クラリネット記事 ビュッフェ・クランポン工場見学
  クラリネット記事 ビュッフェ・クランポン工場見学
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創立190周年記念イベント

ビュッフェ・クランポン工場見学

昨年、ビュッフェ・クランポンは創立190 周年を迎えた。日本ではミシェル・アリニョン氏とフローラン・エオー氏によるコンサートが行なわれ、大成功を収めている。本社のあるフランスでも記念コンサートの他、工場見学も行なわれた(記念コンサートのレポートは本誌に掲載)。ここでは誌面に載せきれなかった内容も含め、現地の2工場の様子をレポートする。ビュッフェ・クランポンの銘器たちがどれだけの工程を経て完成するのかお届けしよう。

ビュッフェ・クランポンの工場に潜入

パリから西へ60キロ程、セーヌ沿いに霧深い森を抜けたイヴリンヌ県マント=ラ=ヴィル市にビュッフェ・クランポン本社はある。今回の創立190周年にあたって招待された関係者のみが工場内に入ることができた。11月23日、待ちに待った190年祝賀の大切な一日。午前8時30分頃に到着すると既にマント工場横の広場は賑わっていた。テロ直後にもかかわらず、世界中からお祝いに駆けつけた多くの人々のおしゃべりに溢れ、温かなコーヒーとクロワッサンの香りに心が安らぐ。ここが今日の見学の出発点だ。
同社には仏国内に、クラリネット生産ラインの要となる二つの工場がある。マント本社工場と隣接する小さな街にあるマニャンヴィル工場だ。私たちは今回マニャンヴィル工場から見学をはじめる。ここはすべての生産をマント工場だけでは賄えなくなったこと、生産工程整備のためスペースを増やす必要があった事を理由に1995年に設けられた生産・物流部門の第2工場だ。実はクラリネットの生い立ちを順に見るにはここからがベター。というのも、ここではE-12F以上クラリネット木管全モデルの木材加工が行われていて、工程を一から追っていけるのだ。では二つの工場を通し、一本のクラリネットのできるまでを見ていこう。

ビュッフェ・クランポン工場見学

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マニャンヴィル第2工場

木材は4〜6ヶ月乾燥

まずは要となる木材。ビュッフェ・クランポンのクラリネットにはモザンビークもしくはタンザニアのグラナディラが使用される。正式名称アフリカン・ブラックウッドのマメ科のこの木は、密度が高く均一で重厚、品質も安定しているので楽器製作に適している。現地でバレル、上下管、ベルとそれぞれのサイズの角材にカットされ、急激な乾燥を防ぐため端の切断面をパラフィンコーティングしたものがフランスに輸入される。工場に到着した木材をまず4~6ヶ月間ストックしながら自然乾燥。

ビュッフェ・クランポン工場見学

プレカット

次はマシーンでのプレカットと呼ばれる作業。丸みを帯びた均一な姿に削られる。このときトーンホールはまだなく、全モデル共通の仮の内径のみが開けられる。

ビュッフェ・クランポン工場見学

オイル浸透6ヶ月

プレカットの段階で表面に微細な傷や穴が空いている場合は、いわゆる「割れ」修理の要領でグラナディラの粉と接着剤を混合したもので埋める。 ここでもう一度、最適の湿度に調整するため専用のコンテナ内で一週間ストック。こうして乾燥と湿度調整のサイクルを終了した木材を、今度は防水と保護のためフラックスシードオイルに5日間漬けこみ、オイルが浸透するまで6ヶ月間ストックする。

ビュッフェ・クランポン工場見学

形成&削り出し

上管、下管の形成。巨大なプログラム制御のマシーンには小窓があり、内部で管体が休みなく削り出されてゆくのを眺めることができる。この作業は二手に分かれていて、E-12Fはトーンホール部分の凸部を削らずに、他全モデルはこの凸部も一緒に削り出される。つまりこの作業が始まる前には既に、どの管がどのモデルになるか明確に決められるのだ。

ビュッフェ・クランポン工場見学

トーンホールを開ける

ビュッフェ・クランポン工場見学

この後、E-13からRCまでの木材は黒く染色される。上級モデルに綺麗な木目が見えるのは、実はこの作業が行われず自然な状態だかららしい。少し離れたセクションではプレカットしたベルにリングをはめ込み、その後専用マシーンでベルの外側、内側2回に分けて削っている。同じように全モデルのベル、バレル、上下管ジョイントも(リングのあるものは装着し)加工、研磨される。当然モデル別の仕様の相違により作業自体も微妙に異なってくるが、基本手順は同じ。 先ほど少し触れたが、ここからE-12Fには独自の木材保護加工が施され(色が他モデルとまったく違うのはこのためだ)、24時間稼働の完全オートメーション化された専用大型機械でトーンホールを開ける作業が施される。つまり同工場内で独自の生産ラインが確保されているわけだ。この工場では同時にキィやポストなどの金属加工も行なわれている。こちらも24時間フル稼働の大きな機械で加工、研磨される。E-12Fの全部品はその後ドイツ・マルクノイキルヒェン工場に輸送され、そこで組み立てと仕上げの作業が行なわれる。

ビュッフェ・クランポン工場見学

E-13以上の全モデルについてもここで当工場での作業は終了。ちなみにここで働く工員は木材加工25人、金属加工4人の全29人、皆さん気さくに質問に応じてくださった。

続いて次ページではマント工場を見てゆこう。

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