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vol.12「楽器と仲良く!」

THE SAX vol.34(2009年3月25日発刊)より転載

最近のスガワ

読者のみなさん、こんにちは。まだ寒さが続いていますが、元気にサックスを吹いていますか? 僕は1月下旬に、新しいアルバムのレコーディングをしました。共演は山下一史さん指揮・東京佼成ウインドオーケストラ。TV番組“響け!みんなの吹奏楽”でおなじみの真島俊夫さん作曲『スワロー』をはじめ、いろいろなコンチェルトを収録しました。avexから5月に発売される予定です。楽しみにしていてくださいね!
さて、早いものでもうすぐ4月。気分も新たにサックスを練習し始める人、また進学して吹奏楽部でサックスを始める人もたくさんいらっしゃると思います。「ようこそサックスの世界へ!」といった意味も込めて、読者の方から寄せられた質問に答えながら、改めてサックスとの関係について考えてみましょう。

 

 

楽器と仲良く!

教えて須川さん

練習をしていると、急に音が出にくくなることがあります。少し休んで再開すると大丈夫なのですが、これは楽器が壊れているのか、自分の演奏方法が悪いのかわかりません。見分け方はありますか?

ロングトーンが苦手です。例えば「こんな曲でロングトーンしたら楽しい」などのアイデアを教えてください。

 

まず最初に、みなさんはご自分の楽器の状態を気にしたことがありますか? 楽器はとてもデリケートなものです。タンポが古くなってキィを押しても音孔がきちんと塞がれていない、タンポが真っ黒で固くなって息が漏れている……なんてことはありませんか? まず自分の楽器をチェックして、思い当たる方は楽器屋さんで調整してもらいましょうね。

それからよく聞く話ですが、吹奏楽部の新入部員に音が出ないような壊れかけの楽器を与えて「とりあえずコレで練習しておいて」と言うパターン。これでは、初めて楽器に触った彼らはいきなりつまずいてしまい、おもしろくないな、と思ってしまいます。楽器が新しい、古い、という意味ではありません。きちんと調整された、先輩が吹いてもちゃんと音が出るものを吹かせてあげましょう。これから楽器を好きになってもらう、大切な「サックス吹きのタマゴ」たちを大切にしてほしいものです。

さて、「練習を続けていて……」の質問ですが、これはいつくか原因が考えられます。まず楽器が壊れているパターンがありますから、前述のことをチェックしてください。吹いている最中にタンポが水分を吸っていびつにふくらみ、塞ぐバランスが悪くなっていることも考えられます。吹いている時こまめに吸水シート(油とり紙)などで水分を取り除き、時にはスワブで管全体の水分を取ってあげましょう。これはタンポを長持ちさせるためのポイントでもあります。

もうひとつは、休まずにずっと吹いていると口がバテてしまい、アンブシュアが崩れているパターンです。多くの場合、下唇を下の歯に巻き込むような形でマウスピースをくわえるわけですから、痛みも伴ってくると思います。サックスを吹くことは忍耐勝負ではありませんので(場合によって必要な時もありますが!)、適度に休憩しながら、自分のアンブシュアを確認して練習を進めていきましょうね。

次に、ロングトーンに関する質問について。上達するには練習が大切だと言いますが、それが「義務」では「いつまで続ければいいの?」ということになってしまいます。楽器を吹くことが楽しくて、気が付いたらそれが練習になっていた、というのが理想ですよね。

ロングトーンは練習の第一歩として挙げられますが、ただ音を伸ばしているだけで上達するというものではありません。いろんな役割意味があって、基本的には長い音をまっすぐ伸ばすことで安定したアンブシュアの筋肉を鍛えるという役割もありますし、最低音から最高音までどの音域でも柔軟な音を出すためにも有効です。が、目的を持つことが大事なんですね。例えば「フレーズをキレイに吹きたい」と思えば、質問にあるようにゆっくりした長いフレーズを持った曲……グノーの『アヴェ・マリア』やバッハの『G線上のアリア』などを吹くことも、ロングトーンのひとつになると思います。

でもやはり僕は、全音域をまんべんなく吹けるようになる練習をオススメします。そのほうが、後々音楽を楽しむために有効だと思うから。スケールを使って下の音から4拍ずつ上がっていく……こう考えると、なんだか単純作業のように思えるかもしれませんが、毎日やっていると音が安定していくのが実感できますから、それを楽しみにしてほしいですね。

そしてスケールの後に、自分の好きなメロディを練習すると良いと思います。ポイントは好きな曲を選ぶこと。「こんなふうに吹きたい」と思うことで、感性や表現力を育てることにもなります。

吹奏楽部でサックスを吹いていて、自分のパートの譜面しか吹いたことがない人がいると聞きます。でも、サックスが上達したいと思えば、やはりサックスで吹ける好きなメロディを自分の感性で選んで、練習することが一番です。上手な人、専門家になった人は、楽器を吹きはじめた時からサックスの音楽に人一倍興味を持ち、チャレンジしてきた人たちだと思います。まずはやってみて、うまくいかなければ専門家に聞いたり、本を読んだりしていろんなテクニックを知り、またチャレンジしていくんです。そのチャレンジ精神、好奇心を持っている人は上達も早い。決められたことだけをやるのではなく、自分から目標や憧れの心を持ってサックスと接していくことが、一番じゃないかと思います。

自分の好きな曲が見つかって、それを上手く吹きたいから、ロングトーンをしたくなる。タンギング練習をしたくなる。スケール練習が楽しくなる。これが練習をしていく上で一番大事で、有効なポイントだと思いますよ!

 

次回のテーマは「楽器別、攻略法!」。
持ち替えはサックスの楽しみの一つですが、大変な面もあります。ソプラノからバリトンまで、それぞれの楽器の攻略法をアドバイスします!

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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