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田中靖人の吹奏楽サックス A to Z 第6回 |もう一度見なおそう! 楽器編

THE SAX vol.56(2012年11月25日発刊)より転載

もう一度見なおそう! 楽器編

楽器ともっと仲良くなるために、楽器の基本知識や扱いをもう一度見なおそう!新年度を迎える前に、いままで練習を続けてきた人も、これから楽器を始める人にも役立ちます!

 

Q. 楽器選びにとっても迷っています。
初めて自分の楽器を買います。手頃な値段の入門用楽器を買うべきか、それともある程度値段が高くて質の良いものを買ったほうが良いでしょうか?
選び方を教えてください。

A. 入門機種、上級機種それぞれ良さがあるのでじっくり選んで!
サックスは機種の数がかなりあるので、初めての人はとても迷うと思います。
参考までにサクソフォンの3大メーカーといえば、フランスのセルマー、日本のヤマハ、ヤナギサワです。
セルマーのラインナップにはスターリング シルバーやゴールド プレートなど、特別に値段が高い機種以外は価格の幅はなく「特徴別」になりますが、ヤマハとヤナギサワには、学生向けの比較的お求めやすい価格帯の機種があります。両社ともにとても質の良い楽器と思いますが、予算的に大丈夫ならば40万円台の上級機種をお勧めします。長くお付き合いするパートナーならばそのほうが良いと思いますよ。

 

Q. 一目ぼれしたあの楽器、買ってもいいですか?
見た目が銀のサックスがとてもかっこ良くて、欲しいです。もちろん試奏もするつもりですが、見た目優先で楽器を選んでも良いでしょうか。

A. 落ち着いて試奏し、楽器の特徴を把握しましょう。
見た目も大切ですが、やはり中身が一番ですよ! 同じ管体の形でもゴールドラッカーやゴールドプレートなど仕上げによって音色が違いますし、メカの違いも操作性に影響します。じっくり選んでくださいね。

 

Q. 大切な楽器を守りたい!ケースの選び方は?
田中さんはハードケースとソフトケース、どちらがおすすめですか。また、どんなケースを使っていますか。

A. やはりハードケースをおすすめします。
ソフトケースは衝撃に弱いのでお勧めしません。ハードケースでも、ソフトに近いくらいコンパクトで軽量のものがありますから、そちらをお勧めします。
ちなみに私が使っているのは、メインがフランスのバム製セミハードケースですが、飛行機に持ち込む時はサイズに問題がある場合もあるため、ヤマハ製パックケースと、バム製パックケース、バム製ハードケースを使い分けています。

 

Q. 狭い部室で楽器がぶつかりそうです……。
私の学校は音楽室が狭いわりに部活の人数が多いので、合奏中など楽器をひざの上に寝かせて置くととなりの楽器にぶつかることが多々あります。サックスを吹いていないときの良い置き方は?

A. 安全に置ける方法を考えましょう。
とても狭い部屋で練習しているんですね〜!
アルト、ソプラノは、ももの上に立てて置くと良いかと思います。
テナー、バリトンは、ももの上に、やや斜め前方向に寝かせて置くとどうでしょうか?
いずれにせよ、常にぶつからないように注意しないといけないみたいですね。

 

Q.ついうっかり……よくある経験?
この間、サックスのベルの中にハンカチを突っ込んだまま気付かず吹いていました。あと、よくストラップをつけたまま帰ったりします。こんな経験ありますか?

A.楽器を扱うときは、楽器に集中しましょうね。
私の生徒も時々ありますね〜(笑)。
楽器を置いたままケースだけ持って帰るとか、リードを付けずに吹こうとしたり、人の楽器を間違えて吹こうとしたり……。
でもそういう時って、話しながらだったり他のことを考えていて……ということが多いようですね。

 

Q.野球応援や地域イベントでの演奏が不安です!
サックスを長い時間室外で吹くのは良くないことですか?
また、日に当たっても大丈夫な楽器ですか?

A.ある程度までは大丈夫。
天候によっては気をつけてください。

クラリネット、オーボエ、ファゴットなどとは違い管体が金属なので比較的大丈夫ですが、タンポ、フェルト、コルク、リードには良くないですね。雨、ほこり、直射日光は避けましょう。

 

Q.マウスピースとリガチャーはどう選べばいいの?
マウスピースやリガチャーを替えると、やはり音や吹き心地も変わりますか。また、どのようにして選んだら?

A.とても大切な部分。
吹き心地に注目してたくさん試奏を。

吹きこみ部分に近いマウスピース、リード、リガチャーは、音にかなりの影響があります。
極端な言い方ですが、良いマウスピースがあれば、リードがマッチしますからコントロールが楽になり、表現したいことができるようになって、どんな楽器でも吹きこなせるような気持ちになります。
それぞれの選び方について、ここで説明するとかなり長くなるので割愛させていただきますが、吹き心地を大切に選ぶことが良いかと思います。確かにそうですね……。

Q.楽器とマウスピースのメーカーが違っても大丈夫?
セルマーのマウスピースを使っていますが、楽器本体はヤマハです。これって問題ないでしょうか。

A.まったく問題ありませんよ。
ちなみに私も、セルマーのマウスピースに楽器本体はヤマハですがゴキゲンです!
マウスピースと楽器本体の組み合わせについては、まれに音程が難しいことがあるようですから、もし今のセッティングから替える場合は慎重に試奏してくださいね。

Q.寒いと楽器も調子が上がりません。田中さんの秘策を教えてください。
この時期は寒くて音程合わせに苦労します。田中さんはどうやって乗り越えますか。

A.使い捨てカイロを常備しています。
楽器が冷えていると、音程だけでなく音色や音量にも影響しますから、息を入れて管の中を暖めておく必要があります。
でも、バリトンのように管が長いと下の方は限界がありますから、ももの上に置いて暖めたり、吹かない間は使い捨てカイロを管体に付けておくとかなり改善されますよ。

楽器を扱う上で一番怖いのが、間違った知識で覚えてしまうこと! 楽器を大切に扱って上達に望もう!
田中靖人

※この記事はTHE SAX vol.56 を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中、第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位を獲得。1991年には「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」でCDデビュー。1995年「ラプソディー」、1997年「サクソフォビア」を、03年「ガーシュインカクテル」を、2012年「モリコーネ・パラダイス」をリリース。一方、室内楽のジャンルではサクソフォン四重奏団[トルヴェール・クヮルテット]で活躍。2001年には文化庁芸術祭レコード部門大賞受賞。現在、愛知県立芸術大学、昭和音楽大学講師、礼幌大谷大学客員教授として後進の指導にもあたっている。東京佼成ウインドオーケストラ コンサートマスター。


▷田中靖人オフィシャルホームページ◁

 
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