このコーナーでは、サックスに関する様々なこと……楽器、音楽、リード、ステージの裏話……などなど、その時々の旬のテーマを取り上げて僕が大いに語る、という趣旨で進めていきます。僕も一人の「サックス大好き人」として、読者の皆さんと一緒にこのコーナーを盛り上げていけたらうれしいです! では早速、今回のテーマに入りましょう。
まず最初に、このタイトルにまつわる話を紹介させてください。実はこのタイトル、今夏に発売になる我がトルヴェール・クヮルテットのアルバムタイトルであり、そこに収録した長生淳さんの新曲のタイトルなんです。
“サックスは吹いて楽しい!聴いて楽しい!”という気持ちを伝えるのが今回のコンセプトであり、僕たちの活動の柱。それに合わせて「サックスをみんなで楽しんじゃおう!」という雰囲気を持った曲を、僕たちの活動をよくご存じの長生さんに書いてもらいたいということで『Shall We SAX!』は生まれました。ワクワクするような楽しいメロディで、皆さんもちょっと練習すれば演奏できるんじゃないかな?という、誰もが楽しめる、このアルバムを象徴するような曲になっています。
僕たちは、シリアスなサックス四重奏曲も取り上げますが、クラシックサックスにあまり親しみのない一般のお客さんも楽しめることを願ってプログラミングしたり、アルバムを作ってきました。今回のアルバムでも、クラシックの名曲を、原曲に尊敬の念を込めながらトルヴェール流に料理して遊び心を加えた、ポップなクラシックを中心に収録しました。○○君のあっと驚く、でも皆さんの期待通りの一面!?も収録したり(聴いてのお楽しみ!)……。“クラシックをポップに楽しみながら、サックスの深い世界へ誘ってしまおう”という気持ちを込めた、我がトルヴェール・クヮルテット結成20年の記念的なこのアルバム。発売は7月25日です。皆さん、ぜひ聴いてみてください!
読者の皆さんの中には、吹奏楽でサックスを楽しんでいる人はもちろん、過去に経験した人、一度はやってみたいと興味を持っている方もいるでしょう。僕は今、東京佼成ウインドオーケストラでコンサートマスターを務めていますので、その視点から話してみたいと思います。
吹奏楽の中のサックスというのは“カメレオンのような七変化”を要求される立場だと思います。メロディを吹いてリードすることもあれば、全体に音を溶け込ませて響きの一端を担うこともある。そして、全体の音色に色艶をつけて華やかにしたりと、いろんな役割がありますね。
吹奏楽もアンサンブルのひとつの形態。ここでお聞きします。複数人で音楽を作るアンサンブルにおいて、自分の吹くパートを「目立つ」「目立たない」という発想だけで考えてはいませんか?
もし、「メロディじゃないからつまらない」という考え方をされているとしたら、とてももったいないことです! 僕は、アンサンブルにおけるどんなパートにも喜びがあると思います。メロディを受け持つ時は自分のニュアンスで音楽を引っ張っていく喜び。他の楽器がメロディを吹いているときはそれを美しく際立たせる喜び。和音が変化するときに色を変えることができる喜び。同じ音で構成される和音でも、音楽のテンションが上がっている時は音色を張り気味にしてみたり、ヴィブラートをかけたりかけなかったりという工夫で、様々なアイデアが浮かびます。また、自分が和音の何音になっているのか? 第三音なのか第五音なのか、同じ音でもいろいろありますから、いつも自分の役割を見極めてそこに見合った音を出していく。
アンサンブルでつい気にしてしまうのが縦の線(音の出だしやリズムの一体化)ですが、これを揃えることを目標にするのは大前提。でも、それだけに終始していると、「おっしゃるとおり、正解!」という出来上がりにはなるかもしれませんが、音楽というものはその先にあるのではないでしょうか。お客さんには聞こえにくいんだけど、音楽の中身に深く関与していく役割が、吹奏楽のサックスセクションには多く与えられていると思います。「ただ伸ばす音じゃない、この音によって音楽全体が生きてくる」、そう想像するだけでも、ワクワクしませんか?
自分の役割を発見することは難しいですが、これは誰かに指導されるだけでは理解することにはなりません。常日ごろから自分の吹く音だけでなく、音楽全体の流れを知っておこうとすることです。自分が音を延ばしている時、誰がどんなメロディを吹いているのか。同じように和音を形成しているパートは何なのか。その中で自分はどうしたら?と考え始めたら、少しずつ発見できてくる。それを見つけられたら、上達している証拠だと思います。
Discover Sax!サックスを発見して!受動的でなく能動的であれ。音楽の内面がわかると、吹奏楽の中でサックスを吹くことがより楽しくなってくると思います!
※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです
須川展也 Sugawa Nobuya