みなさんお久しぶりです!
「吹奏楽A to Z」は今回から、吹奏楽の人気曲からサクソフォンのオイシイ演奏ポイントを取り上げて、より楽しく演奏するためのポイントを考えていきます。作品については、読者のみなさんからのリクエストで選んでいきたいと思います! (※現在は募集していません。)
─ 今回のPick Up 曲 ─
●● どんな曲?●●
リニューアル第1回目に取り上げる作品は、J. バーンズ作曲『パガニーニの主題による幻想変奏曲』(Sauthern Music)です。
イタリアで1800年代前半に活躍した、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾとして皆さんご存じのN. パガニーニが作曲した『24の奇想曲Op.1』。この作品の24番の主題をバーンズ氏独自のスタイルで編曲し、吹奏楽の魅力を存分に伝える作品に仕立てたものです。
各楽器のソロ、セクションのアンサンブルなど、聴かせどころがたくさんあるだけに難しいのですが、本当に楽しめる作品なのでぜひチャレンジしてほしいです。私が東京佼成ウインドオーケストラに入団したばかりのころ、バーンズ氏が来日して自作集のレコーディングを行なった際に、この作品を演奏したのを思い出します。楽しいポイントがたくさんありすぎて絞りきれないのですが、本当に目立つところを取り出してみたいと思います。
●● サクソフォンの演奏ポイント!●●
15の9小節目、「ヴァリエーションVIII」はサクソフォンセクションだけのアンサンブルです。序奏からテーマ、そしてヴァリエーションと曲が進んできて初めてサクソフォンにスポットが当たる、とても印象的で大切な場面です(譜例1)。
主旋律はアルト1番にありますが、アルト2番は1番に絡む旋律なので主旋律と同等と思ってください。対話のような旋律なので、2パートでひとつの旋律を作るように演奏すると素敵です。1番は自由にのびのびと表現して、2番は動きのある部分で1番に語りかけるような感じにしても良いですね。
テナーはアルト2パートの対旋律になります。独立した旋律に見えますが、じつはアルト2パートそれぞれに絡むとてもオイシイ旋律です。仲良く絡むアルト2パートを見ながら、最後までどちらにも寄り添う、ちょっと優柔不断にも見える姿をイメージして演奏してみましょう(笑)。
バリトンはアルト、テナーとは絡まないように聴こえるのですが、単なる低音パートではないもうひとつの対旋律です。アルト、テナーとはほとんど逆行する旋律ですが、時々寄り添う「ツンデレ」のような性格をイメージして演奏すると面白いでしょう。
次は、27の16小節目「ヴァリエーションXV」です。
この場面ではアルト1番の主題の形に近い変奏に対して、ユーフォ二アム(スコアではバリトン)のもう一つの変奏の旋律にスポットが当たります(譜例2)。
ユーフォ二アムは朗々と歌う旋律ですが、アルト1番は常に甘く切ない表現で。音量が出るユーフォ二アムとは対照的に、音色で訴えかける演奏で聴衆を惹き付けましょう。
ほかにもたくさん良い場面があるのですが、誌面の関係で2か所を選んでみました。
改めてスコアを見ていると、演奏したい気持ちが高まってきました!
東京佼成ウインドオーケストラでも、いつかまた演奏したいと思います。
●● J.バーンズについて ●●
ジェイムズ・バーンズ(James Charles Barnes)はアメリカの吹奏楽を代表する作曲家です。1981年『死の変容』でABAオズワルド賞を、1982年『第2交響曲』で吹奏楽のレパートリー向上にもっとも貢献した作曲家に贈られるニール・チョス賞を受賞しています。 『アルヴァマー序曲』『交響的序曲』などの親しみやすい作品から『祈りとトッカータ(呪文とトッカータ)』『ロンリービーチ』などのクラスター奏法を駆使した現代音楽的な作品、さらにはより大きな規模の作品である吹奏楽のための『交響曲』(現在第7番まで作曲)など幅広い作品を生み出し続けています。 また親日家としても知られ、『交響曲第5番「フェニックス」』『日本の印象』『ヤマ・ミドリ』など多くの曲を日本の吹奏楽団体から委嘱を受けて作曲しています。
※この記事はTHE SAX vol.72を再構成したものです