第1回 | リードの育て方から、ちょっと問題のあるリードの対処法
クラリネットを吹く以上、切っても切れないのが“リードに関する悩み”。新しいリードを買ってきて、実際に使えるリードが数枚だった……このリードが全部使えれば……と思うクラリネット吹きも多いことだろう。そんなリードの悩みを吹き飛ばせる新連載。リードの育て方から、ちょっと問題のあるリードの対処法まで知りつくそう。木村先生の「一箱10枚を全部使えるようにするプロジェクト」開始です!!
講師 木村健雄さん
みなさんはじめまして、木村健雄です。まずは“なぜ僕がリードを削るようになったのか”についてお話しさせていただければと思います。
初めてリードを削るという作業に出会ったのは、三島勝輔先生のレッスンの時でした。「ちょっとリードを見せてみなさい」と言われて、ナイフの肥後守(ひごのかみ)で削っていただいて「良くなっただろう?」と調整していただいたのが、そのきっかけかもしれません。
その後、フランスに留学したのですが、フランス人はリードを削らないんです。売っているものをそのまま、あるものを使うんです。当時僕がレッスンを受けていた先生がフランスで一番怖い先生と呼ばれていた方で、その先生はレッスンの時生徒が酷い音を出していると「貸してみろ!!」と言って吹いて「ダメだ! こんなリード!!」ってリードを割っちゃって捨てちゃう。それを見てすごく驚きました。当時のフランスの人はそれくらいリードをたくさん取り替えて吹いていたんです。日本ではそうはいかない。でも、なんとか良いリードで吹きたいと思い、いろいろと試行錯誤しながら、今回紹介する方法が生まれました。
● リードとは……
まず知っていてほしいのは、リードは天然素材であるために10枚がみな同じではないということです。一箱の中にはいろいろな人の好みと、各種様々なマウスピースに対応するために、形は同じでも、硬い、柔らかい、厚い、薄い、収穫時期の異なるもの、カットの違うデザインが異なるものが、必ず混ざって入っています(リードメーカーの人はそんなことはないというかもしれませんが、そういうものと勝手に理解しておきましょう)。そして、私たちの住む日本という国、世界中どこを探してもこんなに年間通して四季を楽しめ、美しい自然のある珍しい国はありません。しかしリードにとっては、夏冬の気温、湿度の差、山の上や海のそばなどの標高差……。自然が与える影響は相当過酷なものです。
さらに、日本のホールは多目的に使われるところが多いため、必ずしも演奏会向きではないところをよく見かけます。そのような響かないホールにも対応しなければなりません。にもかかわらず、日本人は世界でもまれなほど「音色」にうるさい人種。音色さえよければ中身はどうでも良いという聴き方をする人がほとんど……。楽器が上手くなるための努力の9割は音色に費やしているように思います。雑音がなくピュアで、遠くへ届く音……本来は両立しないことなんですが、そういう無茶を平気で口にする。しかし逆に考えれば、それだけ音色に敏感で繊細な感覚を持っている人種であるわけです。自分の感覚に自信を持って良いと思います(音色も大切ですけど、それだけでなくちゃんと音楽の勉強もしてくださいね)。
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木村健雄