読者の皆さん、こんにちは。暑い夏も終わり、芸術の秋を迎えます。楽しくサックス吹いていますか?この夏の僕はというと、まずは恒例の浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル。コンサートやレッスンに、とても充実した日々を送りました。その後はアメリカに渡り、一週間ほど滞在して、アイオワ大学サックス科教授のケネス・ツェーさんとのデュオでレコーディングしてきました。とても良いものができると思います。
こういった期間中はずっとサックスを吹いているわけで、辛いと感じることもあるけれど、終わって振り返ってみれば“癒し”に繋がっていたりします。今回はそんなことにちなんで、読者の方からのお題にお答えしましょう。
激動の日々を振り返る……
「須川さんの連載、そしてブログ(公式サイト内)も愛読しています。拝見していると、今日は東京、翌日は北海道で本番!なんてことがありますね。ちゃんとお休みをとっていますか? 身体も心配ですが、興味もあります。“須川さんの激動の日々を振り返る”なんて企画はどうでしょう?」
ありがとうございます。僕は幸運にもたくさん演奏する機会をいただけて、あちこち出没していますが……いつも元気です。その理由をお話しする前に、リクエストにお答えして、4月〜5月初頭の豪華客船「飛鳥II」での仕事が終わったところから特別激動だった期間を振り返ってみます。
- 5/4(日)
- 22:00成田着。帰宅、翌日の準備。
- 5/5(月)
- 下倉楽器のドリームコンサートにトルヴェールで出演。朝9:00に集合してリハーサル、13:00本番。終了後の選定楽器お渡し会で参加者の皆さんの喜ぶ顔に触れ、関係者打ち上げに少し顔を出して帰宅、即就寝。
- 5/6(火)
- 10日に行なわれるリヴィエール吹奏楽団のコンサートリハーサル。
- 5/7(水)
- 渋谷のNHKにて「みんなの吹奏楽」スペシャル番組の打ち合わせ。その後浅草に移動して5月後半のコンサート打ち合わせ。
- 5/8(木)
- 朝7:30に六本木のJ-WAVEに集合し、ラジオ番組に出演。終了後準備をして、ヤマハ吹奏楽団カナダツアーの練習のため、浜松へ移動。そのまま夜練習。
- 5/9(金)
- 午前中に帰京、都内スタジオへ。渋谷タワーレコードでのCDインストアイベントのためのリハーサルをして移動、本番。その後雑誌のインタビュー取材。
- 5/10(土)
- 江戸川区総合文化センターでリヴィエール吹奏楽団のコンサート……ですが本番前に取材が1本。リハーサル、本番。打ち上げに短時間参加させてもらって帰宅。
- 5/11(日)
- 朝から浜松へ。ヤマハ吹奏楽団カナダツアーのため一日練習。夜東京に戻り、帰宅。
- 5/12(月)
- 朝から新聞、雑誌等3〜4社のインタビューを受け、一旦帰宅。カナダツアーのための荷物を持って再び浜松へ。ヤマハ吹奏楽団の練習。
- 5/13(火)
- 朝からヤマハの工場で楽器選定。夜ヤマハ吹奏楽団の練習。
- 5/14(水)
- 朝7:00に集合して中部国際空港セントレアまでバスで移動。カナダへ出発。到着後は少し観光。翌15日は大使館のパーティに出席、リハーサル。16日〜18日はコンサート。
- 5/19(月)
- 帰国。
- 5/20(火)
- 一日限りの休日!
- 5/21(水)
- 都内で一日レッスン。
- 5/22(木)
- 山野楽器にてCDインストアイベント出演。
- 5/23(金)
- 大阪へ。関西フィルハーモニー管弦楽団とのコンチェルト共演のためのリハーサル。
- 5/24(土)
- 高松へ移動して関西フィルとの共演、本番。そのまま帰京。
- 5/25(日)
- 東京佼成ウインドオーケストラの北陸ツアーリハーサル。その後演奏委員の会議など。
- 5/26(月)
- 佼成リハーサル後、夜はレストランでコンサート。そのまま佼成ツアーの初日、仙台へ。
- 5/27(火)
- 佼成ツアー開始。ちなみにこの日は仙台、28日は八戸、29日は弘前、30日は秋田、31日は盛岡……。
こんな感じの1ヶ月でしたが、これは特別忙しかった例です。もちろん、自宅に戻ってからは次の本番に向けてさらう時間も取っていました。
ありがたいことに、身体を心配してくれる方がいらっしゃいますが……僕は元気なんですよね。本当に自分は強運の持ち主で、コンサートやそのための打ち合わせ、テレビ収録、指揮、すべてが充実していて、「演奏家でよかったな」と思う瞬間がたくさんあるんです。コンサートではお客さんが喜んでくださって、サイン会にも参加して暖かい言葉をくれる方もいます。その時出会う笑顔が、本当にエネルギーになるんです!それまでの苦労がいっぺんに吹き飛んでしまう。これは演奏家なら誰もが同じことをおっしゃると思います。
もちろん、こんなスケジュールが一年中続いたら過労でどうかなっちゃいますが、この前の、飛鳥IIに乗っている間はたくさん時間がありました。そこで少しリラックスして、1日3〜4時間、ひたすら練習できたんです。そういう時に「練習貯め」をしておくんです。2〜3ヶ月後にどんな本番があって、どんな準備をしておけばよいかを計画して進めておく習慣がついているんですね。それは、苦しいけど、お客さんの支えを思い浮かべると、不思議とがんばれるんです。
お客さんの笑顔に癒され、次への活力をもらう。だから僕はいつも元気なんです。
次回のテーマは「指揮者への道・ゼロスタート」。
須川さんがヤマハ吹奏楽団の指揮者に就任したいきさつとは? お楽しみに!
wind-iは見た!
クラシック・サックス界のエースとして大活躍中の上野耕平さん。なんと、偶然にも高校1年生頃のレッスン風景がTHE SAX誌に登場していました!須川さんのレッスンを受講する、その真剣な姿は必見です!(THE SAX vol.31より)
須川展也 Sugawa Nobuya
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。