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THE FLUTE vol.191 Close Up
フルートは音楽を知るツール、即ち私に世界を見せてくれているもの
現在、スウェーデン・ヨーテボリ・ウィンド・オーケストラ奏者、そしてソリストとして国内外を問わず活躍しているヨーラン・マルクッソン氏。15歳からレンガ職人として働き、20歳からの数年間は路面電車の運転士として生計を立てていた異色の経歴を持つ遅咲きのフルーティストである。そんな同氏に初インタビューを敢行。自身のことはもちろん、フルートの魅力や、フルートがもたらした多くのことについても語ってくれた。
インタビュア・翻訳:井上知香(サックス奏者)
「洋蘭」の文字が入ったフルート
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はじめまして、よろしくお願いします。何とお呼びすればいいですか?
ヨーラン・マルクッソン
(以下ヨ)
(以下ヨ)
ヨーランです。日本語では同じ音で「洋蘭」(Orchid) がありますよね。実は以前、ミヤザワフルートから私が使う楽器に名前を入れてはどうかという提案があり、最初は断ったのですが、ストラティヴァリウスも自分の名前を入れたことを思い出して、 漢字で「洋蘭」と入れてもらいました。
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さっそくですが、フルートを始めた経緯を教えてください。
ヨ
子どものころに両親が楽器を始めたらどうかと提案してくれたのですが、打楽器やトランペットやエレキギターなどのうるさい楽器はダメで、母からフルートはどうかと言われ軽い気持ちで始めました。当時9歳でした。その後レッスンを受けましたが、練習は全然しませんでした。フルートを始めて4、5年経ったころ、先生から上達するためには練習しないといけないと言われました。
そして14歳の時に手術を受けたため、一年間学校へは通わず自宅で療養していました。その時ずいぶんと練習をして上達しました。有名な交響楽団のレコーディングをかけながら練習したりもしました。
学校へ行っているときの15歳から放課後にレンガ職人として働いたり、20歳からは路面電車の運転士をしていました。このタイミングで家を出て、そこからレッスンを受け始めました。ほとんどの学生は16〜18歳で音楽学校に通い始めますが、私は24歳から6年間通って、30〜32歳で試験を受けて卒業しました。
私のように遅く始めても、やりたいことが明確になった時点で一生懸命突き進むと夢を叶えることができると思います。
そして14歳の時に手術を受けたため、一年間学校へは通わず自宅で療養していました。その時ずいぶんと練習をして上達しました。有名な交響楽団のレコーディングをかけながら練習したりもしました。
学校へ行っているときの15歳から放課後にレンガ職人として働いたり、20歳からは路面電車の運転士をしていました。このタイミングで家を出て、そこからレッスンを受け始めました。ほとんどの学生は16〜18歳で音楽学校に通い始めますが、私は24歳から6年間通って、30〜32歳で試験を受けて卒業しました。
私のように遅く始めても、やりたいことが明確になった時点で一生懸命突き進むと夢を叶えることができると思います。
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失敗したことが成功につながったことはありますか?
ヨ
たくさんの失敗を経験しました。16歳のときに音楽学校のオーディションを受け続け、20歳まで合格しなかったので15回の不合格を受けました。それはものすごく自分を強くしました。たくさんのオーケストラのオーディションやコンペティションに落ち、1990年代の神戸フルートコンペティションは第一次も通過しませんでした。ただ、合格したり賞をいただいたりしたこともたくさんあります。失敗というのはもちろん恐れるべきものではあります。でも、音楽を愛することは誰にも止めることができないので、モーツァルトの交響曲やコンチェルトやソナタをいつかコンサートで演奏するという信念を持っていたことが今の自分につながったと思います。
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・高い演奏技術が求められるウインドバンド
Profile
ヨーラン・マルクッソン Göran Marcusson
ヨーテボリ・ウィンド・オーケストラ、ソリスト。1992年にヨーテボリ大学からソロアーティストの学位を取得。1987年、米国のNFAヤングアーティスト・コンテストで受賞したのが国際的に注目されるきっかけとなった。その後、フィンランドのクルーセル音楽祭、ドイツのボーデン湖音楽祭などでも賞を獲得。1992年には、ウィーン音楽コンクールで受賞し、ジェームズ・ゴールウェイのマスタークラスでは、その卓越したパフォーマンスに対して、ウォーターフォードクリスタルでできたハンドメイドフルートを贈呈された。7枚のソロアルバムをリリース。中でも「The American Sonatas」と「Inspiration by Bach」が代表作。「Melodies of a Silver Flute」(Naxos)では、ヨンショーピング・シンフォニエッタとの共演により、ヴィルヘルム・ステンハンマル、シベリウス、ボロディンらの作品をフィーチャーしている。ゲスト首席フルーティストとして、フィンランド放送交響楽団やロンドン交響楽団などから招待されるなど、ソロとしての活動も多忙な中で、ヨーテボリウインドオーケストラに所属している。2012年4月に「The Western Orchid」(洋ラン)と名付けている特注フルートを受け取った際にミヤザワアーティストの仲間入りを果たした。
使用楽器:ミヤザワフルート 9K Type-2RH
使用楽器:ミヤザワフルート 9K Type-2RH
アルバム「Solo Flute Expressionism」
(2022年4月発売)
[収録曲]Sven-Erik Bäck:As the Deer Longs for Running Water、Paula af Malmborg Ward:To-tanongo-go、Hilding Rosenberg :Flute Sonata、Kenneth Olausson:Elegia adagio、Niklas Willén:Cadenza for Flute、Sven-Eric Johansson:Flute Sonata、Ingvar Lidholm:Flute Sonata、Tina Andersson:Arcadian Pan
※iTune、Spotify、Amazon Musicなどで購入可能
[収録曲]Sven-Erik Bäck:As the Deer Longs for Running Water、Paula af Malmborg Ward:To-tanongo-go、Hilding Rosenberg :Flute Sonata、Kenneth Olausson:Elegia adagio、Niklas Willén:Cadenza for Flute、Sven-Eric Johansson:Flute Sonata、Ingvar Lidholm:Flute Sonata、Tina Andersson:Arcadian Pan
※iTune、Spotify、Amazon Musicなどで購入可能