽器の場合は、4=1-3、2-4=1-2-3で練習してください)。数え方は「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく(ン〜)ブレス」という感じです♪。
【譜例①】ロングトーン(遅めのテンポで)
◆リップスラー◆
リップスラーの課題は無限にあります。それをどう練習するか、が大事です。「何のために練習するのか」「どんな結果を求めるか」を常に考えましょう。先輩にやれと言われたからやっている的な儀式化したリップスラーは、あまり御利益がありません(もちろん 「やらない」よりは「やるべし!」ですが)。 まず、ザックリと「楽/キツい」で分け、楽なリップスラーはウォーミングアップとして、また音色作りのために手厚く練習しましょう。ポイントは「自分の音を良く聴くこと」です。キツいリップスラーは、ズバリ筋トレです。少しずつ音を増やす、スピードを速くしていく、といったことで、演奏に必要な筋肉を鍛えていきます。特に高音域については、極端な言い方をすれば、リップスラーで到達できない音が曲中で出せる道理はありません。ハイノーツをビシッと決めたかったら、リップスラーの練習に真正面から取り組みましょう。 譜例②は最も基本的なリップスラーです。譜例①の後に練習する定番メニューで、簡単なパターンだからこそ音をよく聴きましょう。 まず、美しい音色を求めること! そして、スラーが滑らかに繋がっているか注意しましょう。音を支える力が弱いと、スラーは美しく繋がりません。
【譜例②】もっとも基本のリップスラー
譜例③は、これに根音のロングトーンを加えたものです。1stと2ndを、先輩と後輩で交互に練習すると良いでしょう。このリップスラーの中に完全5度があることに気付いてください。完全5度がハモることは、西洋音楽の基本です。いかにスラーを見事に吹くかというテクニックの部分と、美しくハモることを目指す感性の部分と、共に鍛えてレベルアップに繋げましょう。
【譜例③】完全5度と1オクターブのハモリを意識しましょう
※こちらの記事は、Wind-i vol.6を一部抜粋し掲載しています。