フルート記事 フルートのための からだメソッド 〜睡眠編〜
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THE FLUTE 145号 Special Contents

フルートのための からだメソッド 〜睡眠編〜

LESSON

からだのことを知って演奏パフォーマンスにつなげるメソッドを学ぶ連続特集の第2弾。145号では「睡眠」にスポットをあてます。起きている間に学習したことを整理して、脳に定着させるという役割をもつ「睡眠」。その効能をフルに活用し、もっともっとフルートを上手に、そして自分の持っているパフォーマンスを100%発揮できるコツを学んでいきましょう。

楽器の練習や演奏と、深〜い関係にある生活習慣……といえば、何を思い浮かべますか?
いろいろあると思いますが、“睡眠”もそのひとつです。フルートを吹くことと眠ることに何の関係があるの? と思う人もいるかもしれませんが……。
人は眠っている間、ただ単に休息しているわけではありません。睡眠には、心身を再生・修復させたり、ストレスを除去する働きがあることなどがわかっています。また、起きている間に学習したことを整理して、脳に定着させるという大事な役割も持っています。今回の「睡眠編」では、そういった睡眠の効能をフルに活用し、もっともっとフルートを上手に、そして自分の持っているパフォーマンスを100%発揮できるコツを学んでいきましょう。
「今日中にここまで吹けるようにならなくては……」と焦っているあなた、今日はもう寝て、明日もう一度チャレンジしたほうがいいかもしれません(!?)。その理由は——さあ、THE FLUTE 145号を読んでみましょう!

“記憶の定着”に欠かせない睡眠

楽器の練習をすると、そこで習得した技術、覚えた曲などはいったん脳に記憶されます。が、「せっかく覚えても睡眠をとらないとすぐに忘れてしまう」のです。それは、私たちの記憶が繰り返すことと眠ることによって、いつでも使える記憶として脳にしっかり保存されるからです。つまり、練習をしたらその後睡眠をとることで、脳に記憶が刻まれて保存され、上手になっていくというメカニズムがあるのです。
たとえば、難しい指の動きを練習したとしますね。かなり練習しても、そう簡単にはできるようにならない。ところが、ある日寝て起きたらできるようになっていた——という経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。これは、眠っている間に記憶が整理され、定着したからなのですね。眠っている間、私たちのからだは休んでいますが、脳は活動しています。取り込まれた未整理の記憶を整理し、必要なときに引き出して使えるように保存してくれているということなのです。
練習の成果を出すためには、練習そのものと同じくらい、睡眠も重要であるということが、おわかりいただけたでしょうか。

睡眠とフルート練習

フルートの練習がなかなかうまくいかない…。そんな時は睡眠をとることで、頭の中で記憶が整理されます。そして翌日には吹けるようになる!?

良い眠りのための睡眠チェックリスト

睡眠の質を高めるために大切な、眠りにまつわる生活習慣。何気なくやっていることが、実は知らず知らずに良質な睡眠を妨げているかも……!?
睡眠の専門医・坪田 聡先生の監修のもと、チェックリストを作りました。自分に当てはまるものをチェックしてみましょう! ここでは、THE FLUTE 145号に掲載した10項目のチェックリストの中から一部をご紹介します。すべてを知りたい方は誌面を読んでくださいね。

□ 入浴は、夜寝る前にしている

お風呂に入って体温が上がると、血管が膨張して体の熱が放出され、からだの中の体温=深部体温は逆に一気に下がります。その状態が、寝付きをよくするためにはベストなのです。お風呂の温度は38〜40度くらいにして20〜30分程度ゆっくり入りましょう。

□ 寝床ではスマホや携帯電話は見ない

モニターの光には脳を覚醒させる作用があります。スマホや携帯電話を布団にまで持ち込むのは、自ら睡眠を邪魔しているようなものです。パソコンのモニターの光も同様なので、寝る直前までインターネットやメールを見たり、パソコンで仕事をしたりするのは控えたいところです。

□ いつもだいたい同じ時刻に起きている

“いつも同じ時刻に起きる”ことは、睡眠の質を高めるのに欠かせない条件です。どんなに遅く寝ても、必ず決めた時刻に起きましょう。もしいつもより遅らせるとしても、寝坊は2時間以内に! これを実行することで、夜は自然とぐっすり眠れるようになります。

□ 布団やベッドはゆったりサイズだ

私たちは一晩に10回以上寝返りを打ちますが、それにより、体の位置を変えて血行をよくしたり、布団の中の温度と湿度を変えたりと、重要な役目があります。寝床にシングルベッド以上の幅がないと、寝返りを打ちづらくなり、睡眠の質が低下している可能性があります。

□  眠くなってから布団に入っている

寝る時間だから眠くないけど布団に入ったが、目が冴えて眠れない……そんなときは、いったん布団から出て別のことをしましょう。睡眠の質という面からは、少しくらい睡眠が足りないくらいがいいのです。寝すぎないようにすることで、目覚めた後のパフォーマンスも良くなります。

15人に聞きました! 奏者アンケート

十分な睡眠をとれていないことで、パフォーマンスが下がっている人が多い——前項に登場した坪田先生はそう言います。では、本番で高いパフォーマンスを発揮することが求められるプロ奏者の皆さんは、どんな睡眠をとっているのでしょうか? ここでは、プロ奏者の方々にアンケートに協力していただきました。

■ 森本英希〈アンサンブル・リュネットメンバー〉

森本英希〈アンサンブル・リュネットメンバー〉

Q1. 睡眠不足が原因で、演奏会本番や練習などで失敗したことはありますか?

ご想像にお任せします。ひとつ述べるなら……小学生の時、遠足が楽しみでなかなか寝られず、結局朝寝坊してしまうタイプの人間でした。

Q2.  演奏に関連して、「睡眠って大事だな~」と感じた経験はありますか?

私はいつも睡眠をとても大事にしています。しかしそのせいで、朝の準備が間に合わず、パンをくわえ、シャツのボタンを留めながら家を飛び出すことがときどきあります。

Q3. 睡眠に関して、何かこだわりはありますか?

こだわりは特にありません。少し話題が逸れますが……眠っているふりをする時は、なるべく周りの人に眠っていることをアピールするように心がけています。例えば付加的な音響(いびき)を加えるなど……。

Q4. 睡眠と楽器の演奏・練習などに関して体験談や思うことがあれば、教えてください。

睡眠不足でフォーレの『レクイエム』(全曲40分中、出番が数小節)を演奏した時に、ある種の恐怖を感じたことがあります。みなさんもご存じだと思うのですが……眠りに落ちるときに「フワッ」となりませんか? あれが出演中に訪れるという恐怖感です。「夢のような音楽」ならばよいのですが、「夢の中で音楽」になってしまってはいけません。ミイラ取りがミイラにならないように気をつけたいものです。

 

■ 赤木りえ〈カリビアンフルーティスト〉

赤木りえ

Q1. 睡眠不足が原因で、演奏会本番や練習などで失敗したことはありますか?

フルートを吹くと目が覚めるので、まずないです。

Q2.  演奏に関連して、「睡眠って大事だな~」と感じた経験はありますか?

私には演奏と睡眠はあまり関係ないようです。たくさん眠れた日に調子悪く、睡眠不足の日に意外と演奏がバッチリ!ということも。。。

Q3. 睡眠に関して、何かこだわりはありますか?

東日本大震災以降、ラジオがついていないと寝られなくなりました。最近iPadのインターネットラジオで、世界中のFMを聴くことができることを発見!アメリカに70年代ポップスだけのFMがあり、小さな音でつけっぱなしにして寝ています。けっこうリラックスできていいみたいです。(注 間違って70’Sのディスコチャンネルつけるとフィーバーしちゃって逆効果です…)。朝起きたら、プエルトリコのサルサチャンネル。いきなり踊れて目が覚めますよ!!

Q4. 睡眠と楽器の演奏・練習などに関して体験談や思うことがあれば、教えてください。

なにしろ昔からなかなか眠れないのが悩みです。いわゆる不眠症ですね。でもフルートを吹くことで覚醒されるのか、どんなに眠くて調子が悪くても、吹いている時だけはやたらとエネルギーが出てきます。朝、調子が悪かったら、ロングトーンや音階練習はすっとばし、大好きな曲を吹きまくる!これに限ります。これでスッキリ目が覚めます!結論としては、私にとって睡眠と演奏はまったく関係がないということです。でも、ぐっすり眠れたらいいな……。

 

■ 岩間丈正〈東邦音楽大学准教授〉

岩間丈正〈東邦音楽大学准教授〉

Q1. 睡眠不足が原因で、演奏会本番や練習などで失敗したことはありますか?

さすがにコンサートなどでは寝不足が原因となる失敗はありません。

Q2.  演奏に関連して、「睡眠って大事だな~」と感じた経験はありますか?

十分な睡眠が取れていると身体が軽く、フルートのコンディションも良いですね。音楽的なアイデアも湧いてきます。

Q3. 睡眠に関して、何かこだわりはありますか?

特にありませんが、すぐに眠りにつけるよう、就寝時はいろいろなことを考えないようにしています。

Q4. 睡眠と楽器の演奏・練習などに関して体験談や思うことがあれば、教えてください。

高校生の頃、実技試験の度にベストコンディションで臨もうと、普段は夜更かしをしているのに、試験前だけ早寝早起きを試みましたが、結果はあまり変わりませんでした。本番前は普段と変わらない生活が一番だと思います。

 

■ 伊達佳代子〈東京ユニバーサルフィルハーモニー管弦楽団メンバー〉

伊達佳代子

Q1. 睡眠不足が原因で、演奏会本番や練習などで失敗したことはありますか?

失敗の原因が睡眠不足によるものかどうかは判断できませんが、やはりミスに繋がるような集中力に欠けた演奏になってしまうと思います。

Q2.  演奏に関連して、「睡眠って大事だな~」と感じた経験はありますか?

睡眠時間が充分でも、起きた時にかえって疲れていることも多いです。楽器演奏、特にフルートは不自然なかっこうなので、身体の左右差が出やすく、結果疲れも溜まります。演奏している時は仕方ないですが、楽器を持たない時(日常生活)の姿勢に気をつけるようにしています。私はピラティスをやっていますが、真面目にやっている時とそうでない時とでは、睡眠の質は明らかに違います。ストレッチ、ヨガ、ゆる体操、ピラティス……など自分に合ったやり方で身体を緩めることができると疲れにくくなり、睡眠の効果も上がるのではないでしょうか?

 

>> 「奏者アンケート」は次のページも続きます!

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