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The Clarinet ONLINE
Benjamin Mellefont ベンジャミン・メルフォント
エレクトロニック・ミュージックの作曲
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演奏家としてはもちろん、指導者としても活動されているベンジャミンさんは、2019年に最年少で英国王立音楽アカデミーの教授に就任しました。指導するうえでのモットーや、心がけていることは?
B
26歳から王立音楽アカデミーで教え始めたのですが、日々教える中で自分自身も先生として、またプレイヤーとしての学びがたくさんあります。先ほどもお話ししたように、身体の使い方については生徒に教える上で大切にしていることの一つです。さらに、人と演奏することから得られるリズムの感覚、音感、フレーズ、スペースの違いの重要性を強調して伝えています。 これらを伝えるにあたり、けっきょく生徒一人ひとりがどう音楽を捉えているのか、というところに行き着きます。音楽というのは型にはまるべきではないので、常に生徒に疑問を問いかけ、どういう音楽を演奏したいのか、考えてもらうようにしています。時間をかけて話し合うこともありますよ。
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現在使用されている楽器、セッティング(マウスピース、リガチャー、リード)を教えてください。
B
クラリネットは、ヤマハCSVR-ASP(CSVRを基にした海外限定モデル)を1年半ほど前から使用しています。マウスピースはリコスティーニのFDC。これはクラリネットの同僚が吹いていて、試したところ良かったので今年から使用しています。その前は10年ほどバンドーレンB40ライヤーを使っていました。リガチャーはロブナーVERSA、リードはバンドーレンV.12の3.5です。
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ヤマハ・クラリネットの魅力はどんなところにありますか?
B
ヤマハ・クラリネットはとても素晴らしい楽器です。現在使っているCSVRの前はCSGを使用していました。CSGはイギリスでも大変人気が高く、私も好きでしたが、今のCSVRのほうが音の深みと、音の響きや鳴りがいいと感じます。
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クラリネットを演奏していないお休みの日はどのようにお過ごしですか?
B
エレクトロニック・ミュージックが好きなので、その作曲を趣味としています。シンセサイザーを使ったサンプリングや、1990年代半ばのアンビエント・テクノ、ローフィルターのサウンドやシンコペーションがお気に入りです。 その他、料理も好きですよ。ピクルスや発酵食品をつくるのが自分の中の流行りです。仕事上、外食しないといけないことが多いので、時間があるときは料理を楽しみます。最近 レモンやサワークラウト(日本でいう酢キャベツ。ただ酢は入っておらず、酸味は発酵によるもの)を漬けました。3ヶ月そのまま放っておくだけで、なんとも素晴らしいリッチなフレーバー(味、食感、香り)になるんですよ! 発酵食の素晴らしいところは、普通の料理が奥深くなることです。この間スリラチャソース(タイ発祥、アメリカで商品化された、にんにく仕立ての甘辛ソース)も作りました! 練習と一緒ですかね、上手く(美味しく)なるのに時間がかかります。でも発酵食品のいいところは何もしなくても時間が経てば美味しくなる。その点、練習は……(笑)。
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最後に、日本でクラリネットを学ぶ学生に向けて、今後取り組むべき練習についてのメッセージをお願いします。
B
オープンマインド(自由に物事を考え、受け入れる)で居続けることでしょうか。私の素晴らしいクラリネットの先生についてお話したように、彼女は私に音楽はとても真面目なものであると同時に、とても有意義で楽しいものでもあることを教えてくれました。そのことを私はいつも心に留めておこうとしているのです。それと、クラリネット奏者としての自分に執着してしまう人がいますが、広く大きく世の中を見渡せるように心がけてください。音楽家であるということは自分のほんの一部にしかすぎないのですから!
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ありがとうございました。