このコーナーで田中先生から直接指導を受けたい奏者を募集したところ、さっそくたくさんの応募をいただきました。今回はその中から、東京都の富士森高校吹奏楽部へ出張指導。東京都吹奏楽コンクールで金賞受賞、ジャズ・ポップスコンテスト全国大会にも出場した実力派吹奏楽部が、さらにグレードアップします!
(※本文は雑誌掲載時のものです。現在は募集を行っておりません。)
富士森高校サックスパートは5名(+この日は1人お休み)。まずはふだんの基礎練習を見せてもらいました。
続いて、練習中という『マゼランの未知なる大陸への挑戦』(樽屋雅徳作曲)をサックスパートだけで演奏してもらいました。
Q. チューニングが合いにくいんですが、良い方法は?
A. 合奏しているときには音程は常に動くもの
最初はA=442Hzでチューニングしたとしても、合奏しているときには音程は常に動くものという前提で考えてください。ピアノと一緒に演奏する場合は別ですよ。それに、サックスはどんなに正しく吹いたとしても、音程を良くするのはなかなか難しい。アルトの高いラ#に対して、3オクターブ低いバリトンのラ#は、どうしてもアルトが高め、バリトンが低めになります。どちらが寄り添って音程を合わせたらいいか? バリトンは音を高くするのは限界があるけど、アルトを落ち着かせるのは可能です。
音程が高いか低いかわからないという時もありますよね。そういう場合はちょっと極端に音を上げるか、下げるかしてから少しずつ合わせていきます。一緒に音を吹いてワンワンといううなりが出る時はまだ合っていないので、うなりが聞こえなくなるまでネックを抜き差しして調整します。曲中では、早いフレーズだとあまり細かく音程を合わせなくても気にならないけど、ゆっくりしたフレーズの時は、音程が少しだけ変わる「替え指」を使って合わせましょう。
Q. テナー2人の音色が合わないんです。
A. コツは「相手の音の中に入るように吹く」こと
音色には意外に音量も関係してきます。音量の差が大きすぎるとバランスが悪くなります。コツは「相手の音の中に入るように吹く」こと。相手の音が聴こえるバランスで吹く。そうすると、お互い聴き合わずに吹く時より音量は小さくなりますが、ブレンドする感じになるはず。テナー2人だけでそういう練習をしましょう。
音階練習はロングトーンの延長にあるものと考えて、すべての音をできるだけ同じコントロールで吹けるように練習しましょう。真ん中のドがコントロールしやすいので、その吹き方を覚えておいて、他の音にも応用するんです。
Q. リードで出す木管の音色と、唇で出す金管の音色が寄りにくくて、統一感が出せません。
A. サックスが金管に寄りそうようにしてみよう!
演奏では、音色よりバランスが大切だと思います。tuttiで大音量の場面でも、木管がメロディを奏でているところでは、金管が音量を一段落として木管が聞こえるようにするとか。コンクールの演奏を聴いているとよくそう思います。
サックスはホルンとユニゾンで演奏する機会が多いですね。この時、サックスの音色をホルンに寄せるようにします。ホルンの広がる響きに対して、サックスは音像をはっきりさせる役割を担当します。トランペットとサックスが一緒に吹く時も、トランペットがリードして、サックスは響きをサポートするほうがいいと思います。
城定さん:「ふだんの基礎練習に気を使ってなかったと実感しました。ロングトーンやパート練習で、今日のレッスンを生かしていきます」
栗原さん:「基礎練習は頭で理解してやらなくちゃ意味がないんですね。プロの音色を聴けて感激です!」
梅津さん:「憧れの田中さんの音が聴けてうれしかった! 教えていただいた大事なことをこれから生かしていきたいです」
山口さん:「基礎練習でできていないところを指摘していただき、どうすればいいかわかった。ありがたい経験でした」
加藤さん:「これからはロングトーンで音域を広くとって練習することを徹底したいです」
富士森高校さんの『バードランド』の全体合奏、カッコ良かったです!
田中靖人
※この記事はTHE SAX vol.58を再構成したものです