2017年、一気に吹奏楽ポップスの名門校として注目の存在になったのが千葉県の国府台高校です。9月に行なわれた全日本ブラスシンフォニーコンクール、11月に行なわれた全国ポピュラーステージ吹奏楽コンクールで連続優勝! その秘密は……!?
ポップス系コンクールで2冠を果たした国府台高校吹奏楽部が本格的にポップスに力を入れ始めたのは6年前だったと外部講師を務める須藤信也先生は語ります。
「東京ディズニーランドの『ミュージック・フェスティバル・プログラム』への出演を目指して取り組み始めたのがきっかけでした。他校のパフォーマンスを参考にしながら、生徒たちが自主的に振り付けなどをしていきました」
須藤先生は吹奏楽の強豪として知られる習志野市立習志野高校吹奏楽部の出身。けれど、本格的にポップスを学んだ経験はなく、指導する上でポップス奏者からアドバイスをもらいながら自身で徹底的に研究を重ねたのだそうです。
「ポップスで大切なのはリズムやグルーブ感、音の止め方などですが、原曲を聴きながらフレーズや小節単位にまで分解し、『なぜカッコよく聞こえるのか、なぜノリがよくなっているのか』といったことを探っていきました」
須藤先生は自分自身がポップス演奏のコツを見出したのと同じように、生徒たちにも音源を聴かせたり、歌や鍵盤ハーモニカで実演してみせたりしながら指導を進めていったのだそうです。そんな須藤先生の指導の成果が2017年の2冠につながったのです。
吹奏楽部顧問の福田尚代先生(左)と外部講師として長年指導にあたる須藤信也先生。
パフォーマンスと音楽がマッチしているところがコンクールで高評価だったとのこと。
国府台高校吹奏楽部は、全日本ブラスシンフォニーコンクールに初出場で優勝。演奏したのは課題曲『茶色の小瓶』と、『宝島』『シング・シング・シング』の3曲でした。
部を引っ張る(写真左から)杉田菜々さん、高野夏帆さん、玉垣彩葉さん。
ピースリーダー(パフォーマンス担当のリーダー職)・副リーダーの杉田菜々さん(2年)はこう語ります。
「練習以上のものが出せた演奏だったと思います。お客さんが目の前にいると私たちも燃えます」
実は、国府台高校吹奏楽部は3年生が4月で仮引退するため、大会には1、2年生のみで参加しています。そんなハンデを吹き飛ばし、見事初優勝を成し遂げました。
続く全国ポピュラーステージ吹奏楽コンクールでの優勝は大きな自信となったようです。このときは前回の自由曲2曲に加え、部の定番曲である『魔法にかけられて』を披露しました。部長の高野夏帆さん(2年)は言います。
「この大会には2016年に初出場して2位だったので、今度は優勝したいと思っていました。スローガンが『魔法をかける鴻こうりょう陵サウンド』なのですが、審査員やお客さんに“ 魔法”にかけることができたのかなと思います」
ピースリーダー・リーダーの玉垣彩葉さんもこう語ります。
「前の年は準優勝でしたが、今回は優勝できたことで『自分たちのやってきたことは間違いじゃなかったんだ』と思えました。作り上げてきたものを評価してもらえたことがとても嬉しかったです」
心から演奏を楽しんでいることを感じさせる明るい表情が印象的でした。
2017年度は65人の1、2年生で大会に参加し、好成績を収めてきました。
バンドのポップス力を高めるには、「オリジナルの名演奏を完コピ(完全コピー)すること」だと須藤先生は言います。
「本物を一度細部まで研究すると、ポップスに必要となる要素や演奏方法の基本がわかるようになり、ポップスを聴く耳もできてくるのでオススメです」 妥協のない研究と練習こそが国府台高校吹奏楽部の“ 魔法” のポップスの秘密。ぜひ皆さんの学校・楽団でも本記事を参考にレベルアップを目指してくださいね!
かつての地名から「鴻陵(こうりょう)楽団」の通称がある国府台高校吹奏楽部。スローガンのとおり、2018年も演奏会場に魔法をかけ続ける!
著者:オザワ部長●日本で唯一の吹奏楽作家。著書に『吹部ノート』シリーズ、『サヨナラノオト ブラバンガールズの約束』、『あるある吹奏楽部の逆襲!』ほか。
ラジオ、ネットメディアでも活躍中。