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THE FLUTE vol.172
ミヤザワフルート創業50周年記念特別企画 グローウェルズ×クラーク
今年創業50周年を迎えたミヤザワフルートを記念するコンサートが先頃行なわた。そのゲストとして招かれたグローウェルズさんとクラークさんの対談が実現。初共演であり今回の来日で初対面となったお二人に、フルーティストの秋山君彦さんが話を聞いた。
今年創業50周年を迎えたミヤザワフルート。それを記念するコンサートが先頃行なわれ、国内外のゲストが多数出演する華やかなステージとなった。そしてこのたびゲストとして招かれたグローウェルズさんとクラークさんの対談が実現。初共演であり今回の来日で初対面となったお二人に、フルーティストの秋山君彦さんが話を聞いた。
聞き手: 秋山君彦 通訳: 長田和子 撮影:東原昇平 (※2ページ目集合写真を除く)
取材協力: ミヤザワフルート製造株式会社
音楽という手段を持っていてよかった
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お二人は今回が初対面だそうですね。本日はリハーサルの合間にお時間をいただきましたが、お互いの演奏は聴かれましたか?
クラーク
(以下C):
(以下C):
はい。トリオ(※同じく50周年記念コンサート出演のさかはし矢波さんを交えた3人)で演奏しました。音楽でコミュニケーションをとる喜びを感じました。音楽を通して知り合うことは、話をするのと同じくらいお互いのことがよくわかりますから。
グローウェルズ
(G):
(G):
イアンの音は、イギリスらしい大きなサウンドだと思いました。いつも別々のところで演奏している者同士が一緒に演奏して、ああでもない、こうでもないとディスカッションするのは、理解し合うのにはいちばんいい方法だと私も思います。何より楽しいですしね。
C:
音楽の中でお互いに補い合ったり吸収し合ったり、そういう体験をするとき、いつも音楽という手段を持っていてよかった......と思います。
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今回のミヤザワフルート50周年コンサートは、どんな聴きどころがありますか?
G:
今回のプログラムは最初から最後までがすべて違うカラーの曲目なので、観客の皆さんをきっと飽きさせないと思います。
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クラークさんの作品では、『Deep Blue』『Orange Dawn』『The Great Train Race』『maya』『Within...』などがプログラムに多数ラインナップされていますね。グローウェルズさんとのデュオでの演奏はありますか?
C:
残念ながら今回はないんですよ。
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クラークさんならすぐにデュオに編曲できるんじゃないですか(笑)。
C:
この夏に2本のフルートとピアノの新曲を書き終えたばかりで。次回はぜひやってみます(笑)。ところで、『Within...』は、2005年にアメリカのサンディエゴで行なわれたフルート・コンベンションで初演しました。メンバーは、私とウィリアム・ベネット、トレヴァー・ワイ、デニス・ブリアコフ、ブスタウニー、古川仁美、増田多加の7人。ヒトミはこのTHE FLUTEで、連載を持っているそうですね!
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お二人がミヤザワフルートを使用されるようになってどのくらいですか?
C:
15年以上になります。
G:
私も14、5年経つと思います。
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今使われているミヤザワフルートは、どんな仕様の楽器ですか?
G:
私は今はオーケストラでは活動していないので、完全に自分好みの大きめの歌口にしています。オーケストラで使うのであれば、もう少し小さい歌口のものが必要かもしれません。今はソロ活動だけで、小さい音から大きい音、そして少し汚い音(!)まで、さまざまな音を出す必要があります。私は木製のフルートも好きなんですが、世界中を回っているので、たとえば日本のように湿気が多かったり、いろんな条件下で同じように演奏しないといけないとなると、今使っているミヤザワの9Kの楽器がいちばん使いやすいのです。
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クラークさんは、シルバーモデルのMX Type-2を使われていますね。楽器の軽さは重視されていますか?
C:
たとえばリサイタルで、楽器を1時間持っていなければならないとなると、軽さが重要になってきます。音楽の良し悪しが、楽器が重いことに左右されることがあってはいけませんから。
すべては言語ではなく心から出てくる
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先ほどイギリスらしいサウンドというお話がありましたが、日本人の音について独特の特徴を持った音色や演奏だと感じられたことはありますか?
C:
今の時代、いろんな人の音楽をいろんなところで聴くことができますよね。“日本人”と一括りにして言うのは難しいですが、たしかに、音が「日本語」として聞こえる人はいると思います。
G:
それぞれの国ごとに、奏者にいろんな 傾向があるのはたしかですね。それは一つの個性ともいえるわけで、そういう違いもありだと思いますよ。
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当たり前のことかもしれませんが、お二人の演奏を聴いていると、音を支えるための圧力が本当に自然にかかっていますね。音が固くなり過ぎたり、響きを止めてしまわないようにするための息のコントロールについて、何か良いイメージや方法はありますか?
C:
生徒たちの演奏を聴いて、もっと大きくもっとソフトに演奏するにはどうしたらいいのか、それをどう伝え、改善するか......そう考えた時に、生徒自身がどう感じているのか、自分のやっていることを解きほぐして考える必要があります。なぜなら、彼自身はそれを自然にやっていますからね。私はいろいろと実験するのが好きですし、いろいろなフルートで、違うスタイルで、違う国で......などと話し合うのはとても興味深いと思いますが、いちばん重要なのは、何かを伝えようとした時、すべては言語ではなく心から出てくるということなんです。伝えるにはいろいろな手段がありますが、それはもっと何か深いところからやってくるものです。
確かに、私はたとえpp、pppでも、十分な息のスピードがあるほうがいいと思っています。でも、自分が描きたいことや伝えたいことは、決して力まない状態で体の中から自然に出てくるものだと思うのです。
確かに、私はたとえpp、pppでも、十分な息のスピードがあるほうがいいと思っています。でも、自分が描きたいことや伝えたいことは、決して力まない状態で体の中から自然に出てくるものだと思うのです。
G:
私が歳をとるにつれて気づいたのは、息の支えがどんどん十分ではなくなるということです。息をもっと使いたいと思っても、難しくなってくる。たくさんの困難を、結局は息が助けてくれていたんだなあ、と。
C:
恩師がいつも、「もし何か疑念があるなら息を吹き込むこと」と言っていたんです。それは本当にたくさんのことを解決してくれます。もっともそれは “力”ですることではなく、説明するのがとても難しいですし、きちんと理解されないことが多いですが......。
G:
フルートを吹くことは、歌手が歌うこととよく似ていると思います。吹き込んだ息のすべてが楽器の中に入るわけではないという意味でも。歌っているようにイメージをするとわかりやすくて、音色も良くなりますよ。私はいつも生徒たちに、歌ってみるようにと言っています。
C:
私も、これまでの経験でいちばん勉強になったのはオペラでした。フルートパートがメロディを奏で、歌手が同じメロディを歌ったときに、ああこれだ!と。この音色だと体でわかるんです。
次のページの項目
・時間をかけて発見すること
・ミヤザワフルート50周年記念イベント (レポート:編集部)
Profile
マーク・グローウェルズ
1954年、ベルギーのオーステンデに生まれる。フランダース・オペラ管弦楽団でフルーティストとしてデビューし、1976年、ベルギー国立歌劇場管弦楽団首席ピッコロ奏者となる。1978年よりベルギー放送交響楽団首席フルート奏者を務めた後、ソリストに。1986年にCarlo-Maria Giulini率いる有名な「World Orchestra」でも首席奏者を務めた。世界各国で年間100回以上のコンサートに出演し、同時にマスタークラス等の指導も行っている。かつてベルギー王立音楽院で教鞭をとり、現在はMonsの王立音楽院の名誉教授に就任している。
演奏はA.ピアソラに捧げられた「タンゴの歴史」をはじめクラシック、ジャズ、タンゴなど幅広い音楽に挑戦し、常に新しい可能性を追求し続けている。
演奏はA.ピアソラに捧げられた「タンゴの歴史」をはじめクラシック、ジャズ、タンゴなど幅広い音楽に挑戦し、常に新しい可能性を追求し続けている。
Profile
イアン・クラーク
イギリス出身のフルート奏者、作曲家。現代のフルート音楽シーンにおいて、最も影響力のある奏者・作曲家の一人。4期続けてBBCヤングミュージシャン木管部門決勝で課題曲に採用され、その他の無伴奏リサイタルでも、手がけた楽曲が演奏され目玉となっている。英国フルートソサエティ、米国のフルート協会など欧米の大規模なコンヴェンションでも、度々ゲストソリストとして演奏する。2005年にリリースしたCD「within...」はフルート界のベストセラーとなった。2013年リリースの「Deep blue」は、オリジナルのフルートアルバムでは初となる、英国のクラシカルアーティスト部門トップ10にランクインを果たした。クラシカルオペラからロックグループのゲスト演奏まで、幅広い活動を展開。現在、ギルドホール音楽演劇学校で教鞭をとる。