みなさんこんにちは。
吹奏楽コンクールの熱い夏が終わって、吹奏楽部が新体制でスタートしたり、定期演奏会をはじめ、いろいろなコンサートに向けて練習していたり、それぞれの秋を迎えていることと思います。
次はどんなことをやろうかなどということを考えたり、みんなで計画を立てているとワクワクしてきますね! By 田中靖人
─ 今回のPick Up 曲 ─
●● どんな曲?●●
今回はみなさんよくご存じ、アルフレッド・リード作曲の『アルメニアン・ダンス パートⅠ』です。1972年に作曲されて以来、今日まで各地で演奏されレコーディングも多く、世界中で愛され続けているリードの代名詞といえる名曲です。東京佼成ウインドオーケストラでもどれだけ演奏したことでしょうか……。これからのシーズンもコンサートなどでぜひ演奏してほしい作品です。 曲の構成は、5曲のアルメニア民謡からなりますが、今回もサクソフォンパートに注目して大切な場面を取り出してみたいと思います。
●● サクソフォンの演奏ポイント!●●
まずは練習番号9(小節番号になりますので、以下小節で表します)からのテナーサクソフォンについてです(譜例1)。ここはピッコロ、フルート、クラリネットが奏でる主旋律であるアルメニアン民謡『杏の木』に対して、アルトクラリネット、バスーン、ユーフォ二アムと一緒に奏でる対旋律です。細かいリズムですが主旋律をよく聴きながら、うねるような表情で演奏してくださいね。10小節目の3、4拍めは主旋律の間で動きがあるところなので、少し表情を強めに出すと良いでしょう。
14小節目アウフタクトからはイングリッシュホルン、1stアルトサクソフォンによる美しい旋律です(譜例2)。このふたつの楽器によるユニゾンは、リード氏の作品でたびたび出てくるのですが、バランスよくブレンドするととても美しいですよ。分奏して歌い方を合わせましょう。
そして2ndアルトサクソフォンは、3rdクラリネットと一緒に奏でる対旋律になりますが、これがオイシイ! リード氏の作品は、2ndや3rdパートに主旋律よりオイシイ対旋律や、和声的に重要な音を書いてあることが多いのです。また、9小節目から続いているアルトクラリネット、バスーン、テナーサクソフォン、ユーフォ二アムの旋律とも絡むので、それぞれの旋律と会話をするような気持ちで演奏すると良いでしょう。
23小節目からの細かい3連符(譜例3)は、オーボエ、クラリネット、テナーサクソフォンが一緒ですが、さらっと早く演奏するより、すべての音をしっかり歌い込む感じでうねりを出すような表情が良いでしょう。リズムは3連符の中に入る32分音符の3連符なので、裏拍から出るリズムのタイミングに注意しましょう。
27小節目からのアルトサクソフォン(譜例4)は、その旋律を受けてのモチーフですが、ここはオーボエのソロなので、ダイナミクスはfよりPぐらいの音色で演奏するのが良いと思います。
30小節目からは場面が変わり、『ヤマウズラの歌』という民謡を使っています(譜例5)。明るく可愛い旋律ですね。各パートで旋律をリレーしてゆきます。36小節目からのアーティキュレーションのニュアンスは指揮者によって様々なのですが、他のパートをよく聴いてニュアンスを揃えて演奏しましょう。
『アルメニアン・ダンス パートⅠ』の解説はまだまだ続きます!次回は3曲目『おーい、僕のナザン』から解説します。お楽しみに!
●● A.リードについて ●●
アルフレッド・リード(Alfred Reed 1921〜2005)は「吹奏楽の父」と称される作曲家です。弱冠23歳の時に作曲した『ロシアのクリスマス音楽』を皮切りに、『音楽祭のプレリュード』『シンフォニック・プレリュード』『序曲「春の猟犬」』『オセロ』『エル・カミーノ・レアル』などの代表曲に加え、7曲の『吹奏楽のための組曲』、そして5曲の吹奏楽編成のための『交響曲』を生涯にわたり作曲しました。
日本との交流も深く、『法華経からの三つの啓示』『第五交響曲「さくら」』など日本の団体による委嘱作品も数多く出版されています。
A. リードについてさらに深く知りたい方は、本誌の姉妹誌である吹奏楽雑誌「Wind-i vol.4」内の特集「吹奏楽の父 アルフレッド・リード」を読んでみましょう!
※この記事はTHE SAX vol.73を再構成したものです