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vol.1「Shall We 吹奏楽!」

THE SAX vol.23(2007年5月25日発刊)より転載

このコーナーでは、サックスに関する様々なこと……楽器、音楽、リード、ステージの裏話……などなど、その時々の旬のテーマを取り上げて僕が大いに語る、という趣旨で進めていきます。僕も一人の「サックス大好き人」として、読者の皆さんと一緒にこのコーナーを盛り上げていけたらうれしいです! では早速、今回のテーマに入りましょう。

最近のスガワ

まず最初に、このタイトルにまつわる話を紹介させてください。実はこのタイトル、今夏に発売になる我がトルヴェール・クヮルテットのアルバムタイトルであり、そこに収録した長生淳さんの新曲のタイトルなんです。
“サックスは吹いて楽しい!聴いて楽しい!”という気持ちを伝えるのが今回のコンセプトであり、僕たちの活動の柱。それに合わせて「サックスをみんなで楽しんじゃおう!」という雰囲気を持った曲を、僕たちの活動をよくご存じの長生さんに書いてもらいたいということで『Shall We SAX!』は生まれました。ワクワクするような楽しいメロディで、皆さんもちょっと練習すれば演奏できるんじゃないかな?という、誰もが楽しめる、このアルバムを象徴するような曲になっています。
僕たちは、シリアスなサックス四重奏曲も取り上げますが、クラシックサックスにあまり親しみのない一般のお客さんも楽しめることを願ってプログラミングしたり、アルバムを作ってきました。今回のアルバムでも、クラシックの名曲を、原曲に尊敬の念を込めながらトルヴェール流に料理して遊び心を加えた、ポップなクラシックを中心に収録しました。○○君のあっと驚く、でも皆さんの期待通りの一面!?も収録したり(聴いてのお楽しみ!)……。“クラシックをポップに楽しみながら、サックスの深い世界へ誘ってしまおう”という気持ちを込めた、我がトルヴェール・クヮルテット結成20年の記念的なこのアルバム。発売は7月25日です。皆さん、ぜひ聴いてみてください!

 

 

Shall We 吹奏楽!

読者の皆さんの中には、吹奏楽でサックスを楽しんでいる人はもちろん、過去に経験した人、一度はやってみたいと興味を持っている方もいるでしょう。僕は今、東京佼成ウインドオーケストラでコンサートマスターを務めていますので、その視点から話してみたいと思います。

吹奏楽の中のサックスというのは“カメレオンのような七変化”を要求される立場だと思います。メロディを吹いてリードすることもあれば、全体に音を溶け込ませて響きの一端を担うこともある。そして、全体の音色に色艶をつけて華やかにしたりと、いろんな役割がありますね。

吹奏楽もアンサンブルのひとつの形態。ここでお聞きします。複数人で音楽を作るアンサンブルにおいて、自分の吹くパートを「目立つ」「目立たない」という発想だけで考えてはいませんか?

もし、「メロディじゃないからつまらない」という考え方をされているとしたら、とてももったいないことです! 僕は、アンサンブルにおけるどんなパートにも喜びがあると思います。メロディを受け持つ時は自分のニュアンスで音楽を引っ張っていく喜び。他の楽器がメロディを吹いているときはそれを美しく際立たせる喜び。和音が変化するときに色を変えることができる喜び。同じ音で構成される和音でも、音楽のテンションが上がっている時は音色を張り気味にしてみたり、ヴィブラートをかけたりかけなかったりという工夫で、様々なアイデアが浮かびます。また、自分が和音の何音になっているのか? 第三音なのか第五音なのか、同じ音でもいろいろありますから、いつも自分の役割を見極めてそこに見合った音を出していく。

アンサンブルでつい気にしてしまうのが縦の線(音の出だしやリズムの一体化)ですが、これを揃えることを目標にするのは大前提。でも、それだけに終始していると、「おっしゃるとおり、正解!」という出来上がりにはなるかもしれませんが、音楽というものはその先にあるのではないでしょうか。お客さんには聞こえにくいんだけど、音楽の中身に深く関与していく役割が、吹奏楽のサックスセクションには多く与えられていると思います。「ただ伸ばす音じゃない、この音によって音楽全体が生きてくる」、そう想像するだけでも、ワクワクしませんか?

自分の役割を発見することは難しいですが、これは誰かに指導されるだけでは理解することにはなりません。常日ごろから自分の吹く音だけでなく、音楽全体の流れを知っておこうとすることです。自分が音を延ばしている時、誰がどんなメロディを吹いているのか。同じように和音を形成しているパートは何なのか。その中で自分はどうしたら?と考え始めたら、少しずつ発見できてくる。それを見つけられたら、上達している証拠だと思います。

Discover Sax!サックスを発見して!受動的でなく能動的であれ。音楽の内面がわかると、吹奏楽の中でサックスを吹くことがより楽しくなってくると思います!

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

 


須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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